第40話 完璧なアリバイ工作と、可愛い後輩の宣戦布告
夜の公園。
薄暗い街灯の下、ベンチに並んで座る――
悠斗君と、彩夏ちゃん。
それを目撃した瞬間、
わしの背筋に走ったのは、
悪寒と確信だった。
――やばい。
「淑女化計画のウォーキング」は即・強制終了。
わしは何食わぬ顔で踵を返し、
二人のタワマンへとまのんを撤退させたんや。
『あぁ~疲れたぁ……
ウォーキングなんて健康に悪いよ……』
ソファに倒れ込み、私は愚痴る。
『なんでぽんちゃんは、
私の体を強制コントロールできるの!?』
『おだまり!
絶対に痩せさせて、キャラもお嬢様にして、
まのんを三澄投太と結婚させるんや!』
『でもさ三澄君は、
今のままの私がいいって言ってたよ?』
『……え?』
『なーんでもなーい♪』
『……まぁよい。
この難易度MAXのミッションを成功させれば、
わしの願叶え神ランキングは
一気に百以上アップじゃ♪』
そのとき――
空気が、わずかに揺れた。
(この気配……)
『悠斗君、帰宅やな。
……何もなければええが』
「悠斗。お帰り~」
「おう、まのん。
ほら、シュークリーム買ってきたぞ」
「ありがとう。」
「……で、
彩夏ちゃんとのデートは楽しかった?」
(げぇっ!?
気づいとったんかいな!?)
「あ~、楽しかったぜ。
彩夏ちゃん、意外と面白いんだよな。
……デートじゃないけど」
(断り切れなかった……)
「ふ~ん。
薄暗くて雰囲気のいい公園のベンチに、
二人で座って語り合ってたのに?」
にこっ、と。
まのんは、笑った。
「デートじゃないんだぁ~♪
……別に、私には関係ないけどね」
(私には三澄君がいるし……
……でも、なんか悔しい)
(だめ、だめ、悠斗はただの幼馴染なんだから、
今更、私……なにを迷ってるの。)
(ひぇぇ……
これ、完全に嫉妬モードやん……!)
危険を察知したキタのぽん
(わしは避難する!守乃ちゃんの元へ!)
「何言ってんだよ、まのん。
厳蔵を空気にすんなよ」
「……え?」
――悠斗の、とっさの嘘が炸裂した。
へぇ~くしょん!
「あれ?
誰か俺の噂してる?」
とばっちりの 厳蔵 in秋葉原
「暗くて見えなかったかもしれないけどさ。
彩夏ちゃんの横に、厳蔵も座ってただろ?」
(嘘だけど、まのんなら騙せる……!)
「嘘言わないでよ。
誰もいなかったよ!?」
「そ、それは……
黒い服着てたから見えにくかったんだ!
メガネが、こう……光ってただろ?」
「……言われてみれば、
光ってたような、いなかったような……?」
寒気がする……。
今日は温かくして寝よう。
とばっちが続く 厳蔵
「そうだよ。
何勘違いしてんだ、まのん」
悠斗は話題を切り替えるように、
箱を差し出した。
「それより、シュークリーム食おうぜ!」
――疑惑 < シュークリーム。
「食べるぅ~♡
……でも、ホント?」
(よし……逃げ切った……!)
こうして、
シュークリームで嫉妬は回避された。
そう。
厳蔵は――不在。
実際は、
彩夏ちゃんが「近くの友達の家に泊まる」
という名目で、悠斗を食事に誘い、
悠斗は塾バイトを口実にアリバイを
作っていたのだ。
悠斗は隠し、
まのんは嫉妬。
『ぽんちゃん。
ウォーキングしたし、食べていいよね?』
『…………』
『あれ? いない?
……ま、いっか♪』
「悠斗!
これ、ポンサンクロールのシュークリームじゃん!
ありがとう!!」
「最近、辛いもんばっかでさ。
尻が痛ぇんだよ……
甘いもんで中和しないとな」
「……そうだね」
(しばらく、刺激物ペーパーのイタズラは封印しよ♪)
――あれ?
淑女化計画中なのに、
シュークリーム、食べれてる?
……もしかして。
ぽんちゃんが不在のとき、
計画は中断される!?
『まのん淑女化計画』――
攻略法、発見!!
ふっふっふ……
ぽんちゃん、見破ったぞ!!!
これでポテチも、コーラも――自由だ!
『ぽんちゃん。
愛しの守乃ちゃんの所へ、
どんどん行きなはれ♪
その間は、私が食って飲む!
正義は我にあり!』
その夜。
【悠斗 と 厳蔵・LINE】
『厳ちゃん!
今晩、俺と彩夏ちゃんと一緒に遊んでたことにしてくれ!
頼む!!』
『悠斗先輩、
全然OKっすよ!』
翌日。
授業後――オタ研部室。
フルメンバー
彩夏ちゃんは、
まのんと香純ちゃんを一瞥すると、
ふっと微笑んで、こう言い放った。
「悠斗先輩。昨日はごちそうさまでした♪
また――二人きりで食事に行きましょうね♡」
(どうよ?まのん先輩、香純ちゃん)
パキッ。
香純の握るシャーペンの芯が、笑顔のまま折れた。
まのんの瞳から、すうっと光が消えていく。
――チンチンチンーン。
悠斗君、地獄の開幕。
まのんの嫉妬。
香純ちゃんの嫉妬。
(二重修羅場、確定やな……)
わくわくキタのぽん
だが――
二か月後、六月。
二人のオタ研新入部員の登場で、
この四角関係が、
大きく揺らぐことを、
まだ誰も知らない。




