第8話 ブラック天使、降臨♡ 〜コスプレの流儀〜
――目の前に現れた守乃ちゃんは、
まるで別人だった。
黒を基調としたゴスロリ調の衣装。
清楚で、凛として、それでいてどこか危うい雰囲気。
「あれ…… 『ブラック天使のさざなみちゃん』じゃない?」
と、私――まのんが呟く。
「えぇ~♡ 別人みたいぃ~♡」香純ちゃんが目を輝かせ、
「守乃君にしては……可愛いじゃないか♡」と彩夏ちゃん。
「……あれは……!」と、厳蔵の声が裏返る。
(大きいぃ......我が憧れ……!)
堅物であるはずの、守乃の頬が赤くなる。
――やめろ。
(……まのんの方が可愛い)
悠斗の心の声が、なぜか聞こえた気がした。
『きゃーあ♡ 守乃ちゃん可愛い!
大きなお胸♡
わしの目に狂いはなかったぁぁ♡♡♡』
『ゴラァ! ぽんこつ!
叶わぬ恋にときめくな!!』
『見てトキメクだけの恋も青春なんじゃ♡』
『162歳のじじいは黙っとけ!!』
――ここで、わしが解説しよう。
『ブラック魔法少女・さざなみちゃん』
ちょっぴりエッチな魔法少女が、
故郷・ブラックポテロの街を悪魔から守る物語なのだ!
黒ゴスロリ! 可愛い! きゅん!
……ただし、イベント規約により、
以前、写真で見たような過激衣装は禁止。
無念。
『ゴラァ! 何を期待しとったんじゃ!!
神様だろ!!』
「守乃、いいじゃないっすか!」
厳蔵が親指を立てる。(すげえ大きい……)
「あれ? 源蔵、守乃ちゃん天敵じゃなかった?」
「もちろん天敵ですよ。でも――
いいものは正当に評価すべきです。」
この日、厳格な武士は死に、
ただの煩悩の塊――『緩蔵』が爆誕したのである。
私は戦慄した。
そのとき。
「じゃあ先輩、僕も着替えてきますね!」
彩夏ちゃんが颯爽と去っていく。
「『きゅんきゅん乙女のハヤト』だよね?」
私が確認すると、彩夏ちゃんはウインク。
――数分後。
「みんな! お待たせ!」
「はやっ!」一同。
……学ランだった。
ただの学ラン。
「……キャラに寄せてなくない?」
思わずツッコむ。
――わしが、解説しよう。
彩夏ちゃんも学園ラブコメ『きゅんきゅん乙女』のファン。
イブちゃんに恋するゴリゴリ体育会系男子・ハヤト。
だが現実は――
学ラン+いつものメイク+隠されない胸の大きさ。
これは……
コスプレ奉行・守乃ちゃんの逆鱗案件。
「彩夏ちゃんも芸術っすよ!」
緩蔵が吠える。(彩夏ちゃんも大きい♡)
「厳ちゃん、サングラスしても視線バレてるわよ!
胸ばっか見て!!」
「まのん先輩だって見てますよ!」
「私は女子だからいいの♡」
――その瞬間。
「ちょっと!! 彩夏さん!!」
来た。
守乃ちゃん(怒)。
「コスプレは敬意を持って再現する芸術なの!
そのハヤトもどき、名誉棄損よ!!」
「完璧なハヤトじゃないか」
彩夏ちゃん、真顔。
「だったらその胸は何なのよ!
男装なんだからパッドを外しなさい!!」
「天然だから仕方ないだろう!?」
守乃の負け。
「て・ん・ね・ん……(驚)
それ……自慢しないで……」
「重たいし、下見えないし、
男子はエッチな目で見るし、
いいことなんてないよ。」
「無駄な脂肪だよ!」
返す言葉を失った守乃。
『ピクピク……私はパッド五枚なのに……!』――守乃
『私も天然よ~♪』――まのん
『ほどよい大きさが最強よ』――香純
『オタサー最高♡』――緩蔵
(守乃ちゃんはパッド五枚……
それでも推しは変わらん!)――キタのぽん
――結果。
守乃ちゃんの本気メイクとBホルダーで、
ゴリゴリ体育会系ハヤトが爆誕。
「すご……どうやったの?」
「胸はBホルダーで隠しています。」
「……彩夏ちゃん、Gはありますよ」
「G!?」
(負けた……でも大事なのは大きさじゃないわ!!)
「じゃあ、守乃ちゃんはそのBホルダーで
普段は平にしてるってこと?」
(こら!香純ちゃん!余計なことを言うな!!)
「香純さん。今、何といいましたか……?」
(やっぱり――地雷を踏んだ……)
「だからぁ、守乃ちゃんはいつもBホルダーを付けてるの?」
「ちょっと、香純ちゃん!来なさい!」
「なんですかぁ~?まのん先輩♪」
小声で諭すまのん
「よく考えなさいよ。今が作り物よ。
パッドを詰めてるの!!」
まのんが守乃の人権を守ろうとヒソヒソ話をしたのに――
「ええっ!? パッドなの!?」と致命傷を与えた。
(ゴラァ!香純!空気読め!!)
彩夏が追撃
「あれ?守乃くん。
頭からマグマが噴火してるじゃないか」
源蔵が吐き捨てた。
「へぇ~、法律、規律を守れって言う割に、偽物。
詐欺じゃねぇか!前言撤回!!」
(失望したぜ......)
(ゴラァ!彩夏、厳蔵!!やめろぉ!
トドメを刺すなぁ!!)
ただ……肯定派一名。いや一神。
『それでも、守乃ちゃんは可愛い♡』
『だから、ぽんこつは引っ込んどけ!!』
「あなた達ねぇ!刑法第231条 侮辱罪で訴えてやる!!
逮捕だ!!」
「なんでサークル活動初日がこうなるんだよ。。。」
悠斗が天を仰ぐ。
――なんでや。
なんで、わしの守乃ちゃんがディスられなあかんねん!!
次は――極悪まのんの番やでぇ♡




