第54話 厳ちゃんの受難
コスプレは自由か、規律か!?
――――そんな議論は、三秒で消滅した。
原因は、男女同室問題。
そして
『わてはまのんの願叶え神やから、
どっちにしろ女子部屋やもんね♪』
一人だけ勝ち確ポジションの神がいた。
『ぽんちゃん、おいたしたら師匠の奥さんにチクるわよ』」
『げぇっ!?』
最上位は奥様。
それが全宇宙の真理である。
そんな中。
「わたしは悠斗先輩と同部屋、全然いいですよぉ~」
(厳ちゃんは嫌だけど)
「わたしもいいっす」
(厳ちゃんは嫌だけど)
悠斗LOVE勢、完全肯定。
「悠斗にはほぼ全部見られてるから、わたしも平気」
「おい!まのん誤解を生む!」
――ハーレム地獄絵巻、爆誕。
その瞬間。
空気が張り詰めた。
「そもそも!なぜ男女が同室なんですか!」
暴君・守乃、出陣。
「悠斗先輩ともあろうお方が、なんて破廉恥な!」
「いや……この宿、
どの部屋もオタク向け設備が充実しててさ。
一番安いこの部屋でも予算ギリギリなんだ」
空気が凍る。
守乃が、静かにスマホを掲げた。
「……こちら。近隣の高級旅館より高いです。」
「え?」
「設備を加味しても割高ですね。」
全員、ゆっくり振り向く。
そこにいたはずの女将が。
いない。
畳の上を、恐竜の足で抜き足、
差し足で後退していく影。
とんずら、ずらぜ。プロの逃走だった。
「あれ!? 女将は!?」
――安全域へワープ済み。
「逃げたぁ!」
「悠斗先輩。宿代は」
「……前払い」
チーン。
合宿初日。オタ研、ぼったくられる。
「何をやっているんですか!
これが会社員なら懲罰級ですよ!」
守乃裁判、再開。
「そのおかげで悠斗先輩と同じ空間よ♪」
「おだまり、かすみん!」
かすみん、退場。
守乃は一歩詰める。
「なぜ、事前に相談しなかったんですか」
「この宿……みんな喜ぶと思って」
一瞬。
守乃の肩から、力が抜けた。
「……仕方がありませんね」
全員が息を呑む。
「次回から、必ずわたしに相談してください」
そして。
「わたしも悠斗先輩となら、同部屋でも構いません」
静かに、爆弾投下。
「おれは?」厳ちゃんが小声で問う。
守乃は、にやりと笑った。
「厳蔵。あなたはあそこ」
指差す先。
押し入れ。
「はぁ!?」
「外から鍵、掛けられます。」
すでに確認済みらしい。
「理不尽すぎる! 同じ金払ってるんだぞ!」
「ふ~ん。美女三人が襖一枚隔てて着替えるのに?」
まのんがぴくりと反応する。
「女子は四人だけど!?」
一瞬の沈黙。
「……言い間違えです。」
守乃、微動だにせず。
厳ちゃんが、にやける。
「いいのか?(にや)」
「消灯後は一切出られません。
念のため簡易トイレを買いなさい」
「ひどすぎる!悠斗先輩も言ってやってください!」
女子全員、唱和。
「押し入れは、厳ちゃんだけだけど。」
チン。
チン。
チーン。
合宿初日、厳ちゃんの青春、終了。
今晩、襖の向こうで
雄叫びが響くことになる。
「まだ始まってもねぇぇぇ!」




