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第52話 東海道新幹線、そして“異世界(いせ)”への旅路

東海道新幹線――

そのドアが閉まった瞬間、恐怖は始まった。


「……それでは。

 これより所持金と手荷物検査を開始いたしますわ」

(お金は人を狂わせる元凶!見逃しませんわよ!!)


静かで、凛とした声。


だが、その宣告は、

オタ研一同の背筋を一瞬で凍らせるには十分だった。


検査官――いや、暴君・守乃ちゃんの時間。


「まのん先輩。……お菓子とコーラ、没収です」


「彩ちゃん。電子マネーって、甘いわね。没収。」


「かすみん。隠しポケット――しゃばいわね。」


その直後。悠斗まで撃沈!


「ビジネスパンツに白靴下。いつまで中高生ですか?」


悠斗の肩は、がくりと落ちた。


そして――


「厳蔵。……(くそっ!)合格です」


「……よし」


唯一の一発合格。

なぜか誇らしげな厳ちゃん。


「以上ですわ」


こうして、暴君:守乃ちゃんTIMEは一旦終了した。


……が。


車内の空気は、完全に死んでいた。


「いやぁ~……

 全員、魂抜けてるでぇ……」


そう呟いたのは、わし――キタのぽん。


そんな沈黙を破ったのは、香純だった。


「ねぇねぇ、悠斗先輩ぃ♪

 そろそろ……異世界の行先、教えてくださいよぉ♡」


「いせかいのあたり♪

 まだ内緒だよ」


「えっ!?異世界設定なら

 私たち、転生組なんですか!?」と彩夏。


「いやいや、現実の話だってば。

 着くまでのお楽しみ」


「じゃあ、トランプでもしよっか」


平和な会話の裏で――


没収されたポテチとコーラを思い出し、

夜食分のために耐えるまのん。


(……今は我慢。夜が本番……)


『うっひっひっひぃ……』


『ゴラぁ!ぽん!

 何を笑ってるの!?』


『い、いえ!

 何でもございません!(悔ッ!)』


新幹線は、静岡を通過。


「……やっぱり、彩夏ちゃんが言った

 USOが濃厚ね」


【車内アナウンス】

『ただいま三河安城駅を通過いたしました。

 次は名古屋です』


「……名古屋?」


「おい、みんな。降りるぞ」


「えっ!?

 大阪でUSOじゃないんですか!?」


――それは、USOうそじゃ。

(なんちゃって)


「名古屋なら、

 シフリランドかオカジマスパパークじゃない?」と香純。


名古屋で降りた一行は……


「次は近鉄に乗り換えるぞ」


「分かった!

 バルゲエスバーニャンで決まりね!」とまのん。


【車内アナウンス】

『まもなく、伊勢市駅に到着いたします』


「……伊勢?

 伊勢いせかい!? なんちゃってぇ♪」


「悠斗先輩でも、そのダジャレは寒いですよぉ!」


「かすみん、ダジャレじゃないぞ。

 降りるぞ」


「えっ!? もしかして、答えは“伊勢かいなぁ?”ですか?」


天然、かすみんはスルーされた。


「バルゲは賢島駅ですよね?

 ここで降りたらバス代が――」


「ここでいいんだよ」


(一瞬の沈黙)


「……え。伊勢?

 異世界じゃなくて?」


「異世界の“あたり”って言ってたじゃないですか!

 伊勢神宮にお参りでも……?」


伊勢いせ伊野いのあたりって言っただろ。

 高知は遠いから、今回は伊勢」


ドテぇぇぇ!!


全員、見事にずっこけた。


「まぁ……伊勢も神秘的で、

 異世界みたいなもんっすよ」


伊勢市駅。


大きな鳥居。

澄んだ空気。

観光客のざわめき。


『……ほんまもんの神様は、すげぇなぁ……』

(一応、わしも神様の端の端の端の端の端くれやけど……)


「では、ここからは私が引率します」


守乃ちゃんが、びしっと指示を出す。


「一列、等間隔で。ついて来てください」


周囲の視線。


「事件かな……?」

「検察のがさ入れ?」


「ママぁ、カルガモみたい♪」

「しーちゃん、見ちゃダメ!」


「さぁ、オタ研のみなさん!

 参りますわよ!」


不安になったまのんが、そっと尋ねる。


「ねぇ、悠斗……

 これからどこ行くの?

 まさか自衛隊研修じゃ……」


「違う違う。

 伊勢神宮も行くし、旅館でアニメ見て、

 ゲームして、コスプレ撮影と花火」


……そこへ。


「悠斗先輩。

 私の行動計画では、観光の時間はあまり取れませんわ」


「えぇ!?」


「この合宿は――

 勉強・運動・礼儀!!

 三本柱を叩き込みますわぁ!!」


危険を察知して、東京へ帰ろうとするまのん。

「……みなさん。

 合宿は終了です。東京へ帰りましょう」


「まのん先輩ぃ~。

 お預かりした財布は、返却できませんよ?」


――そう。(涙)


手荷物検査の際、全員の財布は守乃ちゃん預かり。

白手袋で、厳重管理。


……完全に、警部か検察官だった。


逃亡――ムリゲー!

不可能。


「きょぇぇぇぇぇ!!」


むふぅぅぅ♪

地獄の合宿、開幕やでぇ~♪


――そして、この時。

誰もまだ知らなかった。


この合宿が、まだまだ序の口。

“オタ研史上最大の修羅場”になることを……。

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