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《凶宴-CARD》  作者: shogo5


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106/133

『狂奏の八枚目』【6】




「きゃあああああああ!!!」



「早く!!」



「押すな!!」



 悲鳴。



 怒号。



 何千もの人間が――


 一斉に出口へ押し寄せる。



シオン「…………っ!」



 人の波に逆らい――


 シオンはステージを見る。



 そこには――



 No.8。



No.8「…………」



 逃げ惑う観客を眺めながら――


 僅かに笑っている。



シオン「…………No.8」



 その時――



 No.8が動く。



 ステージの奥へ――


 ゆっくりと歩き始める。



シオン「待て!!」



 人を避けながら――


 前へ。



 だが――



「きゃっ!!」



 シオンの前で――


 一人の女性が倒れる。



シオン「…………!」



 後ろからは――


 止まることなく人が押し寄せる。



シオン「危ない!!」



 腕を掴み――


 引き起こす。



シオン「走れ!」



「は、はい……!」



 女性が――


 人の流れへ戻る。



 再びステージを見る。



 No.8の姿は――



 もう。



 そこにはなかった。



シオン「…………っ」



 シオンは――


 ステージへ向かって走り出す。






     ◇






セイ「シオン!!」



 声を張る。



 だが――


 返事はない。



セイ「くそっ!」



 押し寄せる人波。



 その中を――


 セイは必死に進む。



セイ「ヴァン!!」



ヴァン「ここだ」



セイ「うおっ!?」



 すぐ横から――


 声。



セイ「いたなら言えよ!」



ヴァン「今言った」



セイ「そういう意味じゃねぇ!」



 次の瞬間――



「きゃあああ!!」



セイ「うおっ!」



 再び――


 人の波。



 二人はそのまま――


 会場脇の通路へ押し流される。



セイ「ったく……!」



 ようやく――


 人の流れから外れる。



セイ「シオン――」


セイ「完全にはぐれたな」



ヴァン「No.8を追ったんだろう」



セイ「なら――」


セイ「俺たちも追うぞ」



ヴァン「ああ」



 セイが――


 来た道を見る。



 まだ大量の観客が


 逃げ続けている。



セイ「…………こっちは無理だな」



ヴァン「別の道を探すぞ」



セイ「おう」



 二人が――


 通路の奥へ進もうとした。



 その時。



「…………おい」



セイ「ん?」



 声。



 振り返る。



「…………!」



 そこにいたのは――



 三人。



 つい先ほどまで


 ステージの上で――


 No.8と演奏していた。



 Requiem:VIIIのメンバー。



 ボーカル。



 ギター。



 ベース。



セイ「お前ら――」



ギター「…………」



 ギターの男が――


 セイを見る。



 そして――


 その視線が


 頬で止まる。



 《2》。



ギター「…………!」



 次に――


 ヴァン。



 その頬に刻まれた――



 《A》。



ギター「お前ら……」



 表情が――


 一気に変わる。



ギター「《凶宴》か……!?」



セイ「…………」



 ボーカルとベースも――


 身構える。



ボーカル「二人も……」



 セイ。



 ヴァン。



 そして――



 No.8。



ボーカル「まさか――」



 拳を握る。



ボーカル「No.8を迎えに来たのか?」



セイ「ちげぇよ」



ギター「じゃあ何しに来た!!」



セイ「だから――」



 言いかけて。



セイ「…………あー」



 自分の頬へ――


 手をやる。



セイ「これ見たら――」


セイ「そうなるか」



ギター「ふざけんな!!」



セイ「ふざけてねぇよ!」



ヴァン「俺たちは――」


ヴァン「今は《凶宴》側じゃない」



「…………」



ボーカル「…………今は?」



セイ「ああ」



 セイは――


 自分の頬を指差す。



セイ「俺はもう――」


セイ「No.2じゃねぇ」



ギター「…………?」



セイ「セイだ」



「…………」



ギター「意味分かんねぇよ」



セイ「だろうな」



ヴァン「簡単に言えば――」



 ヴァンが――


 ステージのあった方角を見る。



ヴァン「俺たちはNo.8を迎えに来たわけじゃない」



ボーカル「じゃあ――」



ヴァン「逆だ」



「…………?」



ヴァン「《凶宴》から――」


ヴァン「降ろしに来た」



「…………!」



ボーカル「No.8を……?」



セイ「ああ」



ギター「なんでお前らが――」



セイ「俺たちじゃねぇよ」



ギター「…………?」



セイ「シオンだ」



ボーカル「シオン……?」



セイ「アルヴェリアの――」


セイ「生き残り」



「…………!」



 空気が――


 変わる。



ベース「アルヴェリア……」



ボーカル「《凶宴》に滅ぼされた国……」



セイ「ああ」



 僅かな沈黙。



セイ「あいつは――」


セイ「《凶宴》を終わらせようとしてる」



ボーカル「…………」



セイ「十三人殺して終わりじゃねぇ」



セイ「二度と――」


セイ「同じもんができないように」



セイ「《凶宴》そのものを――」


セイ「なくそうとしてる」



ギター「…………」



ベース「じゃあ――」



 ベースが――


 セイを見る。



ベース「リズも……」



セイ「ああ」



セイ「殺しに来たわけじゃねぇよ」



「…………」



 その言葉に――


 三人の表情が僅かに変わる。



ボーカル「…………」



 俯く。



 昨日。



リズ「俺が辞める」



リズ「Requiem:VIIIを」



 そして――


 今日。



リズ「俺――」



リズ「《凶宴-CARD》の――」



リズ「No.8なんだ」



 知らなかった。



 何をしていたのか。



 何を考えていたのか。



 なぜ――


 《凶宴》にいるのか。



 何も。



 知らなかった。



 それでも――



 何度も。



 一緒に音を鳴らした。



 何度も――


 同じステージに立った。



 そして。



 ついさっきも――



 四人で。



 『〜また、この場所で逢えたなら〜』を――


 演奏した。



ボーカル「…………頼む」



セイ「…………?」



 ボーカルが――


 顔を上げる。



ボーカル「シオンって奴が――」


ボーカル「リズを殺すつもりじゃないなら」



 拳を――


 強く握る。



ボーカル「頼む」



ボーカル「あいつを――」



 昨日。



 自分たちを捨てた男。



 人を殺したと――


 平然と言った男。



 《凶宴》を辞めろと言われ――


 それでも。



 《凶宴》ではなく


 バンドを去ることを選んだ男。



 それでも――



ボーカル「リズを――」



ボーカル「助けてくれ」



「…………」



セイ「…………」



ヴァン「…………」



ギター「俺からも頼む」



ベース「俺も」



セイ「…………ったく」



 頭を――


 掻く。



セイ「本人は――」


セイ「助けてほしいなんて」


セイ「思ってねぇだろうけどな」



ボーカル「分かってる」



セイ「…………」



 その答えに――


 セイは僅かに笑う。



セイ「なら――」



 奥へ続く通路を見る。



セイ「行くぞ」



ボーカル「ああ」



ヴァン「…………」



 五人は――


 走り出した。






     ◇






 ――その頃。



 ステージ裏。



 薄暗い通路を――


 一人。



 シオンが走っていた。



シオン「…………」



 前方。



 角を曲がる――


 人影。



 白銀の髪。



シオン「No.8!!」



 人影が――


 止まる。



「…………」



 ゆっくりと。



 振り返る。



No.8「…………」



 その口元には――



 いつの間にか。



 新しい煙草。



No.8「…………来たんだ」



 シオンが――


 剣へ手を掛ける。



シオン「話がある」



No.8「…………」



 煙を――


 ゆっくりと吐く。



No.8「シオン・アルヴェリア」



シオン「…………!」



No.8「知ってるよ」



 No.8の口元が――


 僅かに上がる。



No.8「最近――」



No.8「面白いことしてるらしいじゃん」



シオン「…………」



 誰もいない――


 薄暗い通路。



 向かい合う。



 シオン。



 そして――



 No.8。



 狂騒の余韻だけが――


 遠くから。



 微かに――



 響いていた。

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