『喝采の十枚目』【8】
シオンが――
地面を蹴る。
今度は――
待たない。
仕掛けられる前に――
自分から。
No.10へ向かって――
一気に距離を詰めた。
No.10「そうこなくちゃ」
シュッ!!
カードが――
三枚。
シオン「――!」
一枚目――
直進。
身体を傾け――
躱す。
二枚目――
横を通り過ぎる。
その瞬間――
僅かに光る。
シオン「ワイヤー!」
振り返る。
直後――
一直線に
カードが戻ってくる。
ギィンッ!!
剣で弾く。
そして――
ピンッ――!
シオン「!」
コインが――
柱へ当たる。
三枚目のカードが――
大きく軌道を変える。
シオン「そこだ!」
ギィンッ!!
斬り落とす。
No.10「…………」
シオンは――
止まらない。
一歩――
さらに一歩。
シュッ!!
次のカード。
直進――
躱す。
戻る――
弾く。
コイン――
シオン「右!」
曲がったカードを――
斬り落とす。
ギィンッ!!
さらに――
前へ。
No.10「…………」
No.10が――
一歩下がる。
シオン「――!」
初めて――
距離が縮まった。
シュッ!!
カード。
シオンの目が――
僅かに光る。
躱す。
ワイヤー――
弾く。
ピンッ――!
コイン。
シオン「――そこ!」
ギィンッ!!
カードが――
床へ落ちる。
あと――
数歩。
シオン「…………!」
踏み込む。
剣を――
振り抜く。
ブンッ!!
No.10「おっと」
No.10が――
身体を反らす。
剣先が――
服を裂く。
No.10「…………」
シオン「どうした?」
剣を――
構え直す。
シオン「もう――」
シオン「終わりか?」
No.10「…………」
裂けた服を見る。
そして――
笑った。
No.10「いいね」
シオン「…………」
No.10「本当に――」
No.10「面白い」
No.10が――
ゆっくりと両手を上げる。
No.10「でも――」
十本の指が――
僅かに開く。
No.10「まだ終わりじゃないよ」
シオン「…………?」
カタ――
シオン「?」
足元。
一枚のカードが――
揺れる。
カタ――
カタカタ――
カタカタカタカタ――!!
シオン「――!?」
舞台中から――
音が響く。
足元。
壁際。
柱のそば。
ゲームで――
ばら撒かれたカード。
そして――
戦いの中で
放たれたカード。
そのすべてが――
ゆっくりと――
浮かび上がる。
シオン「…………!」
数え切れないほどのカードが――
シオンを囲む。
その間で――
何かが光った。
シオン「ワイヤー……?」
一本じゃない。
カードから――
カードへ。
さらに――
次のカードへ。
極細のワイヤーが――
複雑に繋がっている。
シオン「…………」
最初から――
全部。
繋がってたのか。
No.10「さて――」
No.10が――
両手を広げる。
No.10「ここからが――」
No.10「一番の見せ場だ」
指が――
動く。
瞬間――
シュババババババッ!!
シオン「――!!」
すべてのカードが――
一斉に動き出す。
前から――
後ろから――
左右から――
頭上から。
数え切れない刃が――
シオンへ襲いかかる。
シオン「くっ!!」
目が――
光る。
見える。
一枚目――
右。
躱す。
二枚目――
左。
弾く。
三枚目――
背後。
振り返る。
ギィンッ!!
次――
上。
さらに――
右。
ワイヤー――
戻る。
その奥――
曲がる。
シオン「くそっ!!」
ギィンッ!!
ギィンッ!!
剣を――
振り続ける。
だが――
シオン「――っ!」
腕が裂ける。
さらに――
シュッ!!
シオン「ぐっ!」
脚。
脇腹。
肩。
次々と――
カードが身体を掠める。
シオン「…………!」
見る。
カードを――
見る。
次は――
どれだ。
戻るのか。
曲がるのか。
そのまま来るのか。
ワイヤーは――
コインは――
次のカードは――
シオン「――!」
未来。
右へ躱す。
直後――
別のカードが
ワイヤーに引かれる。
シオン「なっ――」
ザシュッ!!
シオン「ぐあっ!!」
背中が――
裂ける。
身体が――
前へ崩れる。
それでも――
剣を振るう。
ギィンッ!!
一枚。
ギィンッ!!
二枚。
だが――
その二枚に繋がった
別のカードが――
同時に動く。
シオン「――!?」
避けた先。
そこへ――
さらに数枚。
シオン「くそっ――!!」
ザシュッ!!
ザンッ!!
シオン「がっ――!!」
身体が――
吹き飛ぶ。
ドンッ!!
背中から――
床へ叩きつけられる。
シオン「…………っ」
腕――
脚――
脇腹――
肩――
いくつもの傷から――
血が流れる。
剣を握る手にも――
力が入らない。
No.10「…………」
カードが――
宙を舞う。
No.10は――
その中心で
笑っている。
シオン「…………」
見てた。
ずっと――
カードを。
ワイヤーを見つけた。
コインにも――
気付いた。
戻るカードも――
曲がるカードも――
見分けた。
なのに――
シオン「…………違う」
No.10「…………?」
シオンが――
ゆっくり顔を上げる。
シオン「目で――」
シオン「追ってるだけじゃ……」
宙を舞う――
無数のカード。
シオン「ダメだ……」
追えば――
追うほど。
次のカードを見る。
その次を見る。
ワイヤーを見る。
コインを見る。
また――
カードを見る。
シオン「…………」
違う。
見せられてる。
見る場所を――
選ばされてる。
シオン「誘導されてる……」
No.10「…………」
シオンの視線が――
変わる。
カードを――
見ない。
ワイヤーでもない。
コインでもない。
その奥。
No.10。
シオン「…………」
右手――
親指が動く。
直後――
一枚のカードが曲がる。
左手――
人差し指が引かれる。
カードが――
一直線に戻る。
小指が――
僅かに動く。
別のワイヤーが――
張る。
シオン「…………!」
カードが動く前に――
指が動く。
ワイヤーが張る前に――
指が動く。
コインが飛ぶ前も――
指が動く。
シオン「…………そうか」
カードじゃない。
コインでも――
ワイヤーでもない。
全部――
始まりは。
あいつの――
十本の指。
シオン「…………」
血に濡れた手で――
剣を握り直す。
そして――
初めて。
カードではなく――
No.10の指だけを――
見た。




