『喝采の十枚目』【3】
シオンは――
一人。
公演会場へ向かって
走り出した。
◇
――公演会場。
入口の扉へ
手をかける。
シオン「…………」
開いている。
シオン「セイ!」
シオン「ヴァン!」
中へ入る。
返事はない。
薄暗い通路を――
奥へ。
やがて――
一枚の大きな扉が
目の前に現れた。
シオンが――
ゆっくりと押し開ける。
ギィィ――
シオン「…………!」
広い――
公演場。
幾つもの客席。
その先には――
大きな舞台。
だが――
明かりはない。
シオン「…………」
シオン「セイ!」
シオン「ヴァン!」
パッ――!
シオン「!」
二つの光が――
同時に舞台を照らした。
左右。
そこに置かれていたのは――
二つの
巨大な透明の水槽。
シオン「…………!」
左の水槽。
その中には――
セイ「シオン!」
シオン「セイ!」
そして――
右の水槽。
シオン「ヴァン!」
ヴァン「…………」
シオンと――
目が合う。
ヴァン「見ての通りだ」
ヴァン「捕まった」
セイ「お前もかよ!」
ヴァン「…………」
ヴァン「お前に言われたくない」
セイ「うるせぇ!」
シオン「二人とも――」
シオン「無事なんだな?」
セイ「ああ!」
ヴァン「問題ない」
二人とも――
両手を拘束され
水槽の中に閉じ込められている。
だが――
まだ
水は入っていない。
シオン「待ってろ!」
シオンが――
舞台へ向かおうとした。
パチン。
シオン「!」
指を鳴らす音。
舞台中央――
三つ目の
スポットライトが灯る。
そこには――
一人の男が
立っていた。
シルクハット。
整えられた衣装。
片手には――
一組のトランプ。
その顔には
余裕を崩さない笑み。
男は――
胸元へ片手を添え
ゆっくりと頭を下げた。
No.10「ようこそ――」
顔を上げる。
No.10「待っていたよ」
No.10「シオン・アルヴェリア」
シオン「…………」
シオンが――
剣へ手をかける。
シオン「お前が――」
シオン「No.10か」
No.10「ご名答」
No.10は――
指先のカードを
くるりと回す。
No.10「もっとも――」
No.10「この程度では」
No.10「拍手はあげられないけどね」
シオン「二人を放せ」
No.10「それはできない」
シオン「…………!」
No.10「せっかく――」
No.10「舞台へ上がってもらったんだ」
No.10が――
左右の水槽へ
視線を向ける。
No.10「最後まで――」
No.10「付き合ってもらわないとね」
セイ「ふざけんな!」
セイ「さっさとここから出せ!」
No.10「おや」
No.10「随分と元気だね」
セイ「当たり前だろ!」
No.10「それは何より」
No.10が――
再び
シオンを見る。
No.10「さて――」
手にしていたトランプを
シルクハットの中へ落とす。
No.10「せっかく君が」
No.10「ここまで来てくれたんだ」
No.10「一つ――」
両手を広げる。
No.10「ゲームをしようじゃないか」
シオン「ゲーム……?」
No.10「ああ」
No.10が――
笑みを深める。
No.10「ルールは簡単だよ」
指を一本――
ゆっくりと立てる。
No.10「君が勝てば――」
左右の水槽へ
視線を向ける。
No.10「二人を解放する」
シオン「…………」
No.10「ただし――」
立てていた指を――
ゆっくりと下へ向ける。
No.10「君が負ければ――」
カチッ――
シオン「…………!」
水槽の上部。
二つの蓋が――
同時に開いた。
ゴボッ――!
セイ「!?」
大量の水が――
二つの水槽へ
流れ込み始める。
シオン「おい!!」
セイとヴァンの足元へ――
水が
少しずつ溜まっていく。
No.10「二人には――」
優雅な笑みを
浮かべたまま。
No.10「ここで――」
No.10「退場してもらう」
シオン「…………!」
No.10「さあ――」
十本の指を――
ゆっくりと広げる。
No.10「ショーの始まりだ」




