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《凶宴-CARD》  作者: shogo5


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『最初の一枚』【7】

ミシ……


ミシミシミシ――


観客「……おい」


実況「ちょ、ちょっと待ってください……」


二人の剣がぶつかった地点から、


亀裂が広がっていく。


やがて――


ズズズズズ……!!


闘技場全体が、


僅かに揺れ始めた。


観客「な、なんだ!?」


観客「揺れてるぞ!」


実況「これは……!」


シオン「ぐっ……!」


ギギギギギ――!!


剣と剣が、


激しく軋む。


No.A「…………」


シオン「…………!」


No.Aは、


目の前のシオンを見つめていた。


これまで、


幾人もの強者と戦ってきた。


剣豪。


騎士。


傭兵。


名を馳せた者を見つけては、


戦いを挑んだ。


だが――


終わる。


いつも、


一撃で。


No.A「…………」


それが、


自分の剣だった。


一撃に、


すべてを込める。


一撃で、


勝負を終わらせる。


それこそが――


No.Aの美学。


だが。


目の前の男は、


終わらない。


一撃。


二撃。


三撃。


そのすべてを凌ぎ――


ついには、


真正面から止めた。


No.A「……はは」


シオン「……?」


No.A「ははははは……!」


シオン「…………」


No.Aが、


心の底から笑っていた。


No.A「いいな」


剣を押し込みながら、


笑う。


No.A「お前――」


No.A「いいぞ」


シオン「……!」


次の瞬間。


No.Aが、


剣を引いた。


シオン「――!」


解放された力に、


シオンの身体が僅かに前へ傾く。


その一瞬。


No.A「――次だ」


ゾクッ。


シオン「――!!」


世界が、


歪む。


また見えた。


一瞬先。


No.Aが、


剣を振るう。


だが――


シオン「…………!?」


今までとは違う。


剣が、


届いていない。


No.Aは、


遥か前方にいる。


なのに――


次の瞬間。


未来の自分の身体が、


斜めに斬り裂かれた。


シオン(――何だ!?)


現実。


No.Aが、


その場で剣を振り抜く。


シオン「――!!」


咄嗟に、


地面を蹴った。



ズバァァァァァン!!!



シオン「ぐっ!!」


シオンの背後。


闘技場の石壁に――


巨大な斬痕が走った。


観客「…………」


実況「…………」


シオン「…………!」


離れている。


剣は、


届いていない。


それなのに――


斬撃だけが、


ここまで飛んできた。


実況「…………え?」


観客「い、今……」


観客「剣……届いてなかったよな……?」


No.A「…………」


再び、


剣を構える。


シオン「…………!」


来る。


世界が歪む。


未来が見える。


一つ。


二つ。


三つ――


シオン「――!?」


違う。


今までとは、


数が違う。


右。


左。


正面。


次々と、


斬り裂かれていく自分。


シオン(多すぎる……!)


No.A「――ッ!!」


剣が、


振るわれる。



ズバッ!!


ズバァン!!


ズガァァァン!!!



無数の斬撃が、


闘技場を駆け巡る。


シオン「くっ……!!」


一つを避ける。


二つ目を、


剣で弾く。


三つ目――


シオン「ぐっ!」


肩を斬られる。


それでも、


走る。


止まれば終わる。


未来が見える。


その未来を、


一つずつ外していく。


だが――


シオン(追いつかない……!!)


見る。


避ける。


また見る。


避ける。


その間にも、


No.Aの一撃は、


さらに鋭くなっていく。


実況「シ、シオン選手!!」


実況「避ける!!」


実況「避ける!!」


実況「また避けるゥゥゥ!!」


実況「しかしA選手の攻撃が――」


ズガァァァン!!!


実況「ひぃっ!?」


実況席のすぐ横。


巨大な斬撃が、


壁を切り裂いた。


実況「…………」


係員「…………」


実況「……今の、俺死んでない?」


係員「だから逃げろと言ってるんだ!!」


その時――


ズズズズズ……!!


観客席の一部が、


大きく揺れた。


ミシッ――


巨大な亀裂が、


壁を伝っていく。


係員「――まずい!」


実況「……!」


係員「試合中止!!」


観客「――!?」


係員「全員避難しろォォォ!!」


観客席が、


一気に騒然となる。


観客「逃げろ!!」


観客「出口はどこだ!?」


係員「押すな!! 順番に出ろ!!」


観客「うわぁぁぁ!!」


人々が、


一斉に出口へ向かう。


だが――


シオン「――ッ!!」


No.A「ははっ!!」


二人は、


止まらない。


ズバァァン!!


ガキィィィン!!


ズガァァァァン!!!


斬撃と剣撃が、


崩れ始めた闘技場に響き続ける。


実況「か、観客の皆様!!」


実況「慌てず!!」


実況「速やかに避難してください!!」


係員「お前もだ!!」


実況「待て!!」


実況は、


二人を見る。


実況「まだ……」


シオン「――ッ!!」


No.A「もっとだ!!」


実況「まだ戦っている!!」


係員「見れば分かる!!」


実況「俺は実況だぞ!!」


係員「だから何だ!!」


実況「最後までこの戦いを伝えるのが――」


ズバァァァァン!!!



実況「…………」


係員「…………」


実況席の、


すぐ後ろ。


巨大な壁が――


斜めにずれた。


実況「…………」


ズズ……


ズズズズズ――


ドゴォォォォォン!!!


実況「…………」


係員「…………」


実況は、


静かに立ち上がった。


実況「撤収ゥゥゥゥゥ!!!」


係員「最初からそうしろォォォ!!」


二人も、


全力で出口へ走っていく。


実況「両選手の健闘を祈るゥゥゥ!!」


係員「いいから走れ!!」


やがて――


人々の声が、


遠ざかっていく。


歓声も。


実況も。


悲鳴も。


何も、


聞こえなくなった。


崩れかけた、


巨大闘技場。


風が、


砂埃を運んでいく。


シオン「はぁ……」


シオン「はぁ……」


全身に、


いくつもの傷。


血が、


地面へ落ちる。


No.A「…………」


その向こう。


No.Aが、


静かに立っている。


先ほどまでとは、


空気が違った。


観客はいない。


実況もいない。


大会も、


もう終わっている。


それでも――


二人は、


剣を握っている。


No.A「…………」


辺りを見渡す。


崩れた観客席。


割れた石床。


誰もいない。


そして――


No.Aは、


楽しそうに笑った。


No.A「……いいな」


シオン「…………」


No.A「これで――」


剣を、


ゆっくりと構える。


No.A「誰にも邪魔されない」


シオン「…………」


シオンも、


剣を構え直す。


シオン「最初から――」


No.A「?」


シオン「俺には、お前しか見えてない」


No.A「…………」


一瞬の沈黙。


そして――


No.A「……ははっ」


No.Aの笑みが、


さらに深くなる。


No.A「やっぱり――」


No.A「お前、最高だな」


歓声は、


もうない。


ルールもない。


止める者もいない。


崩れゆく闘技場に残ったのは――


復讐のために剣を握る者と、


ただ強者を求め、


剣を振るい続けてきた者。


二人だけ。


No.A「――続けようか」


シオン「ああ」


静寂の中――


二人は、


同時に地面を蹴った。

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