『九死の九枚目』【1】
白い天井。
鼻につく――
薬品の匂い。
シオン「…………」
ベッドの上で――
シオンは
小さく息を吐いた。
身体には――
いくつもの包帯が巻かれている。
昨夜――
No.8との戦いで負った傷。
戦いが終わった直後は
まだ動けていた。
だが――
◇
――今朝。
セイ「お前――」
「病院行ってこい」
シオン「…………は?」
セイ「は?じゃねぇよ」
「昨日あんだけボロボロにされて――」
「なんで普通に歩こうとしてんだよ」
シオン「この程度――」
セイ「この程度じゃねぇだろ」
「昨日あんだけやられてんだぞ」
シオン「…………」
ヴァン「今回は――」
「セイに同意だな」
シオン「お前までか」
ヴァン「ああ」
「治せる傷を放置する理由はない」
シオン「…………」
セイ「俺らは適当に時間潰してっから」
「お前は大人しく――」
「治療されてこい」
シオン「…………分かったよ」
◇
――そして現在。
結局――
シオンは一人で
病院を訪れていた。
診察を受け――
傷の処置を終えたところで
そのままベッドへ
身体を預けている。
シオン「…………さて」
白い天井を見上げながら――
考える。
今回は――
次の《凶宴》について
何の情報も得られなかった。
No.8も――
他のメンバーが
どこにいるのかは知らなかった。
これまでは――
何かしらの手掛かりを辿り
次の一枚へと
繋がってきた。
だが今回は――
それがない。
手掛かりも――
行き先も。
シオン「…………」
どうするか。
そう考えながら――
身体を起こそうとする。
シオン「っ…………」
傷が痛み――
すぐに背中を
ベッドへ戻した。
シオン「…………」
どうやら――
今は次の一枚より
こっちをどうにかする方が
先らしい。
シオン「まあ――」
「治療に専念するには」
「ちょうどいいか」
再び――
身体の力を抜く。
その時――
「無茶をしましたね」
傍らから――
男の声が聞こえた。
シオン「…………すみません」
「傷が深い」
「あと少し遅ければ――」
「もっと面倒なことになっていました」
シオン「…………」
淡々と――
男は告げる。
白衣を纏った男は――
処置を終えた傷へ
もう一度
目を向ける。
シオン「もう動いてもいいですか?」
「駄目です」
シオン「…………」
「少し休んでください」
「傷が開きます」
シオン「……急いでるんです」
「事情は知りません」
「ですが――」
「ここでは私が医者で」
「あなたは患者です」
シオン「…………」
「もう少し休んでいてください」
シオン「…………分かりました」
男は――
シオンのカルテを手に取り
病室を出ていった。
◇
「先生」
「先ほどの患者――」
「処置は終わったんですか?」
「ああ」
廊下を歩きながら――
男はカルテへ目を落とす。
そして――
足を止めた。
「…………」
氏名――
シオン・アルヴェリア。
「…………アルヴェリア」
「先生?」
傍にいた看護師が――
その呟きに反応する。
「アルヴェリアって――」
「確か……」
少し考え――
表情を変える。
「あ――」
「《凶宴-CARD》に滅ぼされた国……」
「…………」
看護師も――
カルテへ目を向ける。
「シオン・アルヴェリア……」
その名前を見て――
さらに何かを思い出す。
「確か――」
「あの国の王子も」
「シオンって名前じゃなかったですか?」
「…………そうか」
男は――
もう一度
カルテへ目を落とす。
「…………」
「シオン・アルヴェリア」
小さく――
その名を呟く。
「…………あの国の」




