第17話 まのん淑女化計画――逃げ場なしの二十四時間
まのん淑女化計画――逃げ場なしの二十四時間
私の夢に向かって――
『まのん淑女化計画』は、今日も順調に進行中。
……順調すぎて、地獄です。
夢が叶い、ぽんちゃんのミッションクリアまで――
私とキタのぽんは、基本。
二十四時間・三百六十五日。
ずぅぅっと一緒のバディ。
寝ている時も。
起きている時も。
そして――
風呂。
トイレ。
……いや、待て。
『おい!!
あんた、わざと付いて来てるでしょ!!』
『掟じゃ♪
一緒にいるのが基本ルールだからねぇ』
『基本ルールにも限度があるでしょ!!
トイレはアウト!! 完全にアウト!!』
(風呂は許可が出た。……よかった。)
『ちゃんと見ないように気を使ってるよぉ?』
『その「ちゃんと」が信用できないのよ!!』
私は掴みかかる――が。
『無駄無駄ぁ♪
わしは今、神界。三Dだから触れませ~ん』
『……便利機能すぎるでしょ、それ』
『ちなみに淑女は“便利機能”なんて言い方しないぞ?』
『あんたと心での会話は無法地帯だろ!』
一瞬、言葉に詰まる。
――そうだった。
今の私は、淑女化計画の最中。
乱暴な言葉も減点対象……?
それ、さらに地獄じゃない?
『……こほん。
その、距離感に配慮していただけると――
大変助かりますわ』
『おぉ~♪ それそれ♪
今のは70点くらいやな』
『採点いらないから離れなさい』
『減点~♪』
『っ……!!』
こいつ、絶対わざとやってる。
――その時だった。思い出した!
私は、にっこり笑って。
一枚の紙を取り出した。
『……それは?』
『ふふ♪
これ、何だと思う?』
「……まさか――」
私は、ゆっくりと掲げる。
『願・叶・え・神・ア・ン・ケ・ー・ト♪』
『なっ……!?』
ぽんちゃんの顔色が、一瞬で変わった。
『昨日の夜、こっそり抜け出してたでしょ?』
『いやいや!
どこにも行ってへんで!?』
『守乃ちゃんのところでしょ?』
『違う!!
近所のパトロールじゃ!!』
『その時ねぇ。
師匠が“西郷さんの姿”で現れて』
紙をひらひらと揺らす。
『ぽんちゃんの働きを査定するから、協力してくれって』
『……ランキング直結のやつやん……』
『えぇ♪それ、重要情報ね♪』
ぽんちゃんの肩が、目に見えて震えた。
『ちなみに――評価が一定以下だと』
私は、さらっと続ける。
『願叶え神、仮免に戻るらしいわよ?』
『……は?』
『つまり、クビ』
『ちょ、ちょ、ちょ待て待て待て待て!!』
完全に青ざめた。
よし、効いてる。
『それでねぇ。守乃ちゃんが言ってたの』
『な、何を!?』
『昨日はナゲット、
一昨日はコーラ、
その前は唐揚げのお化けを見たって』
『……………………』
『心当たり、ある?』
『……終わった……』
崩れ落ちた。
――また当たった。
『まのんちゃん……お願いや……』
『ん?』
『チクらんといて……』
『へぇ?』
『ランキング最下位確定したら……
仮免どころか、免許取消もあるんや……』
……なるほど。
そこまで必死になるんだ。
『じゃあさぁ?』
私は、にっこり笑って言った。
『ポテチ』
『……』
『ポテチよね』
『……』
『ポ・テ・チ。あと、コーラ』
『それは無理なんじゃ!!』
ぽんちゃんが叫ぶ。
『一度プログラムを始動したら、
行動パターンは変えられん!!』
『ふぅ~ん?』
私は、アンケートを裏返す。
『じゃあ、こう書こうかなぁ。
“トイレまで付いてくる変態です”って』
『待てぇぇぇ!!』
『淑女としては、非常に不快でした――って』
『やめて!?
それガチで減点でかいやつ!!』
ぽんちゃんが土下座しかける勢いで叫ぶ。
『……じゃあ、条件』
『な、なんでも言ってくれ!!』
『“淑女的に”ポテチを手に入れる方法、考えなさい』
『は?』
『私が乱暴な手段を使わずに手に入れられるなら――
今回は見逃してあげる』
『……つまり』
ぽんちゃんが顔を上げる。
『交渉、ってことか』
『えぇ。淑女らしくね』
数秒の沈黙。
ぽんちゃんの視線が、わずかに泳ぐ。
そして――
『……おもろいやん』
ぽんちゃんが、にやっと笑った。
『神の威厳、見せたるわ』
『期待してるわよ? ぽんちゃん』
――こうして。
ポテチとコーラを巡る、
熾烈な頭脳戦が幕を開けた。
淑女の品格か。
神の評価か。
このバディ関係――
主導権を握るのは、どちらか。
(なんで神がポテチで詰んでるんだ……知らんけど)
悠斗より




