『狂奏の八枚目』【12】
――現在
ドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!
シオン「…………っ!!」
止まらない
低音
斬撃
衝撃
《16BEAT》
先ほどまでの――
倍
一つの音が消える前に
次の音が――
襲ってくる
シオンは――
剣を振るう
ガァン!!
衝撃を――
逸らす
直後
ジャァン!!
シオン「っ!!」
身体を――
捻る
高音が
頬を掠める
血が――
飛ぶ
No.8「…………フッ」
スティックが――
止まらない
ドンッ!!
地面が――
砕ける
ジャァン!!
壁が――
裂ける
ドンッ!!
ジャァン!!
ドンッ!!
ジャァン!!
速い
だが――
シオンには
見えている
次の――
音
次の――
攻撃
未来には――
映っている
それでも
シオン「…………っ」
身体が――
追いつかない
見えているのに
避けきれない
それだけでは――
ない
ドクン――
シオンの――
心臓
スッ――
呼吸
ザッ――
足
すべてが――
十六の音へ
引っ張られていく
No.8「次――」
No.8「左」
シオン「…………!」
ジャァン!!
シオンが――
右へ跳ぶ
No.8「その次――」
No.8「前」
ドンッ!!
シオン「ぐっ!!」
衝撃が――
身体を打つ
地面を――
転がる
No.8「…………いいね」
カッ――!!
スティックが――
交差する
No.8「まだ――」
No.8「ついてきてる」
ドンッ!!
シオン「…………っ!!」
剣で――
受ける
腕が――
痺れる
だが
踏み止まる
No.8「…………フッ」
もう一度――
叩く
ドンッ!!
シオンが――
横へ
ジャァン!!
頭を――
下げる
ドンッ!!
踏み込む
ジャァン!!
剣を――
振るう
ガキィン!!
スティックと――
剣がぶつかる
二人の距離が――
初めて
縮まった
No.8「…………」
シオン「お前は――」
ギギギ――
剣を――
押し込む
シオン「これが欲しかったのか」
No.8「…………?」
シオン「何が起こるか――」
シオン「分からない場所」
No.8「…………ああ」
シオン「だから――」
シオン「《凶宴》に入った」
No.8「そうだ」
ガンッ!!
No.8が――
剣を弾く
後ろへ――
跳ぶ
同時に
周囲のドラムが――
鳴る
ドドドドドドドドッ!!!!
シオン「…………っ!!」
連続する衝撃
シオンが――
走る
No.8「LIVEじゃ――」
No.8「何が起こるか」
No.8「分かってた」
ドンッ!!
No.8「俺が叩けば――」
No.8「客が叫ぶ」
ジャァン!!
No.8「曲が終われば――」
No.8「名前を呼ぶ」
ドンッ!!
No.8「全部――」
No.8「予定通り」
ジャァン!!
No.8「でも――」
スティックが――
振り下ろされる
ドォン!!!!
床が――
大きく陥没する
No.8「こっちは違う」
僅かに――
口元が上がる
No.8「誰が死ぬか」
No.8「何が壊れるか」
No.8「俺が生きて帰れるか」
両腕が――
広がる
No.8「何も――」
No.8「分からない」
浮かぶ――
ドラム
シンバル
その中心で
No.8の目だけが――
あのステージにいた時とは
まるで違っていた
No.8「だから――」
ドンッ!!
No.8「退屈しない」
シオン「…………」
シオンは――
剣を握る
あの日
アルヴェリアで――
聞いた音
地面が砕け
壁が崩れ
兵士たちが――
倒れていった
あの音も
こいつにとっては――
LIVEだった
シオン「…………ふざけるな」
No.8「…………?」
シオン「お前が退屈しないために――」
剣先を――
No.8へ向ける
シオン「他人の命まで」
シオン「舞台に上げるな」
No.8「…………」
シオン「何が起こるか分からないのが――」
シオン「そんなに好きなら」
一歩――
踏み出す
シオン「勝手に一人でやってろ」
No.8「…………」
僅かな――
沈黙
そして
No.8「…………フッ」
笑った
No.8「いいね」
スティックを――
握り直す
No.8「そういうの――」
ドンッ!!
No.8「予想してなかった」
その瞬間――
浮かんでいた楽器が
一斉に――
動き始める
シオン「…………!」
ドラム
シンバル
次々と――
位置を変える
No.8の――
前へ
左右へ
頭上へ
叩いた瞬間――
次の楽器が
スティックの先へ――
滑り込む
ドンッ!!
ジャァン!!
ドンッ!!
ジャァン!!
No.8の腕が――
さらに加速する
No.8「でも――」
スティックを――
振り抜く
No.8「まだ足りない」
カッ――!!
一音
直後――
ドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!
シオン「…………っ!?」
倍
さらに――
倍
叩く
次の楽器が――
来る
叩く
また――
次
ドラム
シンバル
ドラム
シンバル
途切れない
楽器そのものが――
No.8の演奏に合わせ
次々と――
入れ替わっていく
No.8「もっと――」
ドドドドドドドドッ!!!!
No.8「速く」
ジャジャジャジャジャジャジャジャッ!!!!
No.8「もっと――」
スティックが――
走る
目が――
見開かれる
さっきまでの――
冷めた表情は
もう――
ない
No.8「狂おうぜ!!」
ドォォォォォン!!!!
シオンの身体が――
吹き飛ぶ
シオン「ぐっ……!!」
壁へ――
叩きつけられる
それでも――
止まらない
ドクン
ドクン
ドクン
心臓まで――
加速する
シオン「…………っ」
未来を見る
一つ
二つ
三つ――
その先まで
見えている
だが――
多すぎる
身体が――
追いつかない
避ける場所も――
ない
No.8が――
大きく息を吸う
両手のスティックを――
強く握る
周囲の楽器が
一斉に――
No.8へ集まる
ドラム
シンバル
無数の楽器が――
演奏者を中心に
幾重にも――
浮かび上がる
そして――
一瞬
音が消えた
シオン「…………」
静寂
その中心で――
No.8が
笑う
No.8「まだ――」
スティックを――
構える
No.8「こんなもんじゃないだろ?」
シオン「…………!」
No.8「《32BEAT》」
スティックが――
落ちる
ドドドドドドドドドドドドドドドド
ドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!
狂奏が――
始まった




