第38話 ――桶狭間の戦い(※ただし大敗)
油断しきった今川カネ軍に、
織田まのん軍は――奇襲を仕掛けた。
裏口から音も立てずに侵入。
フロアに姿を現したその瞬間。
三つ編み。
モンペ着用。
――スーパーモンペまのん、参上!
「トウッ!!」
『ぽんちゃん。登場曲はいらんからね』
『げぇ……読まれた……』
――キタのぽん 無念。
『奇襲がバレるだろ!』
冷静なツッコミとともに、
織田まのんは颯爽と――フロア中央へ。
そして。
迷いなく、
カネ婆が陣取るテーブルに腰を下ろした。
これぞ奇襲。
(心でつながった常連のお爺ちゃんたちは、
みんな私になびくはず――!)
「今川カネ!
お主の命運も、ここまでよ!」
「私こそが――リアルNo1よ♪」
勝利宣言。
不意を突かれた今川カネ軍の運命は――!
『……まのん。負けじゃ』
――キタのぽんの、冷たい宣告。
「このお嬢さんは誰だい?」
「新入りさんかい?」
「初々しいのう」
……誰?
全員、知らないお爺ちゃん。
「あぁ〜この子?
No2のまのんちゃんよ」
今川カネが、にやりと笑った。
「めったに来ないから、
みんな初めてよねぇ〜」
「年金も、介護も、病院も、終活も分からないけど、
よろしくねぇ〜♡」
――罠。
完全に、読まれていた。
『謀られたぁぁぁ!!』
――キタのぽん、絶叫。
『なにこれ!?
全員、初見のお爺ちゃんなんだけど!?』
『やばいぞ、まのん!
ここ、完全アウェイや!』
そのとき――
「まのんちゃん!」
NO2・トミさん(八十一歳)が、
救出部隊として現れた。
「そこは不利よ!
そのテーブルのお爺ちゃんたち、
全員カネさん目当ての新規顧客なの!」
「ふふ……」
今川カネ、勝ち誇る。
「私が無策だとでも、思ったのかしら?
織田まのん♪」
「謀ったな!今川カネ!!卑怯な!!」
――※お前もな。
謀ったつもりが、
完全に謀られていた。
「引けぇぇぇ!!
引け!引け!撤退じゃぁぁぁ!!」
『だから誰に言ってんだ!?』
「はっはっは!
若輩者め!」
「引け引け!こわっぱ!」
(……でも、若い子が来てくれるのは嬉しいのよ
織田まのん。その若さ、利用させてもらうわよ)
そして――
「あら、もうこんな時間♡
爺さんの晩ご飯作らなきゃ」
おっと!今川カネ軍、撤退!
『また上がりのオチかぁぁぁい』
オチがあってよかった。大阪はキタのぽん
「病院の時間だわ」
「孫が来るのよ」
「特売が始まるわ」
――次々撤退。
結果。
お婆ちゃんが帰り、
お爺ちゃんも帰り、
フロアは、がらんどう。
「まのんちゃん」
喜兵柄じいが、申し訳なさそうに言った。
「せっかく来てくれたけどさぁ。
客、全員帰っちまった」
「今日は一時間だけど、
賄いは出すよ♪」
「……ねぇ、喜兵柄じい」
(悔しがってる場合じゃない。
ここのままじゃ――No2のまんまだ)
「最近、まさじいとか正二郎さん、
来てる?」
「あぁ……来る回数、減ったなぁ」
「奥さんに、
ここでの浪費がバレたらしい」
『やばくね!?
このままだとカネ婆の独壇場やぞ!』
『分かってるよ……ぽんちゃん』
『仕方ねぇ。出勤日、増やすか……
面倒くせぇ……でも、金は入る♡』
『せやけど、このままだと、
トミさんたちが寝返るのは時間の問題やで』
『分かってるわ。
一旦、引き揚げ。帰ったら軍議よ』
「――戦法、変える」
【軍議の議題】
① 出勤日をどうするか
(本音:金は欲しいが面倒くさい)
② オタ研合宿代
(本音:最悪、ばっくれる)
③ フィギュア購入資金
(本音:最優先)
④ カネ婆打倒作戦
(本音:時給上がれば、カネ婆はどうでもいい)
⑤ 次の賄い
(本音:唐揚げ定食・特盛)
本日の収入:
北里さん2枚。
ふつーの賄いを食べ、
静かに帰宅した――まのんであった。
チンチンチーン!
桶狭間の戦い・結果
織田まのん軍――大敗。
『ゴラァ!
史実と全然ちゃうやんけ!』
――織田まのん、絶叫。




