第28話 関ヶ原(学食)の戦い 〜総大将、正座にて討ち死に〜
やばい。
これは、普通にやばい。
まのんの《かつ丼大盛》。
守乃ちゃんの《六法全書》。
――その二つが、
香純ちゃんに人質として押さえられた瞬間。
すべてが、決定的に狂った。
「……許さない」
静かに、低く。
しかし確実に“沸点”を越えた声で、まのんが言った。
「絶対に、許さないわ」
隣では、守乃ちゃんが拳を震わせている。
目が、完全に戦をしていた。
こうして――
上杉討伐は、あっさり中止。
二人は踵を返し、
オタ研内戦へと舞い戻ってきたのだった。
『こりゃ完全に――
天下分け目の大戦になるでぇ!』
――キタのぽん わくわくする。
『さぁ皆さん!
戦況を分かりやすく解説していくでぇ!』
東軍総大将――
徳川 まのんは桃配山に布陣!
対する西軍大将――
石田 香純は笹尾山!
『豊臣 悠斗君は……
中立を守って、大坂城から一切動かへん!
相変わらずの事なかれ主義や!』
……うるさい。
戦力差は、歴然だった。
東軍の主力は井伊 守乃。
軍資金(所持金)およそ五千。
――金欠のまのんと、
――六法全書に全力投資した守乃ちゃん。
対して西軍。
主力は宇喜多 厳蔵。
さらに――
『おっとぉ!?
いつの間にか小早川 彩夏ちゃんが西軍についとるでぇ!?』
軍資金(バイト代)およそ十万。
バイト代が入った彩夏ちゃんの、
圧倒的資金力である。
そして、圧倒的な兵糧(学食チケット)の差が大きい。
『軍資金って……このコントに関係あるか?
西軍、だいぶ有利やけど……』
『守乃ちゃんの東軍、頑張れぇ~♡
まのんの東軍、負けろぉ~!』
――キタのぽん 愉悦
関ヶ原――
もとい、学食は。
夜明け前から雨に包まれ、
深い霧が立ちこめていた。
だが間もなく。
この穏やかな場所は――
人類史に残らない、
どうでもいい理由による修羅場へと変貌する。
「よいか、皆の者!」
東軍総大将・徳川まのんが、拳を掲げる。
「すまぬが、オタ研の健全と秩序のため――
私に命をくれ!
死して健全を貫け!!」
「おおおおおおっ!!」
霧を震わせる、
井伊 守乃隊の雄叫び。
完全に士気は最高潮だった。
同時刻。
西軍でも、大将が声を上げる。
「みんなぁ~♪
がんばるわよぉ~♡」
「あぁ~……面倒くせぇ。
さっさと決着つけようぜ」
――だるそうな 宇喜多 厳蔵
「よいか。
我が隊は命令があるまで、絶対に動くな」
――高みの見物 小早川 彩夏
……怖い。
やがて、東の空が白み始めたその時。
乾いた、しかし重々しい音が響いた。
「ドーン!!」
――開戦。
本来、東軍の一番槍は福島隊。
しかし。
井伊 守乃隊が、それを無視して突撃した。
狙うは、西軍主力――
宇喜多 厳蔵隊!
「あんたねぇ!!
道徳もない!
法律の知識もない!
規律も守れない!」
「そんなんじゃ、
立派な社会人になれないわよ!!」
「違う!」
真正面から、厳蔵が叫ぶ。
「確かに法令遵守も道徳も大切だ!
でもな、人として!」
「人の気持ちを考えて、
寄り添って、
守りたいもののために――
信念を貫く勇気が必要なんだ!!」
――決まった! 宇喜多 厳蔵
(きゅん♡)
一瞬。
井伊 守乃隊の動きが、止まった。
「今の時代に合わない法律を正すため!
その法律に泣かされてる人を救うため!
お前は今、大学で法律を学んでるんじゃないのか!!」
「目を覚ませ!
井伊 守乃!!」
井伊 守乃 頭から噴火(きゅん♡きゅん♡)
返り血か!?
井伊 守乃の顔が真っ赤だ!
このまま厳蔵隊が押し返すか――
と思われた、その時。
「……黙れ」
「黙れぇぇぇ!
黙れ、黙れ、黙れぇぇぇ!
聞く耳、持たず!!感情論では何も変わらぬわ!」
戦線は、完全な膠着状態に入った。
その頃。
一向に動かない、
小早川 彩夏隊。
痺れを切らした徳川 まのんが叫ぶ。
「――前に出すわよ!!」
それを見た小早川 彩夏の目が、細くなる。
「……さすが、徳川 まのん殿。
戦上手じゃ」
そして。
「みなの者!時は来た!!
我が隊が目指すは――」
「掛かれぇぇぇ!!」
「おおおおお!!」
松尾山から、
大軍が一気に駆け下りる。
『きたぁぁぁ!!
小早川 彩夏隊、参戦やぁ!!』
『で……どっちの味方や!?』
緊張が走る――
次の瞬間。
「ゴラァ!香純ちゃん!
それ、私が貸したゲームじゃん!
返す期限、とっくに過ぎてるよ!!」
「ゴラァ!まのん先輩!
一緒にダイエットするって言ったのに、
めちゃくちゃ太ってるじゃないですか!!」
――両軍、大将直撃。
小早川 彩夏隊は、
東西両軍に突撃!!
総大将、同時に討ち取り!!
チン。
チン。
チン。
チン。
チーーーン!!
勝者の証
特濃牛乳で祝杯をあげる彩夏
学食の中央で。
正座して頭を下げる、
徳川 まのんと石田 香純。
「「ごめんなさい……(涙)」」
……。
呆れる悠斗
「……なんで俺、こんなコントを見てるんだろう」
悠斗へ流れ弾
「悠斗先輩も副部長兼 まのん先輩の使い魔として
ちゃんとしてください!」
「ごめんなさい……」
悠斗 正座。
お後がよろしいようで♪




