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《凶宴-CARD》  作者: shogo5


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『最初の一枚』【8】

崩れゆく闘技場。


歓声はもうない。


実況も、

観客もいない。


残されたのは――


シオンとNo.A。


二人だけ。



No.A「――続けようか」


シオン「ああ」



静寂の中――


二人は、

同時に地面を蹴った。



ガキィィィン!!



剣と剣が、

激しくぶつかる。



No.A「――ッ!」


シオン「ぐっ……!」



弾かれる。


だがシオンは、

すぐさま踏み込み直す。



シオン「一つ聞かせろ!」


No.A「……?」



ガキン!!



シオンの剣を、

No.Aが受け流す。



シオン「お前は昨日――」


シオン「この街へ来るまでにも、何人もの剣士と戦ったそうだな!」


No.A「ああ」


シオン「だが、誰も殺していない」


No.A「…………」


シオン「なぜだ!!」


No.A「なぜって――」



No.Aは、

シオンの剣を弾き飛ばす。



シオン「――ッ!」


No.A「殺す必要がないからだ」


シオン「……何?」


No.A「俺が欲しいのは命じゃない」



一歩。


No.Aが踏み込む。


シオンの視界が歪む。



――見える。



シオン「――!」



身体を反らす。



ズバァァン!!



斬撃が、

背後の石柱を斬り裂く。



No.A「強い奴と戦う」


No.A「そいつが何を積み重ね、どこまで剣を磨いたのか――」



再び、

剣を構える。



No.A「全部、この一撃にぶつけてもらう」


シオン「…………」


No.A「そして――」



地面を蹴る。



No.A「それを超える!」



ガキィィィン!!



シオン「ぐっ!!」


No.A「それを繰り返す!」



ガキン!!



No.A「もっと強い奴を探す!」



ガキィィィン!!



No.A「もっと強い剣を知る!」


シオン「――ッ!!」


No.A「そうやって――」



二人の剣が、

真正面からぶつかる。



No.A「俺は剣の道を極める」


シオン「…………!」



鍔迫り合い。


二人の視線が、

至近距離で交わる。



シオン「だったら……」


No.A「?」


シオン「だったらなぜ、《凶宴-CARD》にいる!!」


No.A「…………」


シオン「お前が欲しいのが強者との戦いだけなら――」


シオン「なぜ俺の国を滅ぼした!!」


No.A「…………」



一瞬。


No.Aの剣から、

力が抜ける。



シオン「――!」



シオンが押し返す。


No.Aは後方へ跳び、

距離を取った。



No.A「……簡単な話だ」


シオン「…………」


No.A「《凶宴-CARD》に入れば――」



No.Aは、

剣を肩へ担ぐ。



No.A「面白い奴と、いくらでも戦えると思った」


シオン「…………」


No.A「国を相手にすれば、騎士が出てくる」


No.A「戦争を起こせば、英雄が出てくる」


No.A「世界を敵に回せば――」



No.Aは笑う。



No.A「世界中の強者が、俺たちを倒しに来る」


シオン「…………!」


No.A「それだけだ」


シオン「…………」


No.A「そして――」



剣先が、

シオンへ向けられる。



No.A「実際に来ただろ?」


シオン「……!」


No.A「お前が」


シオン「…………」


No.A「俺たちがアルヴェリアを滅ぼしたから――」


No.A「お前は俺を追ってきた」


No.A「そして今――」



嬉しそうに、

No.Aは笑う。



No.A「俺の一撃を、何度も超えている」


シオン「…………」


No.A「俺は間違ってなかった」



その言葉に――


シオンの中で、

何かが切れた。



シオン「…………そんなことで」


No.A「?」


シオン「そんなことで――」



剣を握る手が、

震える。



燃える街。


泣き叫ぶ人々。


崩れた王城。


そして――


父の亡骸。



シオン「…………ッ!!」



ドンッ!!



地面を蹴る。



No.A「――!」


シオン「俺の国を滅ぼしたのかァァァ!!」



ガキィィィィン!!!



No.A「……!」



これまでで最も重い一撃。


No.Aの身体が、

初めて後方へ押される。



シオン「強い奴と戦いたかった!?」



ガキン!!



シオン「剣の道を極めたかった!?」



ガキィィィン!!



No.A「……!」


シオン「そんな理由で!!」



ガキィィィン!!



シオン「何の関係もない人間を巻き込んで!!」



ガキン!!



シオン「傷つけて!!」



ガキィィィン!!



シオン「命まで奪って!!」


No.A「…………!」


シオン「それで何が――」



シオンは、

剣を大きく振りかぶる。



シオン「剣の道を極めるだァァァ!!」



ガァァァン!!!



No.A「――ッ!!」



No.Aの身体が、

大きく弾き飛ばされる。



ザザザザザッ!!



地面を滑り、

No.Aが止まる。



No.A「…………」


シオン「はぁ……はぁ……」



怒りに満ちた目で、

No.Aを睨む。



シオン「……お前は歪んでる」


No.A「…………」


シオン「剣ってのは――」



シオンは、

自らの剣を真っ直ぐ構える。



シオン「真っ直ぐなもんだろ」


No.A「…………」


シオン「どれだけ速く振れても」


シオン「どれだけ鋭く斬れても」


シオン「その剣を握る人間が歪んでたら――」



一歩。


No.Aへ向かって、

踏み出す。



シオン「そんな奴が――」



シオン「『剣の極み』に辿り着けるはずがない!!!」



No.A「…………」



静寂。



No.Aは、

何も言わない。


ただ、

シオンを見つめている。



やがて――


ゆっくりと、

立ち上がった。



No.A「……はは」


シオン「……何がおかしい」


No.A「いや」



No.Aは、

剣を握り直す。



だが――


その表情は、

先ほどまでとは違っていた。



No.A「そんなことを言われたのは――」


No.A「初めてだ」


シオン「…………」


No.A「なら――」



笑みが消える。



No.A「証明してみろ」


シオン「……!」


No.A「俺の剣が歪んでいると言うなら」


No.A「お前のその“真っ直ぐな剣”で――」



静かに腰を落とす。



これまでとは違う。


遊びではない。


挑発でもない。



一人の剣士として――


No.Aが構える。



No.A「俺を超えてみろ」


シオン「…………」



シオンもまた、

剣を構える。



シオン「ああ」


シオン「そのつもりだ」



二人の間から、

言葉が消える。



風が、

崩れた闘技場を吹き抜ける。



シオン「…………」


No.A「…………」



シオンの視界が――


歪む。



見える。



No.Aが踏み込む。


剣が振り抜かれる。



そして――



自分が斬られる。



シオン「…………」



だが。


もう、

目を逸らさない。



未来が見えるなら――



変える。



シオンは、

剣を握り締めた。



No.A「――行くぞ」


シオン「来い」



一瞬。



静寂。



そして――



ドンッ!!!



二人が、

同時に地面を蹴った。



No.Aの、

すべてを込めた一撃。



シオンの、

すべてを懸けた一撃。



二本の剣が――



交差する。



ガキィィィィィン!!!



凄まじい衝撃が、

崩れた闘技場を駆け抜ける。



そして――



静寂。



シオン「…………」


No.A「…………」



二人は、

互いに背を向けたまま、


動かない。



風が吹く。



その時――



パキッ――



No.A「…………」



小さな亀裂が、


No.Aの剣に走った。



そして――



パキィィン!!



刃が、


砕けた。



折れた刃が、

宙を舞う。



クルクルと回転しながら――



カァン――



石床へ落ちた。



No.A「…………」



No.Aは、


手元に残った剣を見つめる。



折れている。



自らが追い求め、


磨き続けてきた剣が――



折られている。



No.A「…………」



ゆっくりと、


振り返る。



そこには――



シオンが立っていた。



傷だらけの身体。


荒い呼吸。



それでも、


その手に握られた剣は――



真っ直ぐ、


No.Aへ向けられている。



シオン「…………」



一歩。



シオンは、


No.Aへ向かって踏み出す。



シオン「これが――」



No.A「…………」



シオン「俺の真っ直ぐな剣《信念》だ」



No.A「…………!」



シオン「剣は――」


シオン「ただ、人を斬るためのものじゃない」


No.A「…………」


シオン「何のために振るうのか」


シオン「何を守るのか」


シオン「何を貫くのか――」



シオンは、


自らの剣を握り締める。



シオン「それが、剣を握る奴の信念になる」


No.A「…………」



シオンは、


折れた刃へ視線を向ける。



シオン「だから俺は――」


シオン「自分の信じた剣を曲げない」



No.A「…………!」



シオン「お前を斬る必要なんかない」


シオン「お前が極めようとしていた――」


シオン「その歪んだ剣」



石床に落ちた、


折れた刃。



シオン「それを折れば――」



再び、


No.Aを真っ直ぐ見据える。



シオン「俺の勝ちだ」



No.A「…………」



風が、


二人の間を吹き抜ける。



No.Aは、


何も言わない。



ただ、


折れた剣を見つめる。



そして――


ゆっくりと、


シオンの剣へ視線を移す。



真っ直ぐ、


自分へ向けられた剣。



No.A「…………はは」



小さく、


笑った。



No.A「ははは……」



そして、


シオンを見る。



そこに、


悔しさはなかった。



No.A「……そうか」



手に残った柄を、


ゆっくりと下ろす。



No.A「俺の剣を――」


No.A「折ったか」



シオン「…………」



No.Aは、


目を閉じる。



そして――



No.A「完敗だ」

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