『九死の九枚目』【5】
セイ「お前――!!」
ヴァン「…………!」
No.3「…………お前」
シオン「…………?」
男が病室へ入った瞬間――
三人の空気が変わった。
セイが立ち上がり――
ヴァンも男を見据える。
No.3も――
僅かに目を細めている。
シオン「…………」
三人を見る。
そして――
目の前の医者を見る。
シオン「もしかして――」
「こいつが?」
セイ「ああ」
「No.9」
シオン「…………!」
シオンは――
男の頬を見る。
だが――
そこにあるはずのものがない。
シオン「いや、でも――」
「印がないぞ?」
No.9「ああ――」
「《9》ですか?」
シオン「…………」
No.9「そんなもの――」
「本気で付けるわけないでしょう」
シオン「…………は?」
No.9「僕の本職は――」
「医者ですから」
「《凶宴》の仕事をする時だけ――」
「付けています」
シオン「…………」
セイ「そうだったのかよ」
No.9「ええ」
No.9は――
セイとヴァンへ
視線を向ける。
No.9「今は――」
「あなたたちが」
「そちら側についていることは」
「手紙で分かっています」
セイ「手紙……?」
No.9「ええ」
「仕事の手紙と一緒に――」
「あなたたちが」
「もう《凶宴》ではないことも」
セイ「…………」
ヴァン「なるほどな」
No.9「ですが――」
その視線が――
No.3へ移る。
No.9「No.3」
「あなたが共にいることは――」
「書かれていませんでした」
No.3「…………」
No.9「あなたは今――」
「どちら側ですか?」
No.3「…………」
No.3は――
少し考える。
シオン。
セイ。
ヴァン。
そして――
目の前のNo.9。
僅かな沈黙の後――
No.3「ちょうど――」
「こっち側になったとこだ」
No.9「…………」
No.3「ってことで――」
No.3の口元が――
僅かに上がる。
No.3「四対一」
「どうする?」
病室の空気が――
一瞬で張り詰める。
No.9「…………」
No.9は――
小さく息を吐く。
No.9「困りましたね」
セイ「何が?」
No.9「ここは――」
「病院ですよ」
「暴れる場所ではありません」
No.3「じゃあ――」
「外出るか?」
No.9「いえ」
「その必要もありません」
セイ「…………?」
その瞬間――
セイ「――っ!?」
No.9の手が――
セイの腕へ伸びる。
その指先には――
一本の注射器。
セイ「おま――」
――チクリ。
セイ「…………っ!?」
瞬間――
セイの腕から
力が抜けた。
セイ「なっ――」
「腕が……!」
ヴァン「…………!」
ヴァンの手が――
剣へ伸びる。
だが――
No.9「動かないでください」
――ヒュッ。
銀色の刃が――
ヴァンの腕を掠める。
ヴァン「…………!」
剣を握ろうとした指が――
止まった。
ヴァン「…………なるほど」
ヴァンが――
自らの手を見る。
ヴァン「動かんな」
No.9「切ってはいませんよ」
「少し――」
「動かなくしただけです」
No.3「…………へぇ」
No.3が――
一歩踏み出す。
No.9「あなたもですよ」
No.3「――っ」
首筋に――
僅かな痛み。
いつの間にか――
一本の針が
突き立っている。
No.3「…………いつ」
No.9「今です」
No.3「…………っ」
次の瞬間――
No.3の足から
力が抜ける。
咄嗟に壁へ手をつき――
倒れる身体を支えた。
No.3「…………なるほど」
「面白ぇな」
セイ「おい……!」
動かない腕を押さえながら――
セイがNo.9を睨む。
セイ「何が――」
「暴れる場所じゃねぇだよ!」
「お前が一番――」
「やってんじゃねぇか!」
No.9「そうですか?」
セイ「そうだろ!」
No.9「僕は――」
「治療の邪魔をする人たちを」
「大人しくさせただけです」
セイ「やってることが――」
「医者じゃねぇだろ!」
No.9「誰も――」
「傷つけてはいませんよ」
セイ「…………!」
セイが――
言葉を止める。
確かに――
腕は動かない。
ヴァンも――
剣を握れない。
No.3も――
まともに立てない。
だが――
三人とも
傷らしい傷は負っていない。
シオン「…………」
シオンは――
No.9を見る。
人体の――
どこに触れれば。
どこを狙えば。
どう動かなくなるのか。
まるで――
全て分かっているかのようだった。
シオン「お前――」
「本当に医者なんだな」
No.9「先ほどから――」
「そう言っているでしょう」
シオン「…………」
No.9は――
何事もなかったかのように
椅子へ腰を下ろす。
No.9「安心してください」
「しばらくすれば――」
「動けるようになります」
セイ「…………ったく」
ヴァン「…………」
No.3「…………」
No.9は――
四人を見渡す。
No.9「それでは――」
僅かな間を置き――
No.9「僕が」
「《凶宴-CARD》にいる――」
「本当の目的を」
「お話ししましょう」




