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《凶宴-CARD》  作者: shogo5


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『最初の一枚』【6】

カァァァン!!


ゴングが鳴り響く。


実況「開戦だァァァァァ!!!」


観客「うおおおおおお!!!」


割れんばかりの歓声。


シオン「…………」


剣を構える。


目の前にいるのは、


《凶宴-CARD》――No.A。


数年前。


自分からすべてを奪った、


十三人のうちの一人。


シオン「…………」


怒りはある。


憎しみもある。


だが――


シオンは、


それを押し殺した。


ここまで来たのは、


怒りに任せて剣を振るうためじゃない。


勝つためだ。


No.A「…………」


対するNo.Aは、


静かに剣を構えていた。


先ほどまでと、


何も変わらない。


十年間負け知らずだった王者を、


一撃で沈めた時と同じ構え。


実況「さあ!!」


実況「先に動くのはどちらだァァァ!?」


シオン「…………」


No.A「…………」


動かない。


シオンは、


相手の呼吸。


重心。


視線。


僅かな動きさえ見逃さぬよう、


集中する。


その時――


No.Aの右足が、


僅かに動いた。


シオン「――!」


来る。


そう思った瞬間。



No.Aの姿が、


消えた。



シオン「――!?」


見失った。


違う。


速すぎる。


目が、


追いついていない。


そして――


シオンの視界の端に、


銀色の光が走る。


シオン「――ッ!!」


避けられない。


剣を上げる時間すらない。


斬られる。


そう理解した、


その瞬間だった。



――ズバッ。



シオン「…………?」


目の前が、


一瞬だけ歪んだ。


次の瞬間――


見えた。



自分の身体を、


No.Aの剣が斬り裂く。



鮮血が舞い、


自分が地面へ倒れていく。



シオン「――!!」



身体が、


勝手に動いた。



ザッ!!



No.A「…………」



――ズバッ!!



シオンの胸元を、


刃が掠める。


血が飛ぶ。


だが――



シオン「はぁ……っ!!」



立っている。


観客「…………」


実況「…………」


No.A「…………」


闘技場が、


静まり返った。


実況「…………た」


実況「立っている……」


観客「……え?」


実況「シオン選手――!!」


実況「立っているゥゥゥ!!!」


観客「うおおおおおお!!!」


大歓声。


だが――


シオンには、


何も聞こえていなかった。


シオン「…………」


胸元から、


血が流れる。


浅い。


あと僅かでも遅れていれば、


致命傷だった。


だが、


シオンが見ていたのは傷ではない。


シオン(…………今のは……?)


自分は、


確かに見た。


剣が届くより先に――


斬られる自分を。


シオン(何が……起きた……?)


考える暇はない。


顔を上げる。


No.A「…………」


No.Aは、


自らの剣を見ていた。


そして、


シオンを見る。


No.A「…………」


今大会。


初めてだった。


No.Aの一撃を受けて、


立っている者。


No.A「……避けたか」


シオン「…………」


返事はしない。


いや――


返す言葉がない。


自分自身、


何が起きたのか理解できていない。


No.A「…………」


その口元が、


ゆっくりと吊り上がった。


No.A「……面白い」


シオン「…………」


No.Aは、


再び距離を取る。


観客「……?」


実況「お、おっと……?」


実況「A選手が――」


実況「再び構えたァァァ!!」


ざわめきが起こる。


観客「またやるのか?」


観客「一撃で終わらなかったぞ……」


No.A「…………」


剣を構える。


先ほどより、


僅かに低く。


シオン「…………!」


空気が変わる。


No.A「なら――」


静かな声。


No.A「次の一撃で終わらせる」


シオン「…………」


来る。


再び、


あの一撃が。


シオンは、


剣を握り直す。


実況「まさか!!」


実況「今大会初!!」


実況「A選手――二撃目だァァァァァ!!!」


観客「うおおおおおお!!!」


No.Aが、


地面を蹴る。


先ほどより速い。


シオン「――ッ!」


だが――



また。



一瞬だけ、


世界が歪む。



シオン「――!」



見える。


左肩から、


胸へ。


斜めに振り下ろされる剣。


その先に――


斬り伏せられる自分。



シオン(まただ……!!)



次の瞬間。


現実のNo.Aが、


全く同じ軌道で迫る。


シオン「――ッ!!」


身体を捻る。



ズバァッ!!



今度は、


肩を浅く斬られる。


シオン「ぐっ……!」


それでも――


倒れない。


No.A「…………!」


実況「またァァァ!!」


実況「また避けたァァァァァ!!!」


観客「うおおおおおお!!!」


シオン「はぁ……はぁ……」


二度。


偶然じゃない。


攻撃が来る直前。


ほんの一瞬だけ――


“その先”が見える。


シオン(…………何なんだ)


シオン(これは……)


No.A「…………」


シオンが自らの異変に困惑する一方。


No.Aは――


笑っていた。


No.A「……いい」


シオン「…………」


No.A「もっとだ」


再び、


剣を構える。


No.A「次は――」


その眼から、


先ほどまでの余裕が、


僅かに消える。


No.A「今のより速い」


シオン「…………!」


三度目。


No.Aが踏み込む。


未来が見える。


シオンが動く。


刃が掠める。


四度目。


さらに速く。


五度目。


さらに鋭く。


No.Aの一撃は、


シオンが凌ぐたびに研ぎ澄まされていく。


実況「な、なんだこれはァァァ!!」


実況「一撃!!」


実況「また一撃!!」


実況「そのすべてが必殺!!」


実況「だがシオン選手――倒れない!!!」


観客「うおおおおおお!!!」


シオン「はぁ……はぁ……!」


腕。


肩。


脇腹。


少しずつ、


傷が増えていく。


見えている。


それでも、


完全には避けられない。


No.A「…………」


だが。


No.Aの表情は――


戦いが続くほど、


楽しそうになっていた。


No.A「……そうか」


シオン「…………?」


No.A「一撃で終わらないってのは――」


剣を握る手に、


力が籠もる。


No.A「こんなに面白いのか」


シオン「…………!」


次の瞬間。


No.Aが、


これまでとは比べものにならない速度で踏み込んだ。


シオン「――!!」


世界が歪む。


見えた未来。


だが――


シオン「…………!?」


違う。


速すぎる。


見えているのに――


身体が追いつかない。


シオン(避けられない――!!)


No.A「――終わりだ」


剣が振り抜かれる。


シオン「――ッ!!」


咄嗟に、


自らの剣を差し込む。



ガキィィィィィン!!!



観客「――!!?」


実況「な――!?」


凄まじい衝撃が、


闘技場を駆け抜ける。


地面に、


亀裂が走った。


シオン「ぐっ……!!」


No.A「…………!」


剣と剣。


初めて――


真正面からぶつかった。


シオン「…………!」


受け止めた。


No.Aの一撃を。


避けたのではない。


掠らせたのでもない。


真正面から――


止めた。


No.A「…………」


シオン「はぁ……はぁ……」


No.Aの目が、


大きく見開かれる。


そして――


笑った。


No.A「……最高だ」


ミシッ――。


シオン「……?」


足元から、


小さな音がした。


二人の剣がぶつかった地点から、


闘技場の石床へ――


一本の亀裂が伸びていた。


実況「…………」


実況「え?」


亀裂は、


止まらない。


ミシ……


ミシミシミシ――


観客「……おい」


実況「ちょ、ちょっと待ってください……」


巨大な闘技場が――


僅かに、


揺れ始めた。

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