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一分間  作者: はるたま
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7/11

午前九時二十七分

午前九時二十七分〇秒


高校。


体育館。


朝練を終えたバスケットボール部。


最後に一人だけ残った一年生が、

外れたシュートを拾う。


誰にも見られていない。


それでも、

もう一本だけ打つ。


努力は、

拍手より先に、

習慣になる。


午前九時二十七分十秒


商店街。


古い文房具店。


店先の鉛筆が、

風で一本だけ転がる。


店主は拾って、

何事もなかったように戻す。


誰にも気づかれない仕事ほど、

町を静かに支えている。


午前九時二十七分二十一秒


刑務所。


作業場。


一人の受刑者が、

木の椅子を磨いている。


角を、

指先で何度も確かめる。


座る人の顔は知らない。


けれど、

痛くないように。


その一心で、

紙やすりを動かし続ける。


人は、

過去を削ることはできない。


それでも、

未来に触れるものは、

丁寧に磨くことができる。


午前九時二十七分三十三秒


病院。


待合室。


五歳くらいの男の子が、

絵本を逆さまに開いている。


母親は直さない。


男の子は、

逆さまのまま笑う。


物語は、

向きよりも、

誰と読むかで変わる。


午前九時二十七分四十六秒


駅。


ホーム。


電車が出たあと。


ベンチに一冊の文庫本が残る。


忘れ物か。


置いていったのか。


本だけが知っている。


午前九時二十七分五十九秒


世界中で、


時計の針が、

また一つ進む。


学校でも、


商店街でも、


病院でも、


刑務所でも。


時間は、

誰にも同じ速度で流れる。


けれど、


その一分が何になるかは、


今日を生きる人が、

少しずつ決めている。

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