『九死の九枚目』【2】
◇
――その頃。
セイ「うっま!!」
街の食堂。
テーブルいっぱいに――
料理が並んでいた。
肉。
パン。
スープ。
魚。
さらに――
山盛りのデザート。
セイ「これも美味ぇ!」
「こっちも――」
「うっま!!」
次から次へと――
料理を口へ運んでいく。
今朝。
セイ「俺らは適当に時間潰してっから」
そう言って――
シオンを病院へ送り出した。
そして――
セイ「すみませーん!」
「これもう一個!」
「はい!」
セイ「あ――」
「あとこっちも!」
「かしこまりました!」
セイ「へへっ」
適当どころか――
満喫していた。
当然――
問題が一つある。
セイは――
ほとんど金を持っていない。
だが――
セイ「…………」
懐へ手を入れる。
取り出したのは――
一つの財布。
もちろん――
セイのものではない。
セイ「…………へへ」
◇
――今朝。
シオン「…………分かったよ」
そう言って――
病院へ向かおうとする
シオン。
セイ「…………」
その背中を――
セイは見ていた。
そして――
スッ。
すれ違いざま――
セイの手が動く。
シオン「じゃあ――」
「行ってくる」
セイ「おう!」
何も気付かず――
歩いていくシオン。
その背中を見送り――
セイは懐から
一つの財布を取り出した。
セイ「…………へへ」
中を覗く。
セイ「おっ」
思っていたより――
入っている。
セイ「狂の時に――」
「スリ覚えといてよかったー!」
嬉しそうに――
財布を懐へしまう。
セイ「よし!」
「飯食いに行こ!」
◇
セイ「ごちそうさまでした!!」
勢いよく――
手を合わせる。
テーブルの上には
空になった皿が――
いくつも積み上がっていた。
「ありがとうございました!」
会計を済ませ――
店を出る。
セイ「いやー」
「食った食った」
膨れた腹を擦りながら――
街を歩く。
その視線が――
ふと止まった。
セイ「…………」
屋台。
鉄板の上で――
肉が焼かれている。
ジュウゥゥゥ――
セイ「…………」
香ばしい匂いが――
通りへ広がる。
セイ「…………別腹だな」
◇
セイ「うめぇー!」
串に刺さった肉を
頬張りながら――
再び街を歩く。
その手には――
もう一本。
さらに――
紙袋まで抱えている。
セイ「病院って――」
「結構時間かかんのかな」
モグモグ。
セイ「まあ――」
「まだいいか」
モグモグ。
◇
しばらくして――
セイ「…………」
今度は――
菓子屋の前で
足を止めていた。
店先には――
色とりどりの菓子が
並べられている。
セイ「…………」
「いらっしゃいませ」
セイ「これ――」
「何?」
「焼き菓子です」
「中に蜂蜜と――」
セイ「一個!」
「…………はい」
セイ「あ」
「やっぱ三個!」
◇
セイ「…………美味ぇ」
幸せそうに――
菓子を頬張る。
片手には――
すっかり軽くなった
シオンの財布。
セイ「…………」
中を見る。
セイ「…………減ったな」
少し考える。
セイ「…………」
財布を閉じる。
セイ「まあ――」
「シオンだし」
「なんとかすんだろ」
そのまま――
懐へ戻した。
◇
食べて――
歩いて――
また食べて。
気になる店を見つければ――
入る。
旨そうな匂いがすれば――
止まる。
そうして――
気の向くままに
街を歩き続ける。
セイ「ふぅ――」
ようやく――
腹も満たされた。
セイ「そろそろ――」
「シオンのとこ戻るか」
そう呟き――
病院へ向かおうとした。
その時――
セイ「…………ん?」
壁一面に――
一枚の大きなポスターが
貼られていた。
派手な装飾。
舞い散る――
無数のカード。
その中心には――
黒い帽子を被った
一人の男。
セイ「…………」
足が――
止まる。
見覚えのある顔。
そして――
その頬には。
大きく刻まれた――
《10》。
セイ「…………マジかよ」
ポスターには――
大きな文字で
こう書かれていた。
――奇術師。
――近日公演。
セイ「…………」
食べかけの菓子を――
口へ放り込む。
セイ「いたじゃん」
偶然――
街を遊び歩いていたセイは。
十枚目の居場所を――
見つけていた。




