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《凶宴-CARD》  作者: shogo5


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130/135

『喝采の十枚目』【9】


 カードではなく――


 No.10の指だけを――

 見た。


シオン「…………っ」


 剣を――

 床へ突き立てる。


 震える腕に――

 力を込める。


 膝を――

 起こす。


 脚に――

 力が入らない。


シオン「ぐっ……!」


 それでも――


 剣を支えに。


 ゆっくりと――

 身体を起こす。


No.10「…………」


 血を流しながら――


 シオンが

 再び立ち上がる。


 剣を――

 構える。


 見るのは――


 カードじゃない。


 No.10の――

 十本の指。


No.10「…………」


 宙を舞う――

 無数のカード。


 その中心で――


 十本の指が

 僅かに動く。


シオン「…………」


 右手――


 人差し指。


 動く。


 その瞬間――


 シオンの目が

 光る。


 見えた。


 右――


 来る。


 シュッ!!


シオン「――!」


 身体を沈める。


 頭上を――

 カードが通過する。


 次。


 左手――


 薬指。


 引く。


 見える。


 背後。


 戻る。


シオン「そこだ!」


 ギィンッ!!


 振り返らない。


 剣だけを――

 背後へ回す。


 カードが弾ける。


No.10「…………!」


 右手――


 親指。


 僅かに――

 弾く。


シオン「左――」


 ピンッ――!


 コインが飛ぶ。


 直後――


 カードが

 大きく軌道を変える。


 だが――


 シオンはもう

 そこにいない。


No.10「…………」


 シオンが――

 一歩。


 前へ。


 シュバババッ!!


 さらに――

 カードが襲う。


 見ない。


 カードは――

 見ない。


 見るのは――


 指。


 右。


 左。


 引く。


 弾く。


 捻る。


 その動きから――


 次に何が起きるのか。


 その先が――

 見える。


 ギィンッ!!


 一枚を弾く。


 身体を捻り――

 二枚を躱す。


 踏み込む。


No.10「…………!」


 さらに――

 一歩。


 カードの嵐を――


 シオンが

 突き進む。


No.10「なるほど」


 指が――

 激しく動く。


No.10「ようやく――」

No.10「見る場所を変えたんだね」


シオン「…………」


 答えない。


 血を流しながら――


 前へ。


No.10「でも――」


 両手が――

 大きく開く。


 十本。


 すべての指が――

 一斉に動く。


 シュババババババッ!!


 カードが――

 四方から襲う。


シオン「…………!」


 目が――

 光る。


 見える。


 右――


 左――


 背後――


 上――


 さらに――


 その次。


シオン「――!!」


 踏み込む。


 右から来るカードを――

 紙一重で躱す。


 頬が――

 裂ける。


 構わない。


 左――


 剣で弾く。


 背後――


 身体を沈める。


 頭上――


 通り過ぎる。


 さらに――


 前。


 ザシュッ!!


シオン「ぐっ……!」


 肩を――

 一枚が裂く。


 それでも――


 止まらない。


No.10「…………!」


 シオンとの距離が――

 消えていく。


 一歩。


 また――

 一歩。


 そして――


No.10「――!」


 懐。


 シオンが――

 潜り込む。


 十本の指が――

 動く。


 だが――


 遅い。


シオン「もう見えてる」


 剣を――

 振り抜く。


 ザンッ!!


No.10「――!」


 狙ったのは――


 身体じゃない。


 指でもない。


 その――

 すぐ先。


 十本の指から伸びる――


 極細のワイヤー。


 その始まり。


 すべてが――

 一閃で断ち切られる。


 パラ――


 パラパラ――


 パラパラパラパラ――


 宙を舞っていたカードが――


 一枚。


 また一枚。


 次々と――

 床へ落ちていく。


No.10「…………」


 指を――

 動かす。


 何も――

 起こらない。


 もう一度。


 何も――

 動かない。


シオン「…………」


 剣を下ろす。


シオン「もう――」

シオン「終わりだ」


 一歩――

 踏み込む。


 ドゴッ!!


No.10「――っ!!」


 拳が――

 顔面を捉える。


 No.10の身体が――

 吹き飛ぶ。


 ドンッ!!


 舞台へ――

 倒れる。


No.10「…………」


 その周りへ――


 パラ――


 最後のカードが

 落ちる。


シオン「はぁ……」

シオン「はぁ……」


 肩で――

 息をする。


 身体中から――

 血が流れている。


 それでも――


 シオンは

 立っていた。


 倒れたNo.10を――

 見下ろす。


 終わった。


 そのはずだった。


シオン「…………」


 視線が――

 舞台の奥へ向く。


 二つの――

 水槽。


シオン「…………」


 セイ。


 ヴァン。


 二人が――

 水の中で。


 動かなくなった――

 あの光景。


シオン「…………っ」


 剣を握る手に――

 力が入る。


 こいつが――


 二人を。


 ゲームに使った。


 ショーのために。


 命を――


シオン「…………」


 ゆっくりと――


 No.10へ

 向き直る。


No.10「…………」


 No.10が――

 シオンを見る。


 シオンは――

 何も言わない。


 ただ――


 剣を。


 持ち上げる。


No.10「…………」


 切っ先が――

 No.10へ向く。


 今まで――


 何度も戦った。


 《凶宴-CARD》と。


 国を滅ぼした――

 奴らと。


 それでも――


 殺すことは

 選ばなかった。


 《凶宴-CARD》を――

 終わらせる。


 それが――

 シオンの復讐だった。


 だが――


 今。


 初めて。


 目の前の男を――


 殺そうとしている。


シオン「…………」


 剣を――

 振り上げる。


 セイの顔が――

 浮かぶ。


 笑って。


 騒いで。


 勝手に――

 財布まで持っていった。


シオン「…………っ」


 ヴァン。


 何も言わず――

 ついてきた。


 何度も――

 背中を預けた。


 もう――


 二人とも。


シオン「…………!!」


 剣を握る手が――

 震える。


 このまま――


 振り下ろせばいい。


 こいつは――

 二人を殺した。


 だったら――


 殺しても。


シオン「…………」


 ――命だけは。


シオン「…………!」


 あの日の――


 父の言葉。


 城なら――

 建て直せる。


 土地なら――

 取り返せる。


 だが――


 命だけは――

 戻らない。


シオン「…………」


 No.10を殺しても――


 セイは――

 戻らない。


 ヴァンも――


 戻らない。


 それなら――


 これは。


 復讐ですらない。


 ただ――


 怒りに任せて。


 命を――

 奪うだけ。


シオン「…………くそっ!!」


 剣を――

 振り下ろす。


 ブンッ!!


No.10「…………!」


 ドンッ!!


 舞台が――

 震える。


No.10「…………」


 剣が突き刺さったのは――


 No.10の顔。


 その――

 すぐ横。


 舞台の床。


シオン「…………」


 剣を握ったまま――

 俯く。


シオン「俺は――」


 息を――

 吐く。


シオン「お前らと同じには――」

シオン「ならない」


No.10「…………」


 しばらく――

 沈黙が流れる。


 やがて――


No.10「…………なるほど」


シオン「…………?」


 倒れたまま――


 No.10が

 小さく笑う。


No.10「やっと――」

No.10「分かったよ」


シオン「…………何がだ」


No.10「No.7が――」


シオン「――!」


No.10「どうして君に賭けたのか」


シオン「…………」


 No.7。


 その名が――

 ここで。


No.10「僕には――」

No.10「分からなかったんだ」


No.10「彼がどうして――」

No.10「《凶宴-CARD》を降りたのか」


シオン「…………!」


No.10「どうして――」

No.10「君なら終わらせられると」

No.10「そう思ったのか」


シオン「…………」


No.10「だから――」


 床に散らばった――

 カードへ目を向ける。


No.10「僕も――」

No.10「確かめてみたくなった」


シオン「…………」


No.10「強いからじゃない」


 妖艶な笑みが――

 僅かに戻る。


No.10「君が――」

No.10「どういう人間なのかをね」

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