第4話 救世主はイケメン、部長はダメ女子!?
「くしゅん、くしゅん」
騒然とした学食の片隅
オタク文化研究サークルの部長であるまのんは、
小さく身を震わせていた。
部員――いや、入部希望の無法者たちから
流れ弾が放たれたのだ。
「まのん先輩からモブ男を厳しく指導してください!」
放ったのは法律厳守!守乃だ。
『ざまぁみろ(笑)』
背後で聞こえる、ウザったい、軽い声。
『ちょっと、ぽんこつ神様!
今、なんか言った!?』
『いや~、何も言ってへんでぇ~(笑)』
まのんの悲鳴は虚しく響く。
守乃が、さらに論破の畳み掛けを繰り出す。
「部長なんだから、規約通り
この無法者たちを成敗してください!」
名前だけ強面モブ 源蔵が反撃に出る。
「いや、この堅物女なんか論破しちゃってください!」
するとイケメン風 彩夏、ふわふわ 香純も被せて来た!
「ぼくの親猫ちゃんが武勇伝を見せてくれるのかい?」
「やっちゃってくださぁ〜い♡」
まのんが心で嘆く!
(ゴラァ!彩夏も香純も乗っかってくるなぁ!)
追い詰められたまのんは、ついに心の防壁を崩壊させる。
「私……コミュ障だから……無理……」
コミュ障と言うより、人馴れしていない。
その本音が、最悪のトリガーとなった。
全員の攻撃が、まのんという一点に収束する。
「えぇー! 部長なのに!? 不信任案を提出します!」――守乃。
「部長がコミュ障って、うけるぅ〜♪」――香純。
「ぼくが克服させてあげるよ☆彡」――彩夏。
「部長って役に立たないんっすね」――源蔵。
「な、なぜ私が(まのん)が……」
まのんは、ただ――
この地獄から解放されたいと願った。
そのとき。
──ご来光のごとき、光が差した。
「ごめん、ごめん! 教授が離してくれなくてさぁ〜」
救世主、武藤 悠斗、登場!!
遅い! 遅すぎる!
もう、まのんの戦闘ポイントはとっくにゼロだ!
「悠斗! おせぇよ!」
まのんの雄叫びがこだまする。
守乃「……ず、きゅん」
香純「……きゅんきゅん♡」
彩夏「……ド・きゅん♡」
源蔵「やっと、まともな人が来た!」
(──おい、私が部長だぞ。ちゃんと覚えておけ!!)
まのんが心で思った。
悠斗は、そんな空気を一瞬で塗り替える満点の笑顔で挨拶した。
「君たちが入部希望の新入生だよね。来てくれてありがとう!
おれは副部長の武藤悠斗、よろしく」
爽やか。コミュ力オバケ。
さっきまでまのんを袋叩きにしていた無法者たちの態度は、
まるで魔法のように豹変した。
『まのんと大違いだ!』
(……というぽんこつ神様の声が聞こえたのは気のせい?!)
守乃「入部希望届をすぐ書きます♡」
香純「きゅん きゅん」
彩夏「きゅん LOVE」
源蔵「よろしくっす」
(こいつら、私を舐めてるな!?
今すぐ全員、体育館裏に来い!!)
「まのん。これで大学公認サークルになって部室が貰えるな!」
悠斗は楽しそうだ。
「悠斗、ちょっと来い! こいつらマジで普通じゃないよ!」
「まのんが四人増えるだけじゃん。俺はいいけど」
(……わたしはこの人たちと同レベルらしい……)
その後、悠斗が仕切りを取り、なんとかサークルの説明が進む。
そして話題は、コスプレに。
すると守乃が、ためらいなくスマホの画面を差し出してきた。
「これ、私です」
そこに映っていたのは……。
「――このコスプレ写真見せて大丈夫!?」
(18禁じゃねーか!!)
学食に悲鳴と絶叫が響き渡り、
またもや周囲の冷たい視線が降り注ぐ
「きゃあ、下チチ出てるわ!大丈夫!?」
「これ、お尻も・・・いいの?」
「露出度限界突破してるやん!(ええやん!)」
(おい!源蔵!心の声が顔に出てるぞ!!)
『おぉ~えぇ~やないのぉ~
その衣装は神聖指定だ!』
『エロ神様はすっこんどけ!!』
守乃は、胸を張り、哲学的な表情で言い放つ。
「ふっ…あなたたち、まだ俗世の垢がついてるわね。
これは二次元を三次元に降臨させる、神聖なコスなのよ!
これこそがキャラの魅力をMAXに引き出す芸術よ!」
セクシーコスプレ写真に興奮する中、
悠斗は涼しい顔で、正論という名の氷水をかける。
「まあまあ、オタクと言っても、
みんなが好きな分野はバラバラなんだから、
サークルはお互いの分野を理解、共有することも目的なんだよ」
(悠斗――興奮もせずに
よくまあ冷静にそんな正論が言えるなぁ!すげぇ!)
(もしかして、わたしで免疫が出来てるとか?うふぅ♪)
悠斗に乗っかるまのん
「そうそう!私もそれを言いたかったのよ♪」
「まのん先輩!目が泳いでますけど?」
――守乃が容赦なくツッコむ。
「ぎく!」
(そこはツッコむな!!)ピクピク
(なぜ、バレる?)
「いやいや、僕が言うことはまのんが言うことだからね」
悠斗は、まのんをフォローしつつ、一つの提案を出した。
「じゃあさぁ、今度コスプレイベントに皆で行ってみないか?」
(悠斗!なんちゅう提案をしとんねん!!
こいつらと行ったら地獄やぞ!!)
「ぜひ♡」守乃
「行きますわ♡」香純
「じゃ、僕もコスプレをしてみようかな」彩夏
「仕方がないっすね。
こいつの芸術をみてやりますか(期待しかない♡)」源蔵
(おい!源蔵!頼むから、もう噛み付くな!!)
「厳蔵とやらは来て欲しくありませんわ!
この芸術をエロとして見るに決まってますわ!」
「こんな堅物のエロなんか興味ないっす!」
(見たいに決まってるやん)
(こいつ……わたしと同じでエロを期待してやがる!)
「それは名誉棄損よ!」
「そっちこそ、人をボロクソ言ってんじゃん!!」
口論、再開。
もうまのんの手に負えるレベルじゃない。
「放置プレイしようかね。。。」
「まのん......部長だろ!」
「私はただのギャラリーでごぜぇ~やす。」
よし!私は空気になろう!!
悠斗は、空気を鎮めるため、最終手段に出た。
「コスプレイベントはきちんと規則があるから、
それをちゃんと守ればいいだろ。
源蔵君だっけ、守れるよね」
「余裕っす。」
「守乃君。だったら、いいだろ」
「はい♡」
規則 < イケメン
――らしい。。。
「決まりだね。守乃君。次のイベントの場所と時間は?」
「日曜日にサンシャインシティで1時からです」
「じゃあ、日曜日にJR池袋駅の『いけふくろう像』前に12:30集合な」
日曜日だと?
まのんの脳内で警報が鳴り響く。
愛しても愛しきれない『きゅんきゅん乙女』の推しキャラ
七兵衛さまのフィギュアを――
明日の土曜日に買うのだ。
(日曜日に遊ぶ金はねーぞ!)
一方で悠斗もやばい!
(やべえ!金欠だ!『きゅんきゅん乙女』
イブちゃんのフィギュアを買い過ぎた……)
……悠斗もかい!!
『おい!まのん!!わしの出番はまだか!!
ええ加減にせいや!!』
『うるせー!このぽんこつ!』




