『喝采の十枚目』【1】
身体も――
すっかり元に戻った。
No.9と別れ――
No.3とも
一度別れた三人は――
No.10の公演が行われる街へ
辿り着いていた。
セイ「着いた――!」
大きく伸びをしながら――
セイが
街へ入っていく。
シオン「ここで間違いないんだよな?」
ヴァン「ああ」
ヴァンが取り出したのは――
あの公演の告知。
ヴァン「次の公演場所は――」
ヴァン「この街だ」
シオン「公演は?」
ヴァン「明日だ」
セイ「明日か――」
シオン「…………」
シオンは――
告知へ目を落とす。
シオン「でも――」
シオン「待つ必要はないよな」
セイ「?」
シオン「明日ここで公演するなら――」
シオン「今日のうちに」
シオン「会場にいるかもしれない」
ヴァン「ああ」
ヴァン「行ってみる価値はあるな」
セイ「じゃあ――」
セイ「決まりだな!」
奇術師――
No.10。
十枚目のカード。
居場所は――
すでに分かっている。
なら――
明日まで
待つ理由はない。
三人は――
公演会場へ向かうことにした。
◇
街の中を歩き始めて――
しばらく。
セイ「…………」
セイが
辺りを見回す。
セイ「なあ」
シオン「ん?」
セイ「なんか――」
セイ「警察、多くね?」
シオン「…………」
言われてみれば――
確かに多い。
大通り。
路地の入口。
店先――
街の至るところに
警察の姿がある。
何人かは――
住民を呼び止め
何かを聞いていた。
別の場所では――
数人の警察が
路地の奥を調べている。
シオン「何かあったのか?」
ヴァン「さあな」
それでも――
街は
普段通りに動いている。
店は開き――
人も歩いている。
だが――
道行く人々は
どこか落ち着かない。
警察の横を通るたびに――
僅かに
視線を向ける者もいる。
セイ「…………」
セイが――
自分の頬に触れる。
セイ「この街でも――」
セイ「頬は隠しといた方がいいよな」
ヴァン「ああ」
セイは――
懐から
見覚えのある布を取り出す。
兎の布。
シオン「まだ持ってたのか」
セイ「好きで持ってんじゃねぇよ!」
文句を言いながら――
セイは
《2》を覆う。
ヴァンも――
頬の《A》が
見えないように隠す。
シオン「行くぞ」
セイ「おう!」
◇
それから――
三人は
公演会場を目指して歩いていた。
セイ「なあ――」
セイ「まだ?」
シオン「俺に聞くな」
セイ「じゃあヴァン!」
ヴァン「もう少しだ」
セイ「もう少しって――」
セイ「どれくらいだよ」
ヴァン「もう少しだ」
セイ「同じじゃねぇか!」
シオン「黙って歩け」
セイ「お前は分かってねぇだろ!」
シオン「…………」
セイ「…………」
シオン「うるさい」
セイ「なんだよ!」
そんな声を聞きながら――
ヴァンは
先を歩いていく。
その後を――
シオンが追う。
そして――
シオン「…………?」
足を止めた。
ヴァン「どうした」
シオン「…………セイ?」
返事がない。
振り返る。
そこに――
セイの姿はなかった。
シオン「…………」
ヴァン「…………」
二人が
来た道を見る。
人はいる。
店もある。
警察も歩いている。
だが――
さっきまで
後ろにいたはずのセイだけが――
いない。
シオン「セイ!」
声を上げる。
返事はない。
シオン「どこ行った……?」
ヴァン「…………」
ヴァンが
周囲へ視線を走らせる。
シオン「まさか――」
その時――
ヒュッ――!
シオン「!」
何かが――
シオンの頬の横を
高速で通り過ぎる。
直後――
――トッ!
背後の壁へ
突き刺さった。
シオン「…………?」
振り返る。
壁に刺さっているのは――
一枚のトランプ。
シオンが
ゆっくりと近づく。
そして――
壁から
カードを抜き取った。
シオン「…………!」
そこに
描かれていたのは――
《♦2》。
ヴァン「…………」
シオン「これ――」
シオンが
周囲を見回す。
だが――
誰もいない。
ただ一枚。
セイを示す――
《♦2》のカードだけが
残されていた。




