『喝采の十枚目』【7】
八枚のカードが――
一斉に放たれた。
シオン「――!」
右。
左。
上。
足元。
それぞれが――
違う軌道で迫る。
シオンの目が――
僅かに光る。
見える。
ほんの少し先。
一枚目――
屈んで躱す。
二枚目――
剣で弾く。
三枚目――
身体を捻る。
四枚目――
シオン「そこだ!」
ギィンッ!!
剣で弾き飛ばす。
No.10「いいね」
No.10は――
笑っている。
No.10「さっきより――」
No.10「ずっといい」
シオン「…………」
その時――
シュッ!!
シオン「!」
通り過ぎたはずのカードが――
戻ってくる。
一直線に。
No.10の手元へ。
シオン「ワイヤー――!」
細い糸が――
一瞬だけ光る。
さっきのゲームと同じ。
カードを操っていた――
あのワイヤー。
No.10の指が――
僅かに動く。
直後。
手元へ戻ったカードが――
再び放たれる。
シオン「くっ!」
躱す。
だが――
別の一枚が。
今度は――
ぐんっ――!!
シオン「――!?」
大きく――
軌道を変えた。
一直線じゃない。
弧を描くように――
シオンの背後へ回り込む。
ギィンッ!!
振り返りざまに――
剣で弾く。
シオン「…………!」
さらに――
一枚。
横を通り過ぎる。
シオン「また来る――!」
構える。
だが――
そのカードは。
戻らない。
そのまま――
舞台の奥へ突き刺さる。
シオン「…………?」
戻る。
曲がる。
戻らない。
同じカードなのに――
動きが違う。
シオン「…………」
次。
No.10が――
三枚を放つ。
シュシュシュッ!!
シオン「――!」
一枚目。
そのまま直進。
二枚目。
通過した直後――
一直線に引き戻される。
シオン「ワイヤー!」
剣で弾く。
だが――
三枚目。
途中で――
大きく曲がる。
シオン「――っ!」
頬を――
鋭い痛みが走る。
血が――
一筋流れる。
シオン「…………」
床へ落ちたカードを見る。
今のは――
ワイヤーじゃない。
シオン「なんだ……?」
No.10「…………」
答えない。
ただ――
楽しそうに笑っている。
シオン「…………」
ワイヤーなら――
分かる。
引けば――
戻る。
だが。
今のカードは――
途中で軌道そのものが変わった。
シオン「ワイヤーだけじゃ――」
シオン「あんなカーブは――」
シオン「できない」
No.10「…………」
シオン「じゃあ――」
剣を構える。
シオン「なんで――」
シオン「曲がった?」
No.10「さあ?」
No.10が――
一枚のカードを取る。
No.10「考えてみるといい」
シュッ!!
カードが――
一直線に飛ぶ。
シオン「!」
シオンが躱す。
その横を――
カードが通過する。
直後。
ピンッ――
No.10が弾いたコインが――
舞台脇の柱へ当たる。
次の瞬間。
シオン「――!」
通り過ぎたカードが――
柱の方へ引かれるように曲がる。
そこから――
再びシオンへ迫る。
ギィンッ!!
剣で弾く。
シオン「…………」
カード。
柱。
そして――
床へ落ちたコイン。
シオン「…………」
No.10「どうしたんだい?」
シオン「…………もう一回」
No.10「ん?」
シオン「来いよ」
剣先を――
No.10へ向ける。
シオン「もう一回――」
シオン「投げてみろ」
No.10「…………」
妖艶な笑みが――
僅かに深くなる。
No.10「いいだろう」
シュッ!!
再び――
カード。
シオンは――
動かない。
カードだけを――
見る。
横を通過する。
そして――
No.10の指。
親指が――
コインを弾く。
ピンッ――!
今度は――
反対側の壁。
その瞬間。
カードが――
逆方向へ曲がる。
シオン「…………!」
間違いない。
カードが曲がる前――
必ず。
コインが――
動いている。
シオン「そういうことか」
No.10「…………」
シオン「磁石か」
No.10の目が――
僅かに細くなる。
シオン「そのコインを使って――」
シオン「舞台の仕掛けを動かしてる」
床。
壁。
柱。
舞台のあちこちに――
仕込まれた仕掛け。
金属のカードを――
引き寄せる。
だから。
投げた後でも――
軌道を変えられる。
No.10「…………」
数秒の沈黙。
No.10「ご名答」
シオン「…………」
No.10「奇術は――」
No.10「一つの種だけで」
No.10「できているとは限らない」
指先で――
コインが転がる。
No.10「そのまま飛ぶカード」
コインが――
消える。
No.10「戻ってくるカード」
反対の手から――
現れる。
No.10「そして――」
No.10「曲がるカード」
シオン「…………」
No.10「さて――」
カードを――
一枚。
指の間に挟む。
No.10「次はどれだろうね?」
シオン「…………!」
種を見破っただけじゃ――
終わらない。
飛んでくるたびに――
判断しなければならない。
普通か。
ワイヤーか。
磁石か。
シオン「…………」
それでも――
何も分からなかった時とは
違う。
ワイヤーなら――
動きを見る。
磁石なら――
コインを見る。
種があるなら――
見破れる。
シオンが――
剣を握り直す。
シオン「だったら――」
一歩。
前へ出る。
シオン「こっから――」
剣先を――
No.10へ向ける。
シオン「反撃だ」
No.10は――
一瞬だけ目を見開く。
そして――
笑った。
No.10「そうこなくちゃ」
シオンが――
地面を蹴る。
今度は――
待たない。
仕掛けられる前に――
自分から。
No.10へ向かって――
一気に距離を詰めた。




