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SideB レイド戦の礼儀って大事だと思います06

 いいか、幼女……おっと失礼、レディーよ。食堂はそもそも食事をとるところであって物騒な化け物の対策会議をするところではないのだよ?


 まあ何を言いたいかというと、飯ぐらいゆっくり食わせろ!


「この世界じゃあ希源種オリジンワンとの戦闘の際はなんだか人目がつかない状況へと世界が誘導? いえ、変化していますが、"クロエラ"の親鳥みたいな巨大で隠しようがないのはどうなるんでしょうね」

「それはこのわかめアンド豆腐という日本人泣かせの味噌汁を堪能してからでもいい話題か?」

「ああ、すみません。まだ食事中でしたね」


 結局あの後帰ってすぐに寝たわけだが、まあバイト明けでそのまま飛び出してたもんだから疲労もたまってたんだろうな。だから朝11時に起きたのも早起きといえよう。


「力也さんは昨晩遅くまで起きていたのに今日も朝六時には起きて日課のトレーニングまでしてそのまま仕事って……すごいですよね」

「俺には到底真似できないな。俺ならトレーニングする時間をそのまま布団の上での静止運動に切り替えるだろうな」

「それってただ眠ってるだけですよね……?」


 とっくのとうに朝食を済ませ少し暇そうに頬杖をついている有栖。いいんだぜ? お前もトレーニングがてら外でも走ってきても?


 俺が朝食の付け合わせの野菜に箸を伸ばしたところで有栖がぽんと手を打つ。なんかよからぬことを考えてそうな……。


「そうそう、もしかしたら今度この食堂に共用のテレビが置かれるかもしれないんですよ」

「む? そうなのか?」

「そうですそうです。志亜さんと話してて、食事中にも報道番組? とかいうのを見れるようにどうでしょうって相談してみたんですけど、そしたらちょうど近くの住人で使わなくなったテレビがあるとかで今交渉してるみたいです」

「不要なテレビがあるって……また都合のいい話だな。こちとら自室にテレビがないというのに」

「あはは、私の部屋だって……基本絵芽さんがアニメを見るためテレビを独占しちゃいますし」

「あー……なんかイメージできるわ」

「まあ、絵芽さんが朝のアニメを見終わるころには私ももう十字さんのところにお伺いしないといけない時間ですし、中々テレビをゆっくり見る時間もないんですよね」

「あー……それはイメージできないわ」


 俺の部屋への訪問をそもそも日課にしないで欲しい。あと定時っぽく決まった時間に準備するのもやめれ。


「まあ、ニュースでおかしな事件なんかが見れれば少しは希源種オリジンワンの存在に気付けるかもだな」

「そうですね、少しはこの世界の情勢というものを知っておくべきですよ」


 唐突に聞こえた俺と有栖以外の声に思わず二人して声の主の方を振り向いてしまう。開いていた食堂のドアをくぐり、にっこりとほほ笑む黒髪の女性……志亜さんだ。


「なんだかカラスの群れに襲われる事件が近くであったみたいで、怖いですね」


 "管理人さんモード"の志亜さんは頬に手を添え、作ったような不安な表情を浮かべる。


「おそらくはクロエラの仕業でしょうね……ですよね? 志亜さん?」

「クロエラ? なんですかそれ?」


 あ、お決まりの知らないていスタイル。それを察してか有栖もぷくーっと頬を膨らませ不機嫌な表情を俺に向ける。なんでだよ、向けるならあっちだろうが。


「そういえば有栖や十字さん、あと百田さんたちでなんだか真夜中に慌てていたみたいですが、何かあったんですか?」

「待って欲しい管理人さん。その話題は俺がこのメインディッシュにして対白飯の主戦力でもある塩鮭を討伐してからでもいいでしょうか?」

「え? ええ、構いませんよ。というか、お食事の邪魔をしてすみません。てっきり皆さんもう食べ終えたと思って片付けに来たつもりだったんですが」

「あ、それならかえってすみません。すぐ食べて有栖をこの場に残し部屋に戻ってしっかり施錠しますんでもう少しだけ待ってください」

「なんだか余計な情報混ざってません?」


 有栖による弾劾の視線から目をそらしているとその先で志亜さんがすっと椅子に座る。なんだろう、意識しないように……とは言われてはいたがそれでもなんか緊張してしまう。


「相変わらず仲がよろしいんですね、有栖と十字さんは」


 にっこりとほほ笑んだ管理人さん。だがどこかその表情に威圧に似たものを感じ、思わずごくりと息もろとも口にした飯を飲み込む。味まともに楽しめないんですけど?


「それで……昨晩は皆さん慌てて何をなさってたんですか?」

「あー……その辺の説明は有栖が得意なんで?」

「え!? なんですそれ!?」

「だって俺早いとこ食わないと管理人さんに迷惑だろ? 任せた!」

「……ずるい」


 俺と有栖のやり取りを見守るように管理人さんは顔は動かさず目だけを動かし俺と有栖を交互に見ている。ほれ、早いとこ説明するんだ。じゃないと朝食が味気なくなる。


「ええっと、昨日十字さんが飛鳥さんから友達が不思議な黒い絵の画像がスマホに入っていて消せないとかで相談を受けていまして。それに加え十字さんがバイト先で例のカラスの襲撃事件で亡くなった方の家のポストに黒い紙を入れていた不審者の話を聞いていて……」

「まあまあまあ、それは怖いですね」


 あんたのその演技にしか見えない驚きのほうが怖い……とは死んでも言えない。

 

「それで真夜中に連絡を取っても返事がなく、慌ててみんなで飛鳥さんの友達の家に向かったんですが……途中連絡がついて黒い絵の画像は消えたって」

「……消えた?」

「はい、それで少なくともその黒い絵の画像に関しては悪戯いたずらかコンピューターウイルス? とかいう仕業だとかで帰ってきたんです」


 まあ要点はしっかり押さえてるし俺の不名誉は押さえてないから非常に良い説明だな! 管理人さんも納得して……はないようでそっと口元に手を添え考え込んでいる。


「どうかしましたか志亜さん?」

「……ふふっ。その黒い紙の画像は本当に消えたんですか?」

「はい?」


 志亜さんはどこか遠くを見るような視線で天を仰ぐ。気のせいじゃない……なんかもの悲しい雰囲気がするのは。


「ねえ有栖? もしあなたなら持っていると不幸になる紙なんてものがあったらどうする?」

「それって……クロエラの?」

「さあ、私はただのたとえ話をしているだけですよ?」

「もうっ! あくまでも……まあいいです。私ならそんな紙燃やしちゃいますね」

「ふふ、でも残念。その紙は燃やしても燃えないし破くこともできない。気が付けばまたもとのように手元へと戻ってしまう」

「え? そんなのってずるい……って、それあの手記には書かれてないですよね!?」

「有栖、とりあえず管理人さんの話を聞いとけ。重要なのは情報が無いことの確認じゃなくて"無い情報"の収集だ」

「さすが、十字さんはしっかりしていますね」


 手を合わせ満面の笑みで俺を褒める管理人さん……やっぱりもうこの人苦手だ。グッバイ、俺の男心をくすぐったあの日の君よ。


「それで、話を戻すけど有栖?」

「なんです?」

「もしそんな捨てるに捨てれない紙を一つだけ処分する方法があったらあなたはどうするかな?」

「そ、そんなの実行しますよ!」

「それが……それが他人の命を奪うとしても?」

「え!?」


 背中に嫌な汗が浮かぶのを感じる。そしてなんだか取り返しがつかないミスを犯したという実感が沸き上がる。


「その飛鳥さんのお友達が消せないという画像は本当に消えたんですかね? それとも……"他の餌"を見つけて単に移っただけで、当の本人からは無くなったように見えただけじゃないんですかね?」

「あんた……どうしてその情報を隠していたんだよ」

「なんのことでしょうか?」

「くそっ! 有栖、急いで飛鳥ちゃんに連絡を……」


 俺の言葉を遮るかのように有栖のスマホが着信音を上げる。有栖も嫌な予感を感じていたのか、恐る恐るスマホを取り出し画面を見て青ざめる。


「あ、飛鳥さんからです……」


 俺は無言のまま有栖の様子を見守っていたが、電話に出てすぐに飛び込んできた飛鳥ちゃんの異常を告げる泣き声、そして呆然とした表情からがっくりと首を垂れた有栖に状況を察した。


「飛鳥さんのお友達……結衣ゆいさんの相談にのっていた別のお友達が今朝方亡くなっていたのが確認されたそうです。死因は……カラスのような鳥の群れに襲われたとのことです」

拙作をお読みいただきありがとうございました^^

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