『狂奏の八枚目』【9】
カッ――!!
音が――
倍へ
《8BEAT》から――
《16BEAT》へ
◇
ドドンッ!!
シオン「っ――!!」
一つ――
いや
二つ
ほとんど同時に――
衝撃が走る
未来を見る
右から――
低い衝撃
その直後
左から――
高い斬撃
見えている
右へ踏み込み――
身体を沈める
それで――
躱せる
はずだった
ドンッ!!
ジャァン!!
ドドンッ!!
シオン「なっ――」
さらに――
次
さらに――
その次
見える
全部――
見えている
だが――
シオン「ぐっ!!」
ガァンッ!!
剣で弾いた直後――
ドンッ!!
シオン「がっ……!!」
脇腹を――
衝撃が貫く
身体が浮く
その先――
未来に
シンバル
シオン「くそっ!!」
空中で身体を捻る
ジャァァン!!
振動の刃が――
服を裂く
着地
その瞬間――
ドンッ!!
ドンッ!!
シオン「…………っ!」
足元
床が――
弾ける
後ろへ飛ぶ
だが――
No.8「遅れてる」
シオン「…………!」
トンッ――
タタッ――
ドンッ――
音が――
止まらない
No.8「さっきまで――」
No.8「ついてきてたのに」
ジャァン!!
ドドンッ!!
シオン「くっ……!!」
未来を見る
一秒にも満たない――
その先
衝撃
斬撃
衝撃
斬撃
次々と――
未来へ現れる
見えているのに――
身体が
追いつかない
シオン「…………っ」
ドクン――
鼓動
スッ――
ハッ――
呼吸
ダンッ――
足
その全てが――
No.8の音へ
引っ張られている
自分で動いているはずなのに――
動く瞬間を
決められている
No.8「…………フッ」
スティックが――
走る
右
左
上
下
もう――
止まらない
普段の――
気怠げな姿はない
白銀の髪を揺らし――
次々と楽器を叩く
No.8「いいね」
ドドンッ!!
No.8「もっと――」
ジャァン!!
No.8「速く」
ドンッ!!
ドンッ!!
No.8「もっと――」
口元が――
吊り上がる
No.8「狂おうよ」
シオン「…………!」
ドォンッ!!
巨大な衝撃
シオンは――
横へ飛ぶ
直後
ジャァン!!
ジャァン!!
二つの斬撃が――
交差する
シオン「っ!!」
未来を見る
避ける場所は――
一つ
前
シオン「――っ!!」
踏み込む
斬撃の間を――
抜ける
No.8「…………!」
初めて――
No.8の目が
僅かに開く
シオンが――
迫る
剣を構え――
一気に
間合いへ
シオン「はぁぁっ!!」
振り抜く
だが――
カァンッ!!
シオン「…………!」
スティック
No.8が――
二本を交差させ
剣を受け止めている
シオン「なっ――」
No.8「…………フッ」
笑った
そして――
No.8「やっぱ――」
No.8「こっちだ」
シオン「…………?」
No.8「何が起こるか――」
No.8「分からない」
剣と――
スティックが軋む
No.8「予定通りじゃない」
No.8「決められてない」
No.8「間違えたら――」
No.8「死ぬかもしれない」
No.8の目に――
さらに熱が宿る
No.8「これなら――」
グッ――
剣を押し返す
No.8「退屈しない」
シオン「…………」
その言葉
また――
退屈
シオン「お前――」
剣に力を込める
シオン「なんでそこまで――」
シオン「退屈を嫌う」
No.8「…………?」
シオン「LIVEも」
シオン「仲間も」
シオン「全部捨てて――」
ギリッ――
シオン「人が死ぬ場所まで来て」
シオン「それでもまだ――」
シオン「退屈じゃない方を選ぶ」
No.8「…………」
シオン「何が――」
シオン「そこまでお前を――」
その瞬間――
No.8の表情から
笑みが消えた
「…………」
ほんの――
一瞬
音が――
止まる
シオン「…………?」
静寂
さっきまで――
あれほど鳴り響いていた音が
消えた
No.8「…………別に」
いつもの――
低い声
No.8「大したことじゃない」
シオン「…………」
No.8「ただ――」
スティックを――
見つめる
No.8「飽きただけ」
シオン「…………何に」
僅かな――
沈黙
No.8「全部」
◇
――まだ
リズが――
《凶宴-CARD》の
No.8になる前
ステージの上には――
歓声が
溢れていた
「リズ――!!」
「リズー!!」
「Requiem:VIII――!!」
眩しい照明
埋め尽くされた――
客席
ギター
ベース
歌声
そして――
ドラム
ドンッ!!
ドンッ!!
ジャァン!!
リズのスティックが――
走る
一つ
二つ
三つ
正確に――
音を刻む
客席が跳ねる
腕が上がる
名前を呼ぶ
全員が――
熱狂していた
曲が終わる
「きゃあああああ!!」
割れんばかりの――
歓声
リズは――
客席を見る
リズ「…………」
次に――
何が起きるか
分かっていた
次の曲
次の照明
次の煽り
客が――
どこで叫ぶか
どこで跳ぶか
どこで――
名前を呼ぶか
全部――
分かる
ボーカル「いくぞォォォ!!」
「うおおおおお!!」
ほら――
やっぱり
同じ
スティックを――
構える
次の曲
決められた――
カウント
リズ「…………」
カッ――
カッ――
カッ――
そして
また――
予定通りの
LIVEが始まった




