表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/29

第19話 ゆるキャラは今日も強い(ただし神も黙っていない)

「ねえ、田んぼん……」


スーパーの総菜コーナーで、まのんが半泣きになった。

その視線の先には、指人形を操る悠斗――田んぼん。


「悠斗がねぇ、ナゲットを買ってくれないのぉ……」


「そっかぁ、それは大変だねぇ」


田んぼんは、やさしく首をかしげる。


「でもね、まのんちゃん。まのんちゃん、十九歳でちょ?

 今日はお金が足りないから、我慢しようね♪」


(……十九歳の成人女性に、

 ゆるキャラが人生を諭すって、なんやねん)


「……分かったぁ! 田んぼん!

 私、我慢するぅ!」


素直すぎるやろ。


(だが――ここで終わったら、まのんの思うつぼ!

 “流れ”を変えなあかん。)


ぽんは、静かに周囲を見渡した。


――その時。


「──あっ! お姉ちゃん!」


振り向くと、見覚えのある少女。


「ママ! あのお姉ちゃんだよ!

 この前、私を助けてくれたの!」


(これや!)


「先日は、ありがとうございました」


母親が頭を下げる。


「いえいえ。困った時はお互い様です」


(十円返しなさいよ!!

 あと五円で、うまか棒が……!)


まのんの本音が顔に出ている。


「お礼と言ってはなんですが……

 このチキンナゲットと、ホテル監修ポテトチップスをどうぞ」


「ママ!? それ、私の分!!」


「いいの。また来月買ってあげるから」


「えぇ!? いいんですかぁ?

 じゃあ遠慮なく――」


「――いえ」


ぽんは、ほんのわずかに“風”を動かした。

すると悠斗が、一歩前に出た。


「それは、娘さんに食べさせてあげてください」


その瞬間――

悠斗の背後で、キラリーン☆と効果音が鳴った気がした。


「……きゅん」

お母さんの目が、完全に乙女になってる!


「うちの子(十九歳)には、  ポテチとアイスを買っていますので」

悠斗が微笑む。


「ですから、大丈夫ですよ」


(……あかん。 お母さん、完全に落ちとる。)


「……まのん。  俺のプリン、やるからいいよな?」


だが――

プリン < ナゲット


それが、まのんの価値基準だった。


「やだやだ!  ナゲットがいい!」

また始まった。


『……あかん。  ダダこねモードや』


ぽんは再び、少し強めの風を吹かせた。


すると。


「よちよち、お姉ちゃん」

少女が、小さな手を伸ばした。


「これあげるから泣かないで。

 私の宝物のイブちゃんシール」


「えぇっ!? いいの!?

 それ、私……買えなかったの!!」


(……シールもナゲットも――

 いや、待て。淑女はそんなこといたしませんわ)


おい。 九歳と十九歳。 立場、逆やろ!


「私――ナゲットもポテチもいいわ」


(わしの……勝や――

 でも、まのんのヤツ……子供からも巻き上げるとは

 こわぁ(恐))


「また会おうね、イブちゃん好きのお姉ちゃん!」

「うん! 次は一緒にガチャ回そうね」


(……何もいえん――)


帰宅後。


ポテチ。

コーラ。

アイス。

グミなどなど


『まのん、それ以上は――』


『大丈夫ですわ! ナゲット我慢しましたわ!」


そこ――ちゃう。。。


『……おい。そこまでは許可してないぞ』


『今の私は、誰にも止められないわ!!』


(あかん。わしの手にはおえん)


「まのん」


悠斗が、ゆっくりとお面を被る。


(あ! 七兵衛や!)


「まのん君。

 君は僕のために、淑女になるって言ったじゃないか」


「……七兵衛様」


「夜にお菓子ばかりじゃ、体に悪い。

 拙者が健康的な食事を作って進ぜよう」


数分後。


――かつ丼・大盛。


『ゴラァ!!  お前もぽんこつかぁ!!』

キタのぽん。あんたもだ。


「ずきゅーーん♡

 か・つ・丼!!」


(……やっぱり、あかん)


――――


翌朝。


『……ゴラァァァ!!

 まのん!!

 どうやったら一晩で、そないなんねん!!』


一目で分かるほど、巨大化したまのん。

パジャマのボタンが一個、飛んでる。


『……でも』


まのんが、ぽつりと呟く。


『ナゲット、我慢したもん……』


――一瞬の沈黙。


ぽんは、ふっと息を吐いた。


(……せやな。ようやった)


そして、小さく笑う。


(――幼い少女のおやつ、守ったったわ)


(……今回は、わしの勝ちや)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ