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第34話 鬼退治、そして伝説の『うさのん』へ

鬼退治に向かった“もものん一行“は、

ついにオタ研の部室前へと辿り着いた。


「さぁ……鬼退治だぁー!」


『ワクワクするけど、たぶん守乃ちゃんの天敵……

 やろな』


もものん――もとい私が、

震える手でドアをほんの少しだけ開ける。


きぃ……


薄暗い室内。

モニターの青白い光に照らされ、

鬼なのか幽霊なのか分からない黒い影が、

バタバタと暴れていた。


「うぅおぉぉぉ!」

「よっしゃぁぁぁ!!」


雄叫びというか、完全に奇声である。


「ぎゃーーー!! 鬼ぃ!!」


釣られて全員、即絶叫。


「も、もものんさん……ちょっと見てきてくださいよぉ」

香純ちゃん(サル)が、私の背中を押す。


恐る恐る、さらに一歩踏み込む。


――その瞬間。


私は、気づいてしまった。


「……待って。この匂い」


鼻孔をくすぐる、懐かしすぎる香り。


「間違いない。

 コンソメポテチと、ガルピズよ!!」


「えぇ!? 鬼が宴会でもしてるんですかぁ?」

香純ちゃんが首を傾げる。


「それに……」

彩夏ちゃん(キジ)が、モニターを指さした。


「映ってるゲーム、

 私が香純ちゃんに貸した

 『爆走!ママチャリGP』じゃない?」


「鬼か幽霊か分かりませんが……」


守乃ちゃん(犬)が低く構える。

「油断している今が好機です。踏み込んで確保を」


「よし」


私は頷いた。


「会議してても、事件は解決しない。

 ――現場で起きてるのよ」


そして、号令。


「みなのもの!

 ぬかるなよ! 参る! かかれぇぇぇ!!」


最初に飛びかかったのは――


守乃ちゃん(犬)。

がぶり、と黒い影の尻に噛みつく。


「痛ぇぇぇ!! 何すんだよ!!」


続いて、香純ちゃん(サル)。

背中をバリバリ引っかく。


「痛すぎるぅぅ!!」


さらに、彩夏ちゃん(キジ)。

爪で目元を突く。


「ぎゃぁぁ! 助けて!!」


そして最後に――


私が、そこに立てかけてあったモップを振り回した。


数秒後。


黒い影は床に崩れ落ち、

土下座の姿勢で叫んだ。


「ま、参りました!!

 命ばかりはお助けを!!

 二度と授業をサボってゲームはしません!!」


「……」


私は腕を組み、静かに言う。


「約束するなら、今回のみ許すわ」


『もものんが鬼を諭した!』


「はい……」

鬼(仮)は涙目で頷いた。


「守乃ちゃん。電気を」


ぱちっ。


照明がつき、部室が明るくなる。


そして――


「……厳蔵!!」


「まのん先輩!?

 守乃に香純ちゃんに彩夏ちゃん!?」


正体は、オタ研部員・厳蔵だった。


「……なんで私だけ呼び捨てなのよ!!」

守乃ちゃんが即キレる。


「憲法の下、国民はみな平等!!

 それに、呼び捨てだと彼女みたいじゃない!!

 キッモぉ!!」


「お前が彼女!?

 それこそ逆にキモいわ!!」


(……上杉君にからかわれた時、助けようとしてくれたし。

 今回は許してあげる)


守乃ちゃんは、そっと目を逸らした。


『はいはい。

 それより、何しとった?』


「厳ちゃん。ここで何してたの?」

私が問い詰める。


「香純ちゃんが、

 このゲームを明日彩夏ちゃんに返すって言ってたから……

 授業サボって、朝からやってました」


「だから電気消して、

 お菓子とジュース持ち込んでたのか」


悠斗が腕を組む。

(ケツ痛ぇ……でも幽霊じゃなくてよかった)


――あ、こいつ。

厳蔵だって分かったから出てきたな。


(悠斗先輩、やっぱり素敵♡ またご飯行きましょう)

にこやか香純


(次は私が誘う!)

香純ちゃんを睨む彩夏


「厳ちゃん。

 奇声のせいで、他サークルからクレーム来てたよ」


「罰として」

悠斗がきっぱり言う。


「お菓子とジュースは没収。

 一週間、部室でゲーム禁止だ」


(決まった!)悠斗がキラリ


(♡きゅん♡)香純&彩夏


「さっきまでビビッてたビビリン悠斗が言うねぇ~」


(まのん……ばらすな!)


――そこへ。


「異議ありです」


法の番人、守乃ちゃん。


「法に基づかない自由の制限は問題です。

 先輩としての命令なら、パワハラに該当します」


「……」


「あれ? 守乃が俺を……?」

厳蔵が目を瞬かせる。


「悠斗の負けね」

私は即断した。


「お菓子とジュースは没収。

 部長の私が預かります♡」


「残ってるの、

 激辛ハバネロチップズですけど……」

厳蔵が言う。


まのんの表情がみるみる青ざめていく


『天罰きたで(嬉)』

喜ぶ キタのぽん


「やめろ!!」

悠斗が叫んだ。


「まのんは今、

 唐辛子パウダーで自爆して――」


――全部、説明した。


「……ずいぶんご丁寧に、ご説明ありがとう(怒)」

私はにっこり笑った。


「帰ったら、しっかり“お礼”しますわね?」

指をボキボキ鳴らす“もものん”


(……俺、何かした?)

なんで? 悠斗


「そういえば」

厳蔵が首を傾げる。


「その腰のきびだんごに、

 犬・サル・キジって……

 またコントですか?」


「それより!」

厳蔵がひらめいた顔をする。


「痛いところに塩塗って風当てると治るって――

 因幡の……なんだっけ?」


「塩ね! 行ってくる!!」


私は超特急で飛び出した。


『相当、痛かったんやな(笑)』

にやける キタのぽん


「待て!! それ因幡のウサギだ!!

 逆効果だぞ!!」


――悠斗君。遅かった。


十分後。


トイレから、魂の叫び。


「超絶ファイヤぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


――こうして。


鬼退治は終わり、

“もものん”は“うさのん”へと進化したのであった。


めでたし。めでたし。


……めでたくねぇよぉ!!

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