第15話 淑女、キャンパスに降臨(※ただし中身は阿鼻叫喚)
淑女、大学に降臨する(※本人の意思ではない)
まのん淑女化計画――発動中。
「悠斗くん。さぁ、大学へ参りますわよ。」
……行きたくないけど。
「え、ちょっと待って。
まのん……どうしたんだよ、それ」
玄関先で、悠斗が固まった。
「メイクしてるし、
いつもの服なのに……組み合わせ変わってて、
なんか普通に……可愛くないか?」
『ごらぁ、悠斗!何見とんねん!金とるぞ!』
「まあ。
淑女の神様でも、憑りついたのかしら。」
『違ぇよ!!
厄病神だよ!!
なに上品ぶってんだ私は!!』
いつもなら電車に乗った瞬間、
イヤホン装着 → アニソン再生 → 無言で目的地。
それが今日は――
「……まのんが、マーケティング論の本を読んでる……」
「一限はマーケティング論ですもの。
予習は基本ですわ。」
『なんだこの睡眠導入剤みたいな本は!!』
「お、席空いたぞ。座ろうぜ」
「いけませんわ。
あちらのお年寄りが優先ですもの。」
『ゴラァ!!
ウォーキングで足パンパンなんじゃ!!
座らせろぉ!!』
『立ってるのも運動だよん♡』
そして、
教室に入った瞬間、空気が変わった。
「……ごきげんよう」
「……え?誰?」
「ごきげんよう」
「……今、挨拶された?」
「いつも学食でポテチ食べてる子だよな?」
「不愛想な印象だったのに……」
「……不覚にも、可愛い。」
「なんか淑女っぽい――
けど、もどきだよな?」
『全員、知らない人なんですけどぉぉ!?
ってか、おまえら何を見てんだよ!』
授業中。
『くそぉ……
寝ようとしても瞼が閉じない……』
『無駄じゃ♪
無駄、無駄、無駄ぁ♡』
「まのんが真面目に授業聞いて、
ノートまで取ってる……」
悠斗が小声で囁く。
「なぁ……本当に大丈夫か?
変な病気じゃねぇよな?」
「ふふ。
もう誰にも、わたくしを止めることは出来ませんわ」
胸を張り、私は宣言する。
「淑女まのんとして、目覚めましたの。」
『目覚めてねぇぇ!!
ポテチ!! コーラ!!
寝かせろ!! アニメ見せろぉ!!』
(天罰じゃ♡)
――by キタのぽん
昼休み。学食。
「わたくし、
日替わりヘルシー定食をお願いしますわ♪」
『違ぁぁう!!
今日は唐揚げ定食ライス大盛だろぉ!!』
トレーを受け取りながら、私は心で泣いた。
その時、学食のおじいちゃんが言った。
「あれ?やっぱり、まのんちゃんじゃん!
見違えたじゃん!惚れちまうぜ!」
「いえ。結構です。(即答)」
『こんなの無理だって……
ストレスで死ぬ……』
『大丈夫♡
ストレス除去装置、装備済み♪
体調管理も完璧じゃよ♡』
『絶対、遊んでるよね!?』
『なんのことかなぁ~♡』
『目、泳いでる!!』
『ポテチに目は無いんじゃ♪』
「え……まのんがヘルシー定食?」
悠斗が目を見開く。
「下痢でもしてんのか?」
「失礼ですわ。
小食なわたくしには、これが最適なのですの。おほほ」
その時。
「悠斗先輩♪ こんにちは~」
明るい声で現れたのは、香純だった。
「あれ?
今日は……まのん先輩と一緒じゃ――」
一瞬、彼女の視線が私で止まる。
(……誰?)
悠斗が、焦ったように香純へ目配せした。
ま・の・ん!
「えぇ~?
本当にまのん先輩ですかぁ?」
香純は首を傾げ、
楽しそうに“査定”を始めた。
「だって、まのん先輩なら
唐揚げ定食大盛りですよね?」
→ 戦闘力 −10
「髪も、もっとボサボサで」
→ −10
「ノーメイクで」
→ −8
「服も、もっとダサくて」
→ −15
「不健康そうで」
→ −10
そして、にっこり。
「でも……
無駄におっぱい大きいから、
まのん先輩ですね♪」
――ピロリン♪
GAME OVER
『まのんの負け!!』
『私だって自覚してるよ(涙)』
チンチンチーン。
……地獄だ。
昼からは、経営論、簿記……
全部、子守唄。
必死で睡魔に耐え抜いた先に――
今日は、オタク文化研究サークルの新部室入居日。
悠斗と一緒に事務局で鍵を受け取り、
いざ――ご開帳!
「ピッカ♪ピカ♪の新築ルーム……!」
ガチャ。
「あれ?」
バタン。
「間違えましたわ?」
「いや、ここで合ってる。」
ガチャ。
「……夜空のごとく漆黒の闇……
秋の夜長の虫の囀り……」
「……って、ここは倉庫ですわ!!」
「言わなかったっけ?
空き部屋ないから、倉庫だって。」
まんま倉庫である。
「この荷物は、各部が引き取るってさ。」
「それより……電気をつけてくださる。」
「まのんの頭上。」
「裸電球!?平成築の校舎でございますよ!?」
「部費でLED買うしかないな。部室があるだけマシだよ。」
「確かに……学食でゲームしていたら、
白い目で見らましたわ……」
淑女まのんコントが始まる。
「それで、まのんが黒い目で見返して、
両隣の白い目に挟まれた結果……」
「まのんが裏返って白くなった! 負け!」
「それオセロやないかぁぁい!!」
淑女キャラぶっ飛ぶ。
気を取り直して。
「悠斗先輩、まのん先輩!ここですか?新しい部室……
……倉庫ですね。」
――香純だった。
「よし!全員揃ったな!荷物整理するぞ!」
逃亡を試みる淑女まのん
「こらぁ!まのん!どこ行く!部長だろ!!」
阻止する悠斗
「いえぇ~私はリコールで解任されましたの。」
「そんな制度ねぇ!!」
「“まのん”の。“まのん”による。
“まのん”のためのリコールですわ!」
そんな格言はない。
「まのん先輩!労働はサークル憲法で定められた義務です!」
――守乃が真顔で言った。
「はぁい……」
――こうして。
LEDを買い、不要な椅子とソファを譲り受け、
なんとか“部室”の体裁は整った。
さぁ――
オタク文化研究サークルの歴史は――
ここから始まるのだ。
『今回もわしの出番ないやん!』
『とか言いながら、守乃ちゃんに会いに来るな!!』
――さて次は、淑女まのんの天職バイトの話なのだ。




