『狂奏の八枚目』【8】
ドンッ!!
再び――
一つ目の音
No.8「もう一周」
低く笑う
八つの音
八つの衝撃
そして――
シオンの鼓動まで
少しずつ――
No.8の奏でる音へ
取り込まれていく
No.8の――
《8BEAT》が
開演した
◇
ドンッ!!
シオン「…………っ!」
二周目
低い音が――
通路を震わせる
シオンは未来を見る
次に来る衝撃
半歩――
右
それで躱せる
シオン「…………!」
踏み込む
直後――
ドォンッ!!
衝撃が――
左側を通り抜ける
壁が砕け――
破片が飛び散る
No.8「ツー――」
ジャァァン!!
高音
空間を斬る――
振動
未来を見る
剣を――
上げる
ガァンッ!!
シオン「ぐっ……!」
受ける
次――
ドンッ!!
避ける
ジャァン!!
弾く
ドンッ!!
踏み込む
音が続く
一定の間隔
決して乱れない
規則正しく――
何度も
何度も
響く
――ドン
――ドン
シオン「…………」
その時――
シオンの足が
一瞬だけ止まった
シオン「…………この音」
ドンッ!!
シオン「…………!」
炎――
突然
脳裏に浮かぶ
燃える街
崩れた建物
逃げ惑う人々
怒号
悲鳴
そして――
――ドン
――ドン
遠くから
響いていた
規則正しい――
低い音
音が鳴るたび――
地面が震え
壁が砕け
兵士たちの隊列が
崩れていった
まるで――
王都そのものが
何者かの奏でる音に――
従っているかのように
シオン「…………!」
忘れるはずがない
あの日――
すべてを失った日
アルヴェリアで――
確かに
この音を――
聞いていた
ドンッ!!
シオン「…………っ!」
現在へ――
意識が戻る
目の前――
浮かぶ
無数の楽器
その中央で――
スティックを握る
No.8
シオン「…………お前だったのか」
No.8「…………?」
シオン「あの日――」
剣を握る手に
力が入る
シオン「アルヴェリアで――」
シオン「この音を鳴らしてたのは」
No.8を――
睨む
シオン「お前だったのか」
「…………」
No.8は――
何も変わらない
ただ
シオンを見て――
No.8「…………ああ」
シオン「…………っ!!」
それだけ
言い訳も
迷いも
何もない
ただ――
肯定した
シオン「…………!!」
ダンッ!!
床を蹴る
シオンが――
一気に間合いを詰める
No.8「…………」
スティックが――
振り下ろされる
ドンッ!!
シオン「くっ!!」
未来を見る
左へ――
衝撃
なら――
右
踏み込む
衝撃を躱し――
さらに前へ
シオン「…………っ!!」
剣を振る
No.8「…………」
カンッ!!
シオン「…………!?」
目の前へ――
シンバル
剣が――
弾かれる
No.8「…………遅い」
シオン「なっ――」
ドンッ!!
腹へ――
衝撃
シオン「がっ……!!」
身体が――
吹き飛ぶ
ドガァン!!
壁へ――
叩きつけられる
シオン「ぐっ……」
だが――
すぐに立つ
ダンッ!!
再び――
前へ
No.8「…………」
ドンッ!!
避ける
ジャァン!!
屈む
ドンッ!!
跳ぶ
未来を見て――
避ける
避ける
避ける
そして――
近づく
シオン「…………っ!!」
剣が――
No.8へ届く
その――
直前
No.8「次――」
シオン「…………?」
No.8「右」
シオン「…………!」
シオンの右足が――
床を蹴った
シオン「なっ……」
No.8「次――」
スティックが――
軽く動く
No.8「斬る」
シオンの腕が――
剣を振る
ブンッ!!
No.8は――
僅かに身体を傾ける
剣が――
目の前を通り過ぎる
シオン「…………!?」
読まれた
未来を見て――
選んだ動きを
攻撃する――
その瞬間まで
No.8「…………」
トン――
スティックが
ドラムを叩く
No.8「次――」
No.8「後ろ」
シオン「…………っ!」
直後――
ジャァァン!!
シンバル
未来に――
斬撃
避けるため――
後ろへ
シオンの足が
動く
No.8「…………ほら」
シオン「…………!」
No.8「合ってる」
ドンッ――
ドンッ――
ドンッ――
一定のリズム
シオン「…………まさか」
自分の――
呼吸
スッ――
ハッ――
踏み込み
ダンッ――
剣を振る
ブンッ――
そして――
ドクン――
ドクン――
心臓
その全てが――
少しずつ
同じリズムへ
揃っていく
シオン「俺の動きまで……」
No.8「やっと気づいた?」
No.8の目に――
少しずつ
熱が宿る
No.8「音だけじゃない」
トン――
No.8「呼吸」
トン――
No.8「鼓動」
トン――
No.8「足」
トン――
No.8「剣」
四つの音
そして――
No.8「全部――」
スティックを
大きく振り上げる
No.8「俺のリズムに入ってる」
シオン「…………!」
ドンッ!!
五
ジャァン!!
六
ドンッ!!
七
シオンは――
未来を見る
次の攻撃
次の回避
確かに――
見えている
だが――
未来が見えるからこそ
避ける
避けるために――
動く
その動きすら――
No.8には
聞こえている
No.8「――エイト」
ドォォォンッ!!
シオン「ぐあっ!!」
衝撃が――
身体を貫く
ドガァァン!!
床を転がる
シオン「ぐっ……!」
剣を突き――
身体を止める
顔を上げる
No.8「…………」
無数の楽器
その中央――
No.8が
スティックを回す
もう――
LIVE前の
気怠げな顔ではない
その目は――
明らかに
楽しんでいる
No.8「いいね――」
口元が
吊り上がる
No.8「ちゃんと――」
No.8「ついてきてる」
シオン「…………っ」
No.8「じゃあ――」
両手のスティックが
止まる
No.8「もう少し――」
次の瞬間――
無数の楽器が
一斉に位置を変える
ドラム
シンバル
タム
さらに――
密集していく
シオン「…………?」
No.8が――
両腕を広げる
その顔には――
もう
退屈など――
どこにもない
No.8「テンポ――」
スティックを
構える
No.8「上げよっか」
カッ――!!
音が――
倍へ
《8BEAT》から――
《16BEAT》へ




