第49話 ――規律という名の異世界
うふ♡
お爺ちゃん達に奢ってもらった、
超スペシャル・スーパー・海鮮丼♪
……美味しかった♡
しかも今回は、ただの海鮮丼じゃない。
カネ婆、トミさんを筆頭に、店のお婆ちゃんたちが――
お爺ちゃん客を無視して
悠斗にだけ猛烈アプローチを仕掛け、
結果として自爆。
それを目撃した常連のお爺ちゃん達は、
一斉に嫉妬の嵐を巻き起こし――
最終的に、
私だけが得をする構図が完成した。
おかげでバイトの時給は、
奇跡の二五〇〇円まで回復♪
週末のオタ研合宿の費用も無事確保!
部長として、堂々と参加できるわよ!
――どうも、まのんです。
……なのに。
「……なんで、悠斗は部長の私にまで
合宿の行き先をまだ教えてくれないの?」
それは、まのんがスピーカーだからだ。悠斗より
『ねえ、ぽんちゃん。合宿の行き先、知ってる?』
『いやぁ~、知らへんなぁ。
悠斗君、“異世界の辺り”って言うてたくらいやで』
『異世界の辺りって……どこよ、それ』
オタ研のみんなは、
テスニーやUSOとか予想しているけど――
私は断然、
バウズテンボズだと思うんだよね。
異世界感、あそこ最強だし。
『まぁまぁ。お楽しみでええやん。
……あ。噂すれば、悠斗君や』
「おい、まのん。学校行くぞ。
今日は合宿ルールを守乃ちゃんと決めるから、忙しいぞ」
「合宿ルール?」
首をかしげる私に、悠斗は真顔で続ける。
「守乃ちゃんがな。
“合宿には規律が必要”って言うんだ」
嫌な予感しかしない。
列挙された内容は、以下の通りだった。
① おやつの限度額
――子供か!?
② バナナはおやつと見なすか
――どうでもええやん!!
③ お小遣いの限度額
――大学生やで!?
④ 服装規定
――大学に制服もジャージもないぞ!?
⑤ 旅の栞ではなく、行動計画
――堅ッ!!
⑥ 手荷物検査規約
――税関か!?
⑦ 行動規定と罰則規定
――軍隊かぁ!?
「……それ、決める必要ある?」
一気に行く気が削がれる。
「他のみんなは、なんて?」
昼休みに学食で早速、聞いてみた。
厳蔵は即答だった。
「いんじゃないっすか?
俺、守りませんけど」
(……はい、守乃vs厳蔵、確定)
香純はにこにこ。
「面白そうでいいですねぇ~」
(いや、絶対理解してへん)
彩夏は自由人。
「僕はコスプレが出来れば、何でもいいです」
(ブレなさすぎ)
『あ~……面倒くさいことになりそう……』
頭の痛いまのん
『いやいや。守乃ちゃんの言う通りじゃ。
健全で楽しい合宿には、規律が必要や』
わくわくキタのぽん
『あんた、守乃ちゃん推しだもんねぇ。
ぽんちゃんも合宿、同行するんでしょ?』
『そりゃそうじゃ。
わしはまのんの願叶え神。常に一緒や』
……信用ならん。
放課後。
オタ研の部室。
「全員揃ってるな。
じゃあ、今週末の合宿の行動計画と規則を決めるぞ」
「はい!
叩き案、作ってきました!」
そう言って立ち上がった守乃ちゃんの表情は、
あまりにも清らかで、あまりにも真剣だった。
――この時点で、
私たちは何かを察するべきだったのだ。
「では、申し上げます」
① おやつの限度額
一日五百円、三日で千五百円まで。
(小学生の遠足かぁ!?)
② バナナはおやつと見なします。
(やっぱり、この議題は必要?)
③ お小遣いの限度額
六千円。
(小学生の修学旅行レベル以下!?)
④ 服装規定
移動中は黒のビジネスパンツに、白ワイシャツ。
(検察のガサ入れ!?)
⑤ 行動計画
わたくしと悠斗先輩にお任せください。
(堅いけど……とりあえず、異議なし)
⑥ 手荷物検査
出発前と毎朝、実施します。
(税関やん。でも、どうぞどうぞ)
⑦ 行動規定と罰則
飲酒・喫煙は禁止。
名門大学生としての規律を、わたくしが制定します。
(軍隊か。でも……はいはい異議なし)
「――異議は、ございませんか?」
全員「ありませーん♪」
(ふっふ♪
こんなん、遠足や修学旅行で慣れっこですわ♪)
……と、
この時の私たちは、完全に油断していた。
オタ研メンバーはまだ知らない。
知り合って二か月の守乃ちゃんの本性を、
とんでもなく甘く見ていたことを――
~合宿にて~
『ポテチ……コーラ……』まのん
『フリーダム!』悠斗
『守乃ちゃんの悪魔ぁぁ!(涙)』香純
『独裁者は、いつか身を亡ぼすぞ!』彩夏
『今回は……フォローできねぇ』厳蔵
『さすが守乃ちゃん♡ 僕は常に君の味方だよ♡』キタのぽん
「――私が、守乃よ」
静かに、しかし確実に。
「さあ。
みなの者――私に
跪きなさい。首を垂れなさい」
そこはもう、
オタ研合宿という名の異世界だった。




