第10話 まのん、夢ちゃんになったら最強すぎた件
守乃と彩夏の撮影会は、
まだ終わる気配を見せていなかった。
「すみませ~ん! 次のポーズ、お願いしまーす!」
「えぇぇ……もう疲れたんだけど……」
悠斗が副部長の威厳を見せようとする。
「もう、いいんじゃないか? 君たち」
だが、シャッター音は止まらない。
「ったく、仕方ねぇな……」
腕を組んだ悠斗が一歩前に出る。
「では皆さん。撮影が長くなっているので、
ラスト――3分でお願いします」
その瞬間。
「悠斗先輩♡」
「myプリンス悠斗♡」
左右から挟撃。
「はいっ」「承知しました」「了解です」
(……礼儀、良すぎやろ!)
(――ほんまに、こんなええ人らおるのに……
なんで、わしは“極悪まのん”の願叶え神に――
なってしもたんや……)
――キタのぽんは、天を仰いだ。
「では、終了です!
ご協力ありがとうございました!」
拍手と感謝の声が一斉に上がる。
「悠斗先輩! 休憩行きましょう。」
「先輩、お茶でもしましょうよ♡」
モブにまわっていた香純ものっかる。
「私も行くぅ~♡」
三方向からの誘惑。
「いや……まのんが……」
「まのん先輩には厳蔵が付いてますから♪」
「行きましょ、行きましょ~」
「……ちょっとだけだぞ」
――そして、その頃。
逃走中のまのんと厳蔵。
……遅い。
遅すぎる。
(運動不足やなぁ……十メートルで捕まるとか……)
キタのぽんは、にやにやが止まらなかった。
―――――パシャパシャパシャッ!
「夢さぁ~ん♪次のポーズお願いしまぁ~す!」
「サポートのお兄さん、ちゃんと仕切ってよ!」
「だ・か・ら!!
私は夢ちゃんじゃねぇ!!
って言ってんだろ!!」
「おぉぉ! リアル夢ちゃん!
キャラまで完璧!」
源蔵が乗っかてくる。
「先輩! 僕も撮っていいですか!」
「なんで厳ちゃんが撮るのよ!!」
「僕も夢ちゃん好きなんです♪」
「……なんで全員、
私が夢ちゃんだって前提なのよ!!」
「え? 違うんですか?」
「だから、違うって言ってるだろ!!」
「なーんだ……じゃあ。ただの、まのん先輩なんですね。
厳蔵ランキング十二位なんで、撮らなくていいっす。」
「源蔵ぉ!! しばくぞ!!
……ってか、結構上位じゃねぇか!?」
「僕、友達いないんで、
知ってる三次元女子、十三人しかいませんけど」
……反応に困る。
「いやぁ~いいですねぇ、その掛け合い。
夢ちゃんと浩太みたいですよ♪
ツーショット、撮っていいですか?」
※浩太=夢ちゃんの幼馴染
「なんでやねん!!もうやだぁ~! 疲れたぁ!!
ポテチとコーラ欲しいぃ!!」
その一言で、会場がざわついた。
「おい! 夢ちゃんがポテチとコーラ所望だぞ!!」
すると即座に夢ちゃん推したちが反応した!
「九州醤油あります!」
「コーラ買ってきます!」
「六座候あります!」
「552豚まん!」
「ミックチュジューチュ!」
「じゃあ私は松牛大盛で♡」
――なんじゃこら?の展開。
「♡うふふふ♡ 夢ちゃんも悪くないじゃない♡
さぁ、どんどん貢ぎなさぁ~い♡」
まのん。完全に覚醒。
「これ! 私の使い魔・厳蔵!
貢物を受け取って、整理なさい♡」
その光景を目撃し、休憩から戻った悠斗たちが立ち尽くす。
『……もう……まのんは……よう分からん……』
――キタのぽんは、遠い目をした。
「私は――
『この世にブスなんていない!!』の夢ちゃんよ!!
さぁ! 撮りなさい! 貢ぎなさい!!
十枚撮ったら、ポテチ一袋かコーラ一本よ♡」
「うおおお!夢ちゃんの隠れ設定『強欲モード』だー!」
夢ちゃん推し。さらに喜ぶ!
「まのん…………ノリノリやないかぁい!!」
――悠斗の叫びが、会場に虚しく響いた。
悠斗はなぜか胸の奥が、少しだけざわついた。
(バカ騒ぎしているだけなのに、あの笑顔から目が離せない。
……ちくしょう――)
ただし――
強欲な夢ちゃんには、SNS炎上系お仕置きが待っていた。




