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《凶宴-CARD》  作者: shogo5


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『狂奏の八枚目』【7】




No.8「最近――」



No.8「面白いことしてるらしいじゃん」



シオン「…………」



 遠くから――


 まだ悲鳴が聞こえる。



 先ほどまで


 歓声に包まれていた会場。



 今は――


 まるで別の場所だった。



シオン「お前――」


シオン「何がしたい」



No.8「…………?」



シオン「バンドを辞めて」


シオン「自分が《凶宴》だって明かして――」


シオン「あれだけの人間を」


シオン「わざわざ混乱させた」



No.8「…………」



 煙草の先から――


 細い煙が揺れる。



No.8「別に」



シオン「…………?」



No.8「言っただけ」



No.8「俺が――」


No.8「No.8だって」



シオン「その結果が――」


シオン「あれだろうが」



No.8「…………」



 No.8が――


 会場の方へ目を向ける。



No.8「さっきまで――」


No.8「全部、揃ってた」



シオン「…………?」



No.8「俺が叩けば――」


No.8「叫ぶ」



No.8「曲が終われば――」


No.8「名前を呼ぶ」



No.8「次に何が起きるか――」


No.8「全部、分かる」



シオン「…………」



No.8「でも――」



 煙草を咥えたまま――


 遠くの悲鳴へ耳を傾ける。



No.8「《凶宴》って言った瞬間――」


No.8「全部、崩れた」



 叫び。



 走り。



 押し合い。



 誰がどこへ行くのか。



 次に――


 何が起きるのか。



 誰にも分からない。



No.8「…………」



 煙を――


 ゆっくりと吐く。



No.8「こっちの方が――」



 僅かに


 口元が上がる。



No.8「退屈しない」



シオン「…………」



 シオンの手が――


 剣の柄を強く握る。



シオン「それで――」


シオン「誰かが死んでもか?」



No.8「…………」



シオン「転んだ奴が踏まれて」


シオン「逃げ遅れた奴が潰されて――」



シオン「それでも」


シオン「退屈しなきゃいいのか」



「…………」



 短い沈黙。



 No.8は――


 煙草を指で摘む。



No.8「何が起こるか――」


No.8「分からない」



 煙草を――


 床へ落とす。



No.8「だから――」



 靴底で


 火を消す。



No.8「退屈しない」



シオン「…………っ」



 No.8の表情は――


 変わらない。



 罪悪感も。



 迷いも。



 ただ――


 自分の感覚を口にしただけ。



シオン「だったら――」


シオン「やっぱり」


シオン「お前をこのままにはできない」



No.8「…………」



シオン「《凶宴-CARD》から――」


シオン「降りろ」



「…………」



 No.8が――


 シオンを見る。



 数秒。



 何も言わない。



No.8「…………嫌だ」



シオン「…………」



No.8「まだ――」


No.8「退屈してないから」



シオン「なら――」



 シャッ――



 剣を――


 抜く。



シオン「降りてもらう」



No.8「…………」



 その剣を――


 静かに見つめる。



 そして。



 ほんの僅かに――


 口元が緩む。



No.8「…………そっか」



 カラン――



シオン「…………?」



 乾いた音。



 No.8の手に――


 二本のスティック。



 指先で――


 ゆっくりと回す。



No.8「じゃあ――」



 視線が――


 シオンへ戻る。



No.8「やろうか」



シオン「…………」



No.8「ちょうど――」



 スティックが止まる。



No.8「叩き足りなかったし」



 右手が――


 静かに上がる。



 そして――



 カッ――!!



シオン「…………!?」



 乾いた音が――


 通路に響く。



 次の瞬間。



 ゴゴゴゴゴゴ――



 空気が――


 震え始める。



シオン「なんだ……?」



 No.8の背後。



 空間が――


 歪む。



 そこから。



 一つ。



 また一つ。



 ドラム。



 シンバル。



 タム。



 無数の楽器が――


 宙へ浮かび始める。



シオン「…………!」



 通路の壁。



 天井。



 シオンの背後。



 周囲を取り囲むように――


 次々と楽器が配置されていく。



No.8「…………」



 No.8は――


 その中央に立つ。



 先ほどまでの


 気怠げな目。



 だが――



 スティックを握った瞬間。



 ほんの僅かに――


 その目に熱が宿る。



No.8「せっかくだから――」



 両腕を――


 ゆっくりと広げる。



No.8「聴いていきなよ」



シオン「…………」



No.8「俺の――」



 スティックを――


 構える。



No.8「LIVE」



 シオンも――


 剣を構える。



 向かい合う――


 二人。



 そして。



No.8「ワン――」



 ドンッ!!



シオン「…………っ!?」



 衝撃。



 音そのものが――


 シオンへ叩きつけられる。



 咄嗟に――


 剣を前へ。



 ガァンッ!!



シオン「ぐっ……!!」



 身体が――


 後ろへ押される。



No.8「ツー――」



 ジャァァァン!!



シオン「…………!」



 シンバル。



 高い音が――


 通路を走る。



 その瞬間――



 シオンには見えた。



 次に起こる――


 僅か先の未来。



 自分の身体を横切る――


 一筋の斬撃。



シオン「っ!!」



 身体を――


 沈める。



 直後。



 ズバァァン!!



 背後の壁が――


 横一文字に裂けた。



シオン「音が――」



No.8「スリー――」



 ドンッ!!



 床が――


 砕ける。



シオン「くっ!」



 跳ぶ。



No.8「フォー――」



 ジャァン!!



 高音。



 空間を――


 斬撃が走る。



 未来を見る。



 避ける。



 着地。



 だが――



No.8「ファイブ――」



 ドンッ!!



シオン「…………っ!」



 間髪なく――


 衝撃。



 剣で受ける。



 身体が――


 弾かれる。



No.8「シックス――」



 ジャァァン!!



シオン「くそっ……!」



 未来を見る。



 躱す。



 次。



No.8「セブン――」



 ドンッ!!



 さらに――


 次。



 No.8の腕が――


 大きく振り上がる。



 ここまで。



 淡々と――


 音を刻んでいた男。



 その目が。



 少しずつ――



 変わっていく。



No.8「――エイト」



 両腕が――


 振り下ろされる。



 ドンッ!!



 ジャァァァァン!!



 八つ目の音。



 その瞬間――



 ドクンッ!!



シオン「…………!?」



 心臓が――


 跳ねた。



 呼吸。



 足。



 剣を握る腕。



 身体の全てが――



 僅かに。



 音へ――



 引かれる。



シオン「なんだ……これ……」



No.8「…………」



 スティックが――


 再び上がる。



 その顔に――


 もう。



 先ほどまでの


 退屈はない。



No.8「…………フッ」



 ドンッ!!



 再び――


 一つ目の音。



No.8「もう一周」



 低く――


 笑う。



 八つの音。



 八つの衝撃。



 そして――



 シオンの鼓動まで。



 少しずつ――



 No.8の奏でる音へ。



 取り込まれていく。



 No.8の――



 《8BEAT》が。



 開演した。

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