第12話 私の神様はポンコツすぎて、ハイスぺ男子の希望を『ムリゲー』と切り捨てた
なかなか願いを聞きに来ない願叶え神――
やっと来た!と思ったら、お風呂!
『私がお風呂に入るのを待ってたでしょ!』
図星である。
『なにゆうてんねん。
今、神界から来たところや。』
(すでに行動パターン読まれとる。(焦))
焦る神様の姿を見ながら、
私は反射的に胸を張る。
『さあ、我が願叶え神様よ♪
私の願いを申し伝えるわよ。
しかと聞き届けなさい。』
『……なんか腹立つ言い方やのぉ。
くそっ、聞かざるを得んのが悔しい!』
『おだまり!!
よく聞くのじゃ!!』
『言っとくけどな、わしは神様やで 少しは敬え!』
『まあ、相当な年上だから、少しは敬ってあげるか。』
『アホか!?人間換算したら、わしは十七歳や!!』
「えぇ!? 年下!?
じゃあ――あんぱんとコーヒー牛乳買ってきて!」
『わしはミックチュジュースの方が好きや』
乗っかてどうする?ぽん。
『あー言えばこー言う!!
はよ願いの詳細を言え! まのん!!』
私はニヤリと笑った。
『……そんな言い方でいいのかなぁ〜♡
姿が見えないからって、
守乃ちゃんにストーカーしてたでしょ?』
『な、何のことだね。まのん君。
ぼくは健全な神様だよ』
『へぇ〜。
守乃ちゃん、霊感があるんだけどさ。
ここ数日、お風呂で“ポテチのお化け”を
見掛けるって言ってたよ?』
もちろん、はったりである。
それに神様は霊ではない。
(しまった……!
バレてたんや……!)
――どんな仕様だ、この神様。
まのんのはったりに乗せられる神様。
『無実や!それに、例えば昨夜はな……
イケメン俳優・渋谷 海南の姿だったはずや。』
『へ〜。
渋谷 海南って、ポテチ何味なの?』
『そりゃあ……九州醤油味やろ?』
まのんのポテチ盗み食いした神様
『ほぉ! 渋谷 海南さんが九州醤油味!?
……で?』
『ご、ごめんなさい!』
『まのんと間違えて、
ついて行ってしもただけなんや!
不可抗力や!!』
『へぇ〜。
推しと私を見間違えて、
部屋に何時間も滞在して、
上から下までじっくり観察するのが
“不可抗力”なんだぁ?』
はったりの続きである。
『……まのんさん。
トドメを刺してください(白旗)』
『じゃあ、素直に私の願いを聞きなさい!!』
『……はい』
『その態度、まだ気に入らないなぁ〜?
神様ぁ?」
『ど、どうすれば……』
『せ・い・ざ♡』
(くそぉ……!
いつか天罰を喰らわしたる……!)
私は満足げにうなずき、宣言した。
『では、申し伝える。
我が願いは――
イケメンエリート男子と結婚して、
タワマンニートオタク主婦になることよ』
『……なんや。もう知ってる内容やん、
それに、もう叶っとるやん。』
「どこがだよ!!
イケメンエリート男子がどこにいるの!?」
『……悠斗君』
『ない、ない、絶対ない!』
『悠斗のどこがイケメンでエリートなの!?
口うるさくて、ただの私の母親役だよ!
今さら彼氏なんて思えないし!!』
(……眩しすぎるよ――私には)
『じゃあ聞くが。
悠斗君に“匹敵する男”が、
他におるんか?』
私は、即答した。
『いるわよ。一人』
『……誰や』
『我が明法大学野球部二年、
三澄 投太くん♡』
三澄君も眩しすぎるはずである。
『ちょ、ちょ、ちょい待ちぃ!!』
神様が慌てて湯気をかき分ける。
『猫に小判!
豚に真珠!
馬の耳に念仏!
犬に論語!!』
『例えが失礼すぎる!!』
『わしでも知ってる三澄君はな、
野球エリート、超イケメン、超天才、
マルチリンガルで人柄も完璧や!!』
『あんな、有名人で雲の上の存在――
まのんの願いのために不幸にするなんて――
わしには出来ん!!』
神様は、はっきりと言い切った。
『……これはな、 ムリゲーや。』
(まのんには言えんが、わしの神力では無理かも――)
『言っとくけどね。
私は三澄君に告白されたの。』
『嘘だ!じゃあ、何で付き合ってへんのや?』
『三澄君が忙しすぎて、返事が出来てないの!』
『三澄君……実は人を見る目が無い――
ぽんこつかぁ!?』
それはあんたである。
……どの口が言うのか。
湯気の中で、
ぽんこつ神様は珍しく真面目な顔をしていた。
――その言葉が、
なぜだか胸に、少しだけ引っかかった。




