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第47話 モンペ食堂・小牧長久手の陣

『お~いぃ、まのん!

 オタ研合宿の費用、ちゃんと貯まったんか?

 今週末やろ?』


――キタのぽんのその一言で、

私の心臓はきれいに止まりかけた。


『貯まるわけないじゃん……。

 金欠だよぉ……(悲)』


床に溶ける私を見下ろしながら、

ぽんは呆れたように腕を組む。


『……バイトには行かへんのか?』


『めんどいなぁ……。

 いっそ合宿、バックレよっかなぁ……』


『部長がバックレたら、あかんやろ!』


『だよね……。

 嫌だけど、バイトに行くしかないかぁ……』


深いため息をつき、

私は低い声で囁いた。


『でもさぁ。

 カネ婆の軍門に下るのは、ウザいよぉ』


『今は……我慢じゃ……』


『軍議で決めたやろ。

 今は従う“フリ”や。

 時が来たら、寝首をかくんじゃ』


そんな時だった。

トミさんから、LINE通知。


『……あれ。

 トミさんから連絡だ』


『モンペ食堂の?』


『うん……』


画面を見た瞬間、

私は思わず声を張り上げていた。


『マジ!!

 豊臣カネ婆の横暴に耐えられないから、

 織田トミさんが一戦交えるって!』


『それで、私に味方してほしいって、

 言って来た!!』


『……ほぉ』


『しかもね。

 紀州で雑賀衆ヨネさん、

 越中で佐々よし婆も同時に挙兵するって!』


ぽんの目が、

一瞬だけ――本気の光を帯びた。


『それ、チャンスちゃうか?』


『だよね……』


『カネ婆軍を分散できる。

 やる価値はあるで』


私は、にやりと笑った。


『決まりね。

 ――今日、行くわよ』


蒲田駅――

そこが、軍議の場となった。


蒲田駅ビルのカフェ。

そこは一見、

ただの落ち着いた喫茶店――


だが、この日だけは違った。


「聞いてよぉ、まのんちゃん!!」


織田トミさんの怒りは、

カフェラテを揺らすほどだった。


「NO1だからって、

 勝手に店のルール作るし!

 先輩の私たちを顎で使うし!

 喜兵柄の爺は言いなりだし!!」


……ああ。

これはもう、戦国末期。


「でも、あそこ辞めたら次がなくて……

 徳川まのんちゃんだけが頼りなの!!」


深々と頭を下げるトミさん。


私は、静かに訊いた。


「今日、まさじいと正二郎さんは来る?」


「年金支給日だから……たぶん来るわ」


――勝てる。


「じゃあ、こちらの懐で戦いましょう」


戦場となる 昭和レトロ・モンペ食堂


――別名:モンペキャバクラ


VIP席を制圧する、豊臣カネ婆軍。

対する、織田トミ・徳川まのん連合軍は、

織田トミを総大将に、隅の小牧テーブルで籠城。


守るのは――

最古参のまさじい。


「西郷どんの愛加那さんって、

 ほんと気丈だよねぇ」


「そいでな、

 心の強か女じゃち思いもす」


――カネ婆軍、会話に侵入不可。


膠着。


その頃――


紀州席では、

雑賀衆ヨネさんが酔客・権蔵を介抱。


越中席では、

佐々よし婆が新規顧客・米蔵に挑む。


戦線、拡大。


その時、カネ婆軍が奇襲に出た!


「まのん殿!

 中入りよ!正二郎爺が狙われてる!」


「……なんですと!」


最古参の正二郎爺を落とされれば、

我が軍は総崩れ。


「お富さん。

 奇襲軍の背後に突撃します。

 留守を――頼みます」


「……ご武運を」


あら?簡単に

――突撃成功。


中入りの首謀者 池田みつこ、森およね。

討ち取り。


小牧テーブル城へ、無事帰還。


「勝ったわよ!

 エイエイオー!」


「エイエイオー!」


――その直後。


「まのんちゃん!大変!!」


ナツ婆の一声で、

空気が凍る。


「織田トミさん贔屓の五郎さんが攻略されて……

 総大将トミさんが勝手にカネ婆と和議を結んだの」


……え?


「それじゃ……

 私が戦う大義名分が……」


「……ふぅ」


私は、エプロンを外した。


「合宿費は、確保。

 今日は……これで、よしとしましょう」


――徳川まのん軍、退却。


《本日の勝敗》


豊臣カネ婆:戦略勝ち


徳川まのん軍は局地戦では勝利したものの、

総大将・織田トミの独断離反により、

徳川まのんは戦を継続できず。


戦乱の続く――

『昭和レトロ・モンペ食堂』。


安寧の時代は訪れるのか。

徳川まのんは、

抵抗を続けるのか。

それとも、臣従するのか。


――戦いは、まだ終わらない。


ただのバイトなのに、めんどくせぇぇぇ。

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