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《凶宴-CARD》  作者: shogo5


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『喝采の十枚目』【2】



 ただ一枚。


 セイを示す――


 《♦2》のカードだけが

 残されていた。


     ◇


シオン「…………」


 シオンは――

 手の中のカードを見る。


 《♦2》。


 間違いない。


 これは――

 セイを示している。


シオン「……No.10か」


ヴァン「だろうな」


 明日――


 この街で公演を行う

 奇術師。


 そして――


 《凶宴-CARD》

 十枚目の男。


シオン「近くにいるのか……?」


ヴァン「…………」


 ヴァンが

 周囲を見渡す。


 人通りはある。


 店も開いている。


 警察も――

 変わらず街を歩いている。


 だが――


 セイだけが

 突然消えた。


シオン「探すぞ」


ヴァン「ああ」


 二人は――

 すぐに動き出した。


     ◇


シオン「セイ!」


 路地へ入り――


 辺りを探す。


シオン「いたら返事しろ!」


 返事はない。


 そのまま――

 さらに奥へ。


 細い路地。


 いくつもの曲がり角。


 だが――


 セイの姿は

 どこにもない。


シオン「くそ……」


ヴァン「シオン」


シオン「?」


 ヴァンが――

 足元を指す。


シオン「…………!」


 落ちていたのは――


 兎の布。


 セイが

 頬を隠すために使っていたもの。


シオン「セイの……」


 拾い上げる。


ヴァン「こっちで間違いなさそうだな」


シオン「ああ」


 二人は――

 路地のさらに奥へ走る。


 そして――


 角を曲がった。


シオン「…………?」


 その先には――


 一本の道。


 誰もいない。


シオン「…………」


ヴァン「…………」


シオン「おかしい」


 行き止まりではない。


 隠れられそうな場所も

 ほとんどない。


 それなのに――


 誰の姿もない。


シオン「本当にこっちなのか?」


ヴァン「あの布が――」

ヴァン「偶然落ちていたとは思えない」


シオン「…………」


 確かに。


 だが――


 だからこそ。


シオン「……誘われてる?」


ヴァン「その可能性はあるな」


 セイが消え――


 《♦2》のカードが残された。


 そして――


 追った先には

 セイの兎の布。


 まるで――


 進む道を

 教えられているような。


シオン「…………」


ヴァン「どうする?」


シオン「行く」


 迷う必要はない。


シオン「セイがいるなら――」

シオン「行くしかない」


ヴァン「ああ」


 二人は――

 再び歩き出した。


     ◇


 しばらく進むと――


 路地を抜けた。


 その先にあったのは――


 広い通り。


 人が行き交い――

 馬車が走っている。


 何の変哲もない

 街の大通り。


シオン「……ここに出るのか?」


ヴァン「…………」


 ヴァンが――

 辺りを見渡す。


ヴァン「公演会場は――」

ヴァン「あっちだ」


 指差した先。


 大通りの向こう側。


シオン「…………」


 気付けば――


 かなり近くまで

 来ていた。


シオン「やっぱり――」

シオン「誘導されてるな」


ヴァン「ああ」


シオン「なら――」

シオン「このまま会場へ行く」


ヴァン「そうだな」


 二人が

 歩き出した――


 その時。



 ヒラ――



シオン「…………?」


 一枚のカードが――


 二人の前を

 横切った。


 風に乗るように――


 ゆっくりと

 宙を舞っている。


シオン「…………」


ヴァン「…………」


 ヴァンが――

 カードへ手を伸ばす。


シオン「待て」


 ヴァンの手が止まる。


シオン「触らない方がいい」


ヴァン「…………」


シオン「何が仕込まれてるか分からない」


ヴァン「ああ」


 カードは――


 二人の間を

 ゆっくりと通り過ぎる。


 そして――


 地面へ落ちる。



 直前。



 パッ――!



シオン「!?」


 消えた。


 煙も――


 音もない。


 まるで最初から

 そこに何もなかったように。


シオン「今の……」


ヴァン「奇術か」


シオン「…………」


 誰かが

 こちらを見ている様子はない。


 それでも――


 確実に。


 何かが――

 自分たちを見ている。


シオン「急ごう」


ヴァン「ああ」


 二人は――

 会場へ向かう。


 だが――


 数歩進んだところで。


シオン「…………?」


 違和感。


 隣に――


 気配がない。


シオン「…………ヴァン?」


 振り向く。


シオン「…………!」


 いない。


 ほんの数秒前まで――


 隣を歩いていたはずの

 ヴァンが。


 消えている。


シオン「ヴァン!」


 辺りを見渡す。


 大通り。


 人混み。


 店先。


 どこにも――

 姿はない。


シオン「…………」


 セイに続いて――


 ヴァンまで。


シオン「くそっ――」


 その時。



 ヒュッ――!



シオン「!」


 再び――


 一枚のカード。


 シオンが

 咄嗟に掴み取る。


シオン「…………!」


 手の中。


 描かれているのは――



 《♦A》。



シオン「…………」


 A。


 ヴァンを示す――

 カード。


シオン「No.10……!」


 直後――



 ヒュッ――!



シオン「!」


 もう一枚。


 飛来したカードを――

 掴む。


 そこに

 描かれていたのは――



 《♦10》。



シオン「…………」


 裏返す。


 そこには――


 短い言葉が

 記されていた。



『お連れのお二人は――

 一足先に会場でお待ちだよ』



シオン「…………!」


 シオンが――

 顔を上げる。


 大通りの先。


 そこに見える――


 明日の公演会場。


シオン「…………」


 最初から――


 ここへ

 連れてくるつもりだった。


 セイも。


 ヴァンも。


 そして――


 自分も。


シオン「……待ってろ」


 シオンは――


 一人。


 公演会場へ向かって

 走り出した。

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