SideB レイド戦の礼儀って大事だと思います17
「お、おい十字? この状況を共会荘のメディア女王の名を欲しいままにしている私にもわかるようこっそりひっそりはっきり教えろ」
「おい今は目の前の悪魔女王様の話に専念しろ。じゃないとそこの精霊の王女みたいに直立姿勢でこの話し合い終わるまで棒立ちの刑に処されるぞ」
「いやいやいやいや、まずは零華が何であんな見たこともないほどのあ~れ~系叡智なゲームの人気のない場所に追い詰められて焦るヒロインチックな表情になるんだ」
「お前の言葉のチョイスと表現どうなってるのかのほうが気になるぞ……あ、なんでもないです、はい。ちょっとF子に経緯を話してただけですんで打ち合わせ続けてください摩子さん」
「そうだぞ摩子? だからそんな見るものを射殺すような視線を向けるのやめて? じゃないと瞳ちゃんはお目々が三つだから普通の人より1.5倍ダメージ受けちゃ……あ、すみません、黙ります、はい……お話続けてください」
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「おい、お前のせいで見たことないほどに冷ややかな目で摩子さんに睨まれたじゃねぇか」
「ふひひひひ、私たちの業界ではご褒美です……というやつだな?」
「その業界に俺の籍はない。というかふざけてると俺たちの食堂の席が無くなる」
「そういえばクロエラとやらの襲撃があった日は私のおかげで食堂のテーブルは守られたんだ。 どうだ? 少しは幻妖族カッコイイーとか思わないのか? 円卓ならぬ食卓の騎士だぞ? ん? ん?」
「悪いけどお前の頑張り見れてないから? てかお前もそういやあの夜いたんだよな。この世界でのクロエラが女性だって知ってたのか?」
「そうだな……数多のキャッキャウフフ系なゲームで多くの女性を我が支配下に置いた18禁イケメン女王の私の勘では奴は女性だな」
「意味の分からん肩書が説明の邪魔すぎるんだが。あと勘じゃなくて目の前にいたんだしなんか他に外見の特徴とかの情報ないのか?」
「おっとっと? その情報は高いぜ旦那? あ、旦那ってそっちの旦那様じゃないからね? 瞳ちゃんの旦那様は志亜姉さまと生まれる前から決まって……あ、おいやめろ、摩子にチクるな……あ、バカおま! ……はい、なんでもないです。すみませんちょっと小さな虫がいたみたいで驚いただけです、はい……」
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「三幻眼の魔女を前にこの胆力……というか仕打ち……ひどい」
「そう思うなら早いとこ知ってる情報を寄越せ。ほら、本会議の向こうさんもなんか女性ってだけじゃ犯人絞り切れないみたいで飛鳥ちゃんも困ってるだろ」
「むむむ、飛鳥にはふわふわホワイトフェニックスの翼5枚分の借りがある。ここで返さねば幻妖族の女王としての名が廃る」
「また王かよ。お前いくつの国の王を兼ねて……え? お前女王なの? 幻妖族の?」
「……そうだ……そうだったな。ふひひ……いらない称号だけどな」
「あ、ごめん。なんか地雷踏んだみたいだな。まあそれはともかく情報提供急いで?」
「ふひひ、存外な扱いはご遠慮くださいな存在なんだぞ? でもそろそろ天魔族の存在が存分に怖いのでささっと言っちゃうぞ?」
「おう、頼んだ」
「奴は黒いレインコートに身を包み、フードを深くかぶってたから顔は見えなかった。靴は真新しい黒い運動靴みたいだったな。まあ犯行用に買ったんだろう。それ以外は……零華がもう言ってたな。黒いネイルをしてたというのも聞いたんだろ?」
「ああ、聞いている」
「あれがつけ爪なのか自前のものか……それとも希源種としての特徴なのかはわからないが、おそらくいまとなってはもうあの色ではないだろう。殺し損ねた私たちもいるんだ。あれでは目立ちすぎる」
「すごいなF子……お前ちゃんとまじめに喋れたんだな」
「なんだ? 元の私が恋しいならいつでもあなたの瞳ちゃんトークスタイルにカムバックしちゃうぞ?」
「まじで現状維持でお願いします」
「ツンデレー。まあ……悪いがあの夜にこの両の眼で見た情報はこのくらいだ」
「そうか……どうやらこちらのサブ会議? も進展なしだな」
「そうだな……まあこの目で見てないけど千里眼で見た感じだとあいつんち共会荘よりブルジョワっぽいし腹いせにこっちも鳥の羽でもばら撒きに行くか」
「おいおい、それじゃあただのご近所迷惑行為……というかただの犯罪だぞ」
「くそう……いま見直してるがビルの玄関口は指紋認証式の自動ドアがついてるな。これじゃあ入れない」
「だからそういうアウトロー的な解決はやめ……んんん!?」
「お、おい馬鹿! そんな大声上げたらまた摩子に睨まれ……あだっ!? なぜぶった!?」
「議長……じゃなくて摩子さん。こいつも大事な情報秘匿してました。零華と同罪かそれ以上の刑を求刑します」
「ふぁあああ!?」
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「さて、響も帰ってきたことだし状況をまとめるぞ」
「ああ、情報の共有は助かる……のだが、これはいったいどういう状況なんだ?」
テーブルに着く俺・有栖・力也・飛鳥ちゃん・摩子さん・響。んでテーブルに着けず食堂の隅で立つ零華と口に黙るようにとガムテープを張られ涙目なF子。まあ……犯人の居場所知ってたのにそれをスルーしてたのはさすがに見逃せないわな。というかたぶんそれを黙ってたら俺も棒立ち組に入れられる。
「そこの二人は報連相に難ありのため絶賛反省中だからそっとしておいてやってくれ。さて、クロエラに関してだがF子の千里眼により住居の場所がわかった。飛鳥ちゃんの情報によると奇しくもそのマンションには金凜高校の教員が住んでる。しかも女性だ」
俺からの視線を合図に飛鳥ちゃんがすっと立ち上がる。
「美術の先生で、浦木先生って言います。下の名前は確か梢だったかと。性格はとても大人びていて……物静かでどこかミステリアスな雰囲気がしますが、そこがどこか魅力的だってクラスの男子達は言ってましたね」
「美術……か。黒い絵もあっていよいよ"クロ"だな、その浦木って先生は」
「他に何かその浦木という女に関する情報はあるか?」
摩子さんの問いに飛鳥ちゃんはちらりと零華とF子を見、すぐさま考え込む。わかるぞ……言葉と態度って大事だもんな、今……。
「浦木先生は以前は教員ではなくどこかの会社でデザイン関係のお仕事をしていたとか。どうも職場環境が良くなかったようで。それで大学時代に取得されていた教員免許もあったので私たちの高校にきたとか。会社の名前は……なんて言ってたかなぁ……」
飛鳥ちゃんが思い出そうとする中、ポツリと声が響く。
「それって……"MTデザイン"って広告会社じゃないか?」
「え? あ、そうそう、たしかそんな感じの社名で……って、なんで十字さんがご存じなんですか?」
全員の視線が俺に向けられる。だが俺の中ではいよいよ浦木って先生がクロエラなのだと確信できた。
「MTデザインって会社は学校関係以外で亡くなったクロエラの犠牲者、"武藤"ってやつがいた会社だ。社名から想像がつくかもだが、武藤の漢字のイニシャルであるMとTを関した会社で、やつはそこにコネで入ったと客から聞いてる」
「……つながったというわけか」
俺の横で腕を組み目を閉じる力也。物静かな雰囲気ではあるが内心は穏やかではなさそうだ。まあそれもそうか……大切な妹の学友を手にかけた相手だもんな。そしてそれは飛鳥ちゃんも同じ様子だ。テーブルにつけた両手がかすかに震えている。
「これ以上やつを放っておくのは危険だ。それに、奴は今回雛への餌やりに失敗もしている。もしかしたら次の算段を練っているかもしれない」
「住所も割れているんだ。黙って待つ理由も猶予も不要。今晩片を付けるぞ」
議長……ではなく摩子さんの口を出た言葉を合図に、俺たちは皆顔こそ合わせぬもののコクンと大きくうなずいた。さあ、今度こそ決着をつけてやるぞ……クロエラ……って、あ……やば。
「あー、そういや俺今晩……バイトだったわ」
再度俺に皆の視線が一斉に向けられる。いや、お前らもたまに仕事があるって理由で不参加の回あったよな? なんで俺の時だけそんな目するよ? わかってるよ、シフトの交代探すからそんな目で見るのやめて欲しい。




