『狂奏の八枚目』【11】
――翌朝
リズ「…………」
目を開ける
見慣れない――
天井
リズ「…………ここは」
身体を――
起こそうとする
リズ「…………っ」
全身に――
痛みが走る
頭
肩
背中
脚
どこが痛いのか――
分からないほど
身体中が――
痛む
リズ「…………」
ゆっくり――
周囲を見る
狭い部屋
簡素なベッド
棚には――
薬や包帯が並んでいる
身体にも――
いくつもの包帯
どうやら
治療院らしい
リズ「…………生きてる」
昨日――
屋上
夜空
暗闇
身体が――
落ちていく感覚
地面が――
迫って
そして――
――ドンッ!!!!
リズ「…………」
あの音
あの衝撃
何かに――
弾き飛ばされ
そこから先は――
覚えていない
その時――
ガチャ――
扉が開く
白衣を着た――
年配の医者が
部屋へ入ってきた
医者「目が覚めたか」
リズ「…………」
医者「運が良かったな」
医者は――
リズの身体を確認しながら
話を続ける
医者「昨夜――」
医者「近くで倒れていたお前を」
医者「通りかかった人間が見つけたらしい」
リズ「…………そう」
医者「骨も何本かやられている」
医者「しばらくは大人しくしてろ」
リズ「…………分かった」
医者は――
ベッド脇の机へ
一部の新聞を置く
医者「昨日の騒ぎなら――」
医者「そこに載ってる」
リズ「…………」
医者が――
部屋を出ていく
リズは
新聞へ――
手を伸ばした
広げる
大きな見出しが――
目に入る
『昨夜――市街地で大規模爆発』
リズ「…………爆発」
記事を――
読む
昨夜
市街地にある工房で――
大規模な爆発が発生
保管されていた火薬に
何らかの原因で――
引火したとみられ
周囲の建物にも――
被害が出た
リズ「…………」
発生した――
時刻
場所
どちらも――
自分が落ちた
あの瞬間
あの場所だった
思い出す
地面が――
迫っていた
もう――
死ぬ
そう思った
その瞬間――
近くの工房で
火薬が――
爆発した
その衝撃で――
身体を弾かれ
落下軌道が――
変わった
そして――
生きている
リズ「…………」
もう少し――
早ければ
もう少し――
遅ければ
爆発する場所が――
少し違えば
自分は――
死んでいた
何一つ――
予想していなかった出来事が
自分の結末を――
変えた
リズ「…………フッ」
新聞へ――
視線を落としたまま
リズ「…………そうか」
昨日までなら――
今日も
明日も
その次も――
同じだと思っていた
でも――
違った
自分が――
死ぬかどうかすら
分からなかった
次に何が起こるのか――
分からない
その感覚だけが
まだ――
胸の奥に残っていた
ドクン――
心臓が――
鳴る
落ちていた時
初めて感じた――
あの感覚
何も――
分からない
その瞬間だけは
あれほど退屈だった世界が――
少しだけ
違っていた
リズ「…………悪くない」
新聞を――
畳もうとする
その時――
パサッ――
何かが
床へ――
落ちた
リズ「…………?」
一通の――
封筒
リズは――
それを拾い上げる
差出人は――
ない
宛名も――
ない
ただ――
封筒の中央に
一つだけ
書かれていた
《凶宴-CARD》
リズ「…………」
新聞を見る
封筒へ――
視線を戻す
なぜ
新聞の中に――
こんなものが入っていたのか
分からない
封を――
開ける
中には
一枚の――
紙
短い文章が――
書かれていた
『退屈している君へ』
『まだ知らない世界を――』
『見てみたくはないか?』
その下には――
場所
そして
一つの数字
《8》
リズ「…………」
誰が――
送ってきたのか
なぜ――
自分が退屈していると知っているのか
どうして――
新聞に挟まっていたのか
何一つ――
分からない
昨日と――
同じ
分からない
知らない
この先に――
何があるのか
想像も――
つかない
リズ「…………フッ」
手紙を――
見つめる
さっきより――
僅かに
目に光が戻る
リズ「…………悪くない」
◇
そして――
リズは
手紙に書かれた場所へ――
向かった
そこで――
何を見たのか
何を聞いたのか
何が――
待っていたのか
それは――
今は
どうでもいい
ただ一つ――
確かなこと
あの日から
リズには――
もう一つ
音を鳴らす場所ができた
決められた――
セットリストはない
決められた――
終演時間もない
次に――
何が起こるのか
誰が――
倒れるのか
自分が――
生きて帰れるのか
何一つ――
分からない
そこにあったのは
熱狂ではなく――
狂気
それでも
リズにとっては――
初めて出会った
予定のない――
LIVEだった
こうして――
Requiem:VIIIの
ドラマー
リズは――
《凶宴-CARD》
八枚目――
No.8となった




