第32話 自爆のヒリヒリ登校!救世主の団子は悠斗にはあげない♪
――あぁ~……お尻が、痛いぃ……。
完全に失念していた。
悠斗に仕掛けた唐辛子パウダーペーパーの存在を。
そして――
そのまま、私自身もそれで拭いてしまったのである。
……痛い。
自爆である。
結果どうなったかというと。
私と悠斗は現在、
通学路を内股で、妙に慎重な歩き方で進んでいた。
一歩一歩、顔がゆがみ
周囲の笑いを誘う
周囲の視線が……
いや、視線よりも尻が痛い。
『ざまぁみぃ~、デビルまのん♪
これに懲りたら、イタズラはほどほどにするんじゃな♡』
にやけるキタのぽん
『……あぁ。ぽんちゃんが、氷嚢に見える……』
『今すぐ、あそこを冷やしたい……』
『何ぃ!?
わしが氷嚢に見えるじゃと!?
やめろ!対にやめろ!!』
『安心して。ぽんちゃん、
――3D映像だから触れないし』
『……そっか♡
助かった♡』
『助かってねぇよ。』
そんな地獄の朝――
駅へ向かう途中で、懐かしい声がした。
「あれ? まのんちゃん、悠ちゃん♪ 久しぶり♡」
振り向くと、そこにいたのは――
友唯ちゃん(9歳)。
私とアニメ『きゅんきゅん乙女』で仲良くなった、小さな友達だ。
「友唯ちゃん!久しぶり! 学校?」
「うん♪ まのんちゃんも学校?」
「そうだよ~」
すると、友唯ちゃんは首をかしげた。
「ねえ……二人とも、歩き方変だよ?
どうかしたの?」
(言えるかぁぁ!!)
(言えるわけないでしょ!!)
「……あぁ、これ?」
私は即座に、淑女スマイルを作る。
「今ね、ダイエット中なの。
こうして歩くと、脂肪が燃焼されるのよ♪
おすすめ♡」
(大人が尻ヒリヒリ、なんて言えるかぁ!)
『やっぱり……この二人、お似合いやん♡』
うなずくキタのぽん
「へぇ~♪ そうなんだ!」
友唯ちゃんはにっこり笑って言った。
「やっぱり、二人はお似合いのカップルだね♪
じゃあ、先行くね! また遊ぼうね♡」
……。
『さすがの痛みで二人とも
“お似合いのカップル”スルーやな』
「……まのん」
悠斗が低い声で言う。
「さすがに、唐辛子ペーパーはやりすぎだろ(怒)」
「……うん。
身をもって、理解しました(涙)」
(……同じ痛みを共有してるって、
なんか悔しいけど、悪くない)
『やっぱり……』
『こいつも、ぽんこつや』
――キタのぽん
授業中。
眠くならなかった。
尻がヒリヒリすぎて。
内容は一切、頭に入らなかった。
悪しからず。
昼休み。
「悠斗、学食行く前にトイレ行ってくるね」
「あいよ。ここで待ってる」
『そろそろ、悲鳴が聞こえる頃やな♡』
「――きょぇぇぇぇぇぇ!!」
トイレのたびに、地獄。
『同情なし!完全なる自業自得じゃ!!
反省しなさい、デビルまのん!』
『……覚えてなさい、ぽん』
「はぁ……昼は中和のために、
甘めの親子丼大盛にしよ……」
(そうは、いかんぜよ♪)
デビル神 キタのぽんはふっと――
まのんに息を吹きかけた。
「すみませ~ん♡石焼ビビンバで、
コチュジャンとキムチ、増し増しでお願いしますわ♪」
『ゴラァ、ぽん!私で遊ぶな!!
今それ食べたら、トドメやろがぁ!!』
『え~?唐辛子のカプサイシンは
脂肪燃焼にいいんやでぇ~♡』
くそぉ!
淑女化計画で私をコントロール出来るからって
遊びやがって(怒)。
食堂のおばちゃんが満面の笑みでトドメを刺す。
「まのんちゃん♡今日は特別に、
コチュジャンとキムチを特盛サービスね♪」
(やめてぇぇ!!おばちゃん!!
今それは……命取り!!)
だが私は知っている。
学食のおじちゃんおばちゃん界隈で、
私は――
「大盛を喜んで完食する、感じのいい子」
として認知されている。
結果。
「……ありがとう……おばちゃん(涙)」
(終わった……)
笑いを我慢する悠斗
「まのんは辛い物が大好きだから
よかったな!(にやり)」
そんな悠斗もヒリヒリ中♪
「まぁまぁ♡彼氏さんまで
そんなに感動してくれるなんて♪
じゃあ、ピリ辛きゅうりも付けちゃうね♡」
「ありがとう……優しいね(鬼)」
(トイレ……我慢するしかない)
――尼砥家 家訓。
『出されたものは、必ず完食すべし』
こうして私は、
自業自得の地獄を味わうのであった。
「あっ、まのんちゃん!
ちょっと待って! これもあげる♡」
……何かを渡された!
その瞬間――
私の目には、それが救世主に見えた。
「おぉ!これは......甘い団子!」
(今の私にとって、マジ神!
悠斗には絶対、あげない♪)




