第48話 NO1カネ婆、春の乱心
私はカネ。
『昭和レトロ・モンペ食堂』
通称・モンペキャバクラ。
売上NO1。
文句なしのエース。
それが、私よ(自慢)。
学歴? ないわ。
でもね、ここまで自力で生き抜いてきた。
――親に守られて生きてる
十九歳の小娘なんかに。
負けるわけがない。
……いや。
負けるわけには、いかないのよ!!
まのんは局地戦には勝った。
けれど、総大将――織田トミを攻略され、
結果は戦略負け。
戦のあとも不穏な空気が漂う
『昭和レトロ・モンペ食堂』に、
春の日差しと、爽やかな風が差し込んだ。
ガラガラガラガラ。
「こんにちは」
その一言で、
店内の空気が一変した。
「「「きゅん♡」」」
――全員、落ちた。
カネ婆、トミ、ヨネ、よし婆、みつこ、およね
全員が一斉に振り向く。
「いらっしゃいませ~♡
お一人様ですか?」
「はい」
爽やか。
高身長。
清潔感の塊。
新規・イケメン好青年、来店!
その瞬間、
店内は――修羅場と化した。
さっきまでの敵味方は関係なく
バトルロイヤルが始まった。
「隣は当然、NO1の私よ!」
「何言ってんの!年長者優先でしょ!」
「ここは爆乳枠の私!」
「うちの爺さんの若い頃にそっくりなの!私よ!(嘘)」
……地獄絵図。
一方。
取り残されたVIP席の
カネ婆目当ての爺たち。
取り残された
古参常連の爺たち。
「……え?」
「わしたちは……?」
「むごい……(涙)」
さぁ。
全婆が夢中になった青年の正体は――
「あ、いたいた。
まのん、三つ編みとモンペ、似合ってんじゃん(笑)」
全お婆ちゃんがまのんを見る。
「……え?」
次の瞬間。
「悠斗!?
なんで、ここにいるのよ!!」
「三つ編みモンペ姿、見たくてさ。
写真撮っていい?」
――全員、凍った。
「ちょっと、まのんちゃん!?
もしかして……彼氏!?」
古参常連の爺たち。
一斉に。
「ガーーーーーーン!!(悲)」
「ち、違う違う!
幼馴染で同じ大学の悠斗です!
彼氏じゃありません!」
……ちょっと、否定しすぎたかも。
(そこまで否定する!?)
――悠斗の視線が痛い。
安堵するお婆ちゃんたち
「じゃあ、遠慮は不要ね♡」
――戦線、再開。
まずは私。
プライドの塊・NO1カネ婆、先制攻撃。
「悠斗君♡
お水どうぞ♡
愛情たっぷりミネラルウォーターよ♡」
「……」
カネ婆目当て爺、ぼそり。
「わしら……
水道水なのに……(悲)」
次は年功序列。
トミ、追撃。
「悠斗君、お腹空いてない?
かつ丼、奢ったげる♡
マスター!かつ丼一丁!
お代は私の給与から引いといて♡」
(毎度ありぃ~♪)
――喜兵柄、満面の笑み。
古参爺、怒り。
「わしら、年金切り詰めて
ここで大金落としとるのに……
一回も奢られたことないぞ!」
そして――
恋多き爆乳。
ヨネ、隙を突く。
むぎゅ♡
むぎゅ♡
「ちょっ……」
古参爺、絶叫。
「わしらが触れたら
即ビンタでセクハラ訴訟なのに!!」
(……悠斗、モテすぎじゃない?
なんかムカつく)
「ちょっと!
お爺ちゃんたちが可哀そうでしょ!」
――まのん。
(優しい……)
――全爺、即堕ち。
「すみません」
悠斗が、静かに言った。
「僕は、
まのんに会いに来ただけなので。
お気持ちだけで、大丈夫です」
(ここだと、まのんが超可愛く見える!?)
――沈黙。
「……え?」
(私に……?)
――まのん、フリーズ。
「まのん。
親子丼、頼む」
「あいよー!
喜兵柄じい、親子丼だって!」
……そして。
婆たちの矛先は、
再び――爺たちへ。
「さくじい、水おかわり?水道水だけど」
「ふん!」
「まさじい、かつ丼食べる?自腹で♪」
「ふん!」
「正二郎さん、隣空いてる?お触り禁止だけど」
「ふん!」
――最終的に。
爺たち全員、結託。
「まのんちゃん。
わしらの奢りで
超スペシャルスーパー海鮮丼、どうじゃ?」
「うん♡
食べるぅ~♡」
「マスター!
海鮮丼!
割り勘で、わしらに付けといて!」
《本日の勝敗》
カネ婆の戦略勝ち、取消し。
まのんの一人勝ち。
理由:
お婆ちゃんホステス全員、理性を失い、
イケメン好青年に自爆アタック。
結果、顧客(爺)離反。
――お客様は、平等に大切にしましょう。
『おい!まのん!
主役のわしの出番、ないやんけ!』
――キタのぽん。
『知らんがな。
あぁ~……
海鮮丼、うめぇぇぇ♡』
――まのん。




