↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《凶宴-CARD》  作者: shogo5


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
120/123

『九死の九枚目』【6】




No.9「僕が」


「《凶宴-CARD》にいる――」



「本当の目的を」


「お話ししましょう」



シオン「…………」



 病室に――


 静寂が落ちる。



 セイ。


 ヴァン。


 No.3。



 三人の動きを封じたまま――


 No.9は


 静かに口を開く。



No.9「僕の目的は――」



「《凶宴-CARD》によって」


「傷つけられた人たちを――」



「一人でも多く」


「救うことです」



シオン「…………は?」



セイ「…………え?」



No.3「へぇー……」



ヴァン「…………」



シオン「ちょっと待て」



「お前は――」


「《凶宴》なんだろ?」



No.9「ええ」



シオン「なのに――」


「《凶宴》に傷つけられた人間を」


「助けてるっていうのか?」



No.9「そうですよ」



シオン「だったら――」



「なんで」


「《凶宴》にいる?」



No.9「その方が――」



「救えるからです」



シオン「…………?」



No.9「《凶宴》にいれば――」


「次の仕事が」


「どこで行われるのか」



「事前に知ることができます」



シオン「…………!」



No.9「仕事が終われば――」



「僕はすぐに」


「動くことができる」



「一分でも――」


「一秒でも早く」



「傷ついた人たちの元へ」


「向かうことができます」



セイ「じゃあ――」



「今までの仕事でも」


「ずっとやってたのか?」



No.9「ええ」



「まず――」


「その土地の医者を」


「優先して助けます」



シオン「医者を……?」



No.9「僕一人で――」


「全ての負傷者を」


「治療することはできませんから」



「ですが――」



「医者を何人か助ければ」


「その人たちが」


「次の患者を救える」



「だから――」


「まず」


「治療する人間を残します」



シオン「…………」



No.9「そして――」



「必要な薬や」


「治療に使える道具を」


「近くに残す」



「その後は――」


「《9》の印を消して」



「僕自身も」


「被害者の中に紛れます」



セイ「紛れるって――」



No.9「ただの生存者として――」


「瓦礫の下にいる人を探す」



「動けない人を運ぶ」



「医者の元へ――」


「負傷者を連れていく」



シオン「…………」



No.9「治療そのものは――」


「助けた医者たちに任せます」



セイ「なんでだよ?」



「お前がやった方が――」


「早いんじゃねぇの?」



No.9「目立つからですよ」



セイ「…………?」



No.9「僕が治療していると――」


「《凶宴》に知られるわけにはいきません」



シオン「…………」



No.9「もし――」


「僕が仕事の後に」


「被害者を治療していると知られれば――」



「《凶宴》から」


「外される可能性があります」



セイ「…………!」



No.9「そうなれば――」



「次に」


「どこで仕事が行われるのか」



「僕には――」


「分からなくなる」



「それでは――」



「助けられるはずの命に」


「間に合わなくなるかもしれません」



シオン「だから――」



「自分がやったって」


「分からないようにしてるのか」



No.9「ええ」



「ただ――」



「それでも」


「治療が足りないと判断した時は」



「皆が寝静まるのを待ちます」



セイ「…………夜に?」



No.9「ええ」



「誰にも見られない時間に――」



「必要な治療だけをする」



「そして――」


「そのまま去ります」



セイ「…………」



 セイは――


 しばらく黙ったまま


 No.9を見る。



セイ「そういや……」



「俺――」



「No.9が」


「人襲ってるとこ――」



「直接見たことねぇな」



シオン「…………一度も?」



セイ「ああ」



「仕事にはいたけど――」



「誰かと戦ってるとこは」


「見たことねぇ」



No.3「俺も――」


「ないな」



ヴァン「俺もだ」



シオン「…………」



No.9「当然でしょう」



「僕は――」



「人を傷つけるために」


「《凶宴》にいるわけではありませんから」



シオン「…………」



 その言葉に――



 シオンの脳裏へ


 あの日の光景が浮かぶ。



 アルヴェリアが――


 滅びた日。



 崩れた街。



 傷ついた民。



 至るところから聞こえる――


 助けを求める声。



 あまりにも多くの命が――


 失われた。



 それでも――



シオン「…………待て」



No.9「?」



シオン「あの日――」



「アルヴェリアでも……」



 思い返せば――



 あれだけの被害だった。



 国そのものが


 崩れ落ちた中で――



シオン「医者が……」



「医者や――」


「治療のできる人間が」



「思ってたより――」


「多く生き残ってた」



セイ「…………」



シオン「その人たちが――」



「生き残った民を」


「治療してた」



 あの時は――


 考える余裕などなかった。



 生き残った者たちが――


 必死に助け合っている。



 ただ――


 そう思っていた。



 だが――



シオン「…………あれ」



「お前が――」


「やったのか?」



No.9「…………」



 No.9は――


 少しだけ間を置く。



No.9「僕は――」


「医者を」


「助けただけですよ」



シオン「…………」



No.9「治療をしたのは――」


「アルヴェリアの」


「医者たちです」



「僕一人で――」


「あれだけの人を」


「救えるわけではありません」



シオン「…………そうか」



 確かに――


 そうだった。



 生き残った医者たちは――


 休むことなく


 民の治療を続けていた。



 その医者たちに――


 救われた者がいる。



 その者たちが――


 また別の誰かを助け。



 生き残った者たちが――


 少しずつ


 国を立て直していった。



 もし――



 あの日。



 あの医者たちが


 死んでいたら。



 救えなかった命は――


 もっと多かった。



シオン「お前が――」


「医者を助けたから」



「助かった民がいる」



No.9「…………」



シオン「その民がいたから――」



「今のアルヴェリアがある」



No.9「…………」



 シオンは――


 真っ直ぐに


 No.9を見る。



シオン「アルヴェリアの王子として――」



「お前に」


「礼を言わなきゃならない」



No.9「…………」



シオン「民を救ってくれて――」



「ありがとう」



 静かな病室に――


 その言葉が落ちる。



No.9「…………変な人ですね」



シオン「何がだよ」



No.9「僕も――」


「あの日」


「アルヴェリアを滅ぼした」


「十三人の一人ですよ」



シオン「分かってる」



No.9「…………」



シオン「それでも――」



「助けたことまで」


「なかったことにはならないだろ」



No.9「…………」



 No.9は――


 しばらく


 シオンを見つめる。



 そして――



No.9「礼を言うのは――」



「僕の方かもしれませんね」



シオン「…………?」



No.9「No.A」


「No.2」


「No.3」


「No.4」


「No.5」


「No.6」


「No.7」


「No.8」



「もう――」


「八人もいなくなった」



シオン「…………」



No.9「これだけ減ったのなら――」



「僕が《凶宴》にいる理由も」


「もうありません」



セイ「…………」



No.9「僕が中にいたのは――」


「次に被害が出る場所を」


「少しでも早く知るためです」



「ですが――」



 No.9は――


 シオンを見る。



No.9「あなたが――」


「《凶宴》そのものを」


「終わらせようとしている」



「そして――」


「実際にここまで」


「八枚を弾いた」



シオン「…………」



No.9「被害が起きた後に――」


「僕が命を救うより」



「そもそも――」


「被害が起きない方がいい」



シオン「…………ああ」



No.9「ですから――」



「礼を言います」



「シオン・アルヴェリア」



「あなたのおかげで――」



「僕もようやく」


「《凶宴》にいる必要が」


「なくなりました」



シオン「…………」



 No.9は――


 静かに息を吐く。



No.9「九死に一生を得る――」



「僕はずっと――」


「その一つを」


「拾おうとしてきました」



「ですが――」



「九死そのものが」


「なくなるのなら――」



「それが――」


「一番いい」



シオン「…………そうだな」



No.9「ええ」



 九死に――


 一生を得る。



 死の中から――


 一つの生を拾う。



 そのために――


 《凶宴》の中に居続けた医者。



 だが――



 死の淵から


 命を拾うより。



 その死を――


 生み出すものそのものを


 なくす。



 No.9が――


 《凶宴-CARD》にいる理由は。



 もう――


 なくなっていた。



No.9「さて――」



 No.9が


 椅子から立ち上がる。



No.9「話は終わりです」



セイ「じゃあ――」


「これも終わらせろよ!」



 セイが――


 動かない腕を振ろうとする。



No.9「もう少しですよ」



セイ「まだ動かねぇんだけど!」



No.9「大人しくしていてください」



「病院ですから」



セイ「お前がやったんだろ!!」



 張り詰めていた空気が――


 少しだけ緩む。



 シオンは――


 目の前の医者を見る。



 《凶宴-CARD》No.9。



 アルヴェリアを滅ぼした――


 十三枚の一人。



 そして――



 死ぬはずだった命を――


 誰にも知られることなく


 拾い続けてきた。



 九死の――


 九枚目。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。