『九死の九枚目』【3】
◇
――同刻。
街の一角。
武器屋。
ヴァン「…………」
壁一面に――
剣や槍。
斧。
見慣れない形の武器まで――
所狭しと並んでいる。
ヴァンは――
その中から
一本の剣を手に取った。
握り。
重さ。
刃の厚み。
軽く確かめ――
ヴァン「…………」
元の場所へ戻す。
「それ――」
「買わねぇの?」
ヴァン「…………?」
聞き覚えのある声。
振り返る。
少し離れた場所で――
一つの武器を眺める男。
ヴァン「…………No.3」
No.3「よう」
ヴァン「こんなところで会うとはな」
No.3「それはこっちの台詞だ」
ヴァン「…………」
No.3の周囲には――
いくつもの武器が
並べられている。
ヴァン「新しい武器か」
No.3「…………ああ」
ヴァン「見つかったのか?」
No.3「全然」
近くにあった槍を――
手に取る。
少し眺め――
No.3「…………違うな」
すぐに戻した。
No.3「鎌も――」
「双剣も」
「弓も」
「全部あいつに見られたからな」
ヴァン「シオンか」
No.3「ああ」
「次に戦う時――」
「同じじゃ」
「つまんねぇだろ?」
ヴァン「なるほどな」
No.3「…………」
そこで――
No.3がヴァンを見る。
No.3「で――」
「お前は?」
「なんでここにいんだよ」
ヴァン「シオンと来た」
No.3「…………」
僅かな沈黙。
No.3「お前もか」
ヴァン「ああ」
No.3「…………ふーん」
ヴァン「意外か?」
No.3「まあな」
「セイはともかく――」
「お前まで」
「シオンと一緒にいるとは思わなかった」
ヴァン「俺は――」
「見届けているだけだ」
No.3「何を?」
ヴァン「シオンが――」
「どこまでカードを弾けるのか」
No.3「…………」
ヴァン「昨日――」
「八枚目まで弾いた」
No.3「…………もう八枚目か」
No.3の口元が――
僅かに上がる。
No.3「やっぱ――」
「面白ぇな」
ヴァン「ああ」
No.3「じゃあ――」
「残りも」
「そのまま見に行くのか?」
ヴァン「そのつもりだ」
No.3「…………」
その時――
セイ「おーーい!!」
店の外から――
大きな声。
セイ「ヴァン!!」
バンッ――!!
勢いよく――
扉が開く。
セイ「No.10の居場所――」
「分かったぞー!」
店へ飛び込んできたセイ。
そして――
ヴァンの隣を見る。
セイ「…………」
No.3「よう」
セイ「No.3じゃん」
No.3「ああ」
セイ「何してんの?」
No.3「新しい武器探してる」
セイ「あー」
「そういや――」
「そんなこと言ってたな」
No.3「…………」
セイ「それより!」
セイは――
手に持っていたポスターを
二人の前へ広げる。
セイ「見ろよ!」
黒い帽子。
派手な衣装。
宙を舞う――
無数のカード。
その中心には――
一人の奇術師。
頬には――
《10》。
ヴァン「…………No.10」
No.3「…………」
セイ「ここに――」
「次の公演場所」
「書いてる」
セイは――
ポスターに書かれた場所を
指差す。
セイ「近い?」
ヴァン「…………」
その場所を確認し――
ヴァン「近いな」
セイ「だろ?」
「飯食って歩いてたら――」
「普通に見つけた!」
ヴァン「…………飯?」
セイ「…………」
ヴァン「金はどうした」
セイ「今それ関係ねぇだろ!」
ヴァン「…………」
セイ「大事なのは――」
「No.10!」
ヴァン「…………そうだな」
ヴァンは――
もう一度
ポスターへ目を向ける。
ヴァン「これで――」
「次の行き先は決まったな」
セイ「おう!」
「シオンに教えに行こうぜ!」
ヴァン「待て」
セイ「ん?」
ヴァンは――
No.3を見る。
ヴァン「その前に――」
「一つ聞きたい」
No.3「何?」
ヴァン「最近――」
「仕事の手紙は来ているか?」
No.3「…………」
僅かな沈黙。
No.3「いや」
「来てねぇな」
セイ「やっぱり」
No.3「?」
セイ「俺も――」
「弾かれてから」
「一回も来てねぇ」
ヴァン「俺もだ」
No.3「…………」
セイ「やっぱ俺ら――」
「クビになってんじゃねぇの?」
ヴァン「そういうことだろうな」
セイ「…………」
No.3「何だよ」
セイ「いや――」
「自分から辞めたなら」
「別にいいんだけどさ」
「勝手にクビにされたと思ったら――」
「なんかムカつく」
No.3「…………」
ヴァン「以前なら――」
「どうでもよかった」
セイ「ん?」
ヴァン「だが――」
「最近は」
「俺も少しそう思う」
セイ「だろ!?」
No.3「…………」
二人を見て――
No.3が
僅かに口元を上げる。
No.3「だったら――」
「もう」
「完全にシオン側に行けばいいだろ」
セイ「シオン側?」
No.3「ああ」
「どうせあいつ――」
「《凶宴》を終わらせるんだろ?」
ヴァン「解体する――」
「と言っている」
No.3「じゃあ――」
「俺も」
「そっちの方が面白そうだ」
セイ「お前も来んの?」
No.3「いや」
セイ「来ねぇのかよ」
No.3「お前らと一緒に――」
「一枚ずつ追っても」
「つまんねぇだろ」
ヴァン「なら――」
「何をする?」
No.3「別の方を探る」
セイ「別?」
No.3「俺たちに――」
「仕事を出してる四人」
「そっちを探す」
セイ「でも――」
「どこにいるか知ってんの?」
No.3「知らねぇ」
セイ「…………」
No.3「だから――」
「探す」
ヴァン「…………」
少し考え――
ヴァンが口を開く。
ヴァン「手掛かりなら――」
「一つある」
No.3「?」
ヴァン「No.7が言っていた」
「キングなら――」
「あの四人について」
「何か知っているかもしれないと」
No.3「キングが?」
ヴァン「ああ」
「あいつだけは――」
「特別だからな」
No.3「たしかにな」
セイ「あと――」
「俺らがNo.7と会ったのは」
「ある国にある――」
「あいつのカジノなんだけどさ」
No.3「カジノ?」
セイ「そこ――」
「No.6を作った国らしい」
No.3「No.6を?」
セイ「そう」
「それで――」
「俺とヴァンは」
「その国でキングを見た」
No.3「…………キングを」
ヴァン「ああ」
「キングほどの危険人物が――」
「自由に出入りできている」
「それなら――」
「その国の王と」
「何かしらの接点があるはずだ」
No.3「…………」
セイ「だったら――」
「その国の王なら」
「キングについて」
「何か知ってるかもしれねぇな」
No.3「…………」
No.3は――
少し考える。
No.3「なるほど」
「じゃあ――」
「まずは」
「その国の王から当たってみるか」
ヴァン「ああ」
セイ「決まりだな!」
セイは――
手にしたポスターを丸める。
セイ「じゃあ――」
「シオンにも」
「報告しに行こうぜ」
No.3「シオンは?」
セイ「病院」
No.3「病院?」
セイ「あいつ――」
「昨日No.8にボロボロにされてんのに」
「普通に動こうとしてたから」
「今朝――」
「病院行かせた」
No.3「…………そうか」
セイ「あ――」
そこで――
何かを思い出す。
セイ「見舞いついでに――」
「財布も返さねぇと」
ヴァン「…………財布?」
セイ「ああ」
「治療費も――」
「払えないだろうし」
ヴァン「…………」
ヴァンは――
セイを見る。
ヴァン「お前――」
「それで飯食ってたのか?」
セイ「…………」
No.3「…………」
セイ「…………行こうぜ!」
ヴァン「おい」
セイ「早くしねぇと――」
「シオン待ってるだろ!」
何事もなかったように――
セイは店を出ていく。
ヴァン「…………」
No.3「…………」
その背中を――
二人は黙って見つめる。
ヴァン「…………行くか」
No.3「ああ」
No.10の居場所。
そして――
《凶宴》へ仕事を出す
四人を探ることを決めたNo.3。
その報告と――
見舞い。
そして――
シオンの財布を返すため。
三人は――
病院へ向かった。




