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ナナとカオリ2

「カオリ……これ結構辛いのね」

「……悪い。そんなに辛いとは思ってなかった」


 オレが頼んだ店は本格的なカレー屋だったらしく、他のものと比べて辛みの表示が一番少ないものを頼んだが予想以上に辛みが強かった。委員長のも同じやつにしたので申し訳なく思っている。


「あなたは平気なの」

「オレは大丈夫。別にオレが平気だからってわざと辛いのを食べさせようとしたわけじゃないぞ」

「そこは疑ってないわよ」


 しかし薫だったときはこの辛さは厳しかったがカオリなら普通に食べられる。しかもちゃんと味わいながらだ。これも変身している効果なのだろう。辛みは痛覚というのを聞いたことがある。なので痛覚に耐性があるこの状態なら辛い物もおいしく頂けるというわけだ。今度一人で激辛料理でも食べてみようかな。食べきれば無料のもあるし……っていかんいかん。

 最近厄妖討伐でカオリになっている時間が多くなっている。さらに今日は普通に女の子として委員長と買い物しているし、これじゃあ薫としての俺はどうなってしまうのか。


「カオリ、どうしたの?」

「ちょっと考え事をだな」


 相当きついのか一口ごとに水を飲む委員長。


「無理しなくてもいいんだぞ。だめならオレが食べるし、代わりのやつを買ってくるから」

「た、たまには……こういうのも食べて、みようかと、思ってたのよ」

「そんなに辛そうだとオレも辛いから」

『これ以上ナナに言っても無駄だぞ』

『なんだミフトか』

『なんだとはなんだ。まあ見ての通りナナは強情なところがあるからな。大抵のものを食べられると言った以上引けなくなったのだろう』


 委員長はなにか言おうと睨むが黙々とカレーを食べている。ちなみにオレはすでに完食済みだ。


『その大抵から外れるものなんだが』

『一発で外してくるお前を素直に凄いと思う』


 常にオレを警戒しているのか一歩引いた感じに対応するミフトが凄いと言うなんて、しんどそうな顔をする委員長を見ると全く嬉しくないんだが。


『ところでミフト。妖精は何か食べなくていいのか』

『一応お前たちの食べ物は食べることはできるが、そんなものより俺たち妖精の主食は感情だ』

『妖魔と同じか』

『あいつらと一緒にするな。俺たち妖精が食べる感情は妖魔とは逆の正の感情だ』

『食べると食べられた人はどうなるんだ。楽しい気持ちとかがなくなったりするのか』

『勘違いするなよ。妖魔が負の感情を食ったとしてそれが無くなったりしないのと同じで、その感情になったときに発するエネルギーそのものを食べるんだ。それで妖精の場合は魔法少女の力を与えるエネルギー回収も兼ねてパートナーの感情を主に食べる』

『流石にただじゃないんだな』

『協力してもらっている分、あまり対価を要求したくないんだがな。いくら妖精とはいえ何も食べないと死んでしまうし、エネルギーがないと変身させてあげられない』


 魔法少女としては自給自足で変身のためのエネルギーを補給するのか。正の感情を発生させる必要はあるが、そこは気の持ちよう。自分の状態によっては難しくはあるが、自分でなんとかできる分本当に他の魔法少女と対立する要素はないんだな。


『負の感情も食えるんだろう? それってどうなんだ』

『お前は食べられるからと言ってとても不味いものをわざわざ食うのか?』

『それは勘弁したいかな』

『妖精にとっては負の感情は不味いだけでなく、毒でもある』

『食べ物は全く違うものだけど、それを得る手段でも妖魔とは対立しているんだな』


 人間から出るエネルギーを主食としている厄妖と妖精。しかしそのエネルギーは正反対のものを食べるという。


『非常に不服だが今日のナナからはたくさんエネルギーが発せられた』

『ちょ、ちょっとミフト!』

『ほとんど黙ってたのは飯食ってたからか』


 ミフトが食べるエネルギーが出るということは委員長自体はかなり楽しんでいたということでいいのか。委員長が楽しんだというのを分かるのはいいんだが、そういうのを安易にばらされるようなのとは一緒に住みたくはないな。


「はぁ、ようやく終わったわ。もう行きましょう」

「勝手に聞いただけだけどごめんって」

「カオリは悪くないわ。ただ……恥ずかしいだけ」


 またまた照れて下を向く委員長。可愛い。



 食事を終えて本屋へやってきたわけだが、ただ俺が買っているシリーズの新刊が出ているかの確認とまたなにかいいのがないのかをふらふらと見て回るだけで興味ない人にとっては本当に面白くないだろう。


「服の時と違ってかなり地味だが、ナナは大丈夫か? つまらなかったらそう言ってくれ。すぐ出るから」

「私は大丈夫。見た目通り本を読んでいるから」


 三つ編みメガネなザ委員長な彼女はくいっとメガネを上げてそう言った。


「それならいいんだけどな」


 しかし委員長と服の店で色々見て回った時よりは圧倒的に短く終わった。当たり前だ。服の時は種類も豊富で店自体が複数あったのだから。本屋は興味あるブースは全てではなく一店舗のみ、離れたところにもう一店舗あるが大して変わらないだろう。


「もう終わってしまった」


 委員長に声を掛けようとしたが、本を手に取ってみている姿に見とれてしまった。学校では武のこともあり、あまり見ていなかった。厄妖との戦闘だってそんな余裕なんてなかったし、魔法少女として別人だと思っている。服の店の時は気恥ずかしくて直視していなかった。食事だってあんまりじろじろ見るものじゃないし。

 つまり今までオレは、俺は。委員長を真面目に見たことがなかったのだ。こんだけ近くにいた女の子を見ていなかったなんて武にドライと言われても仕方がない。


「カオリ、どうしたの?」

「いや、なんでもない」


 あまりにぼうっとしていたのか逆に委員長から声をかけられてしまった。


「オレの用は済んだからどうしようかと思ってな」

「そうね。まだ時間はあるからどうしましょう……この感じ!」

「こんな大勢の場所なのに」


 これから何するかを決めようとしていたとき店の外から大勢の人の悲鳴がした。それと同時に厄妖の結界の気配がショッピングモール全体を覆った。


 すぐさま駆け出し、客の逃げる方向の逆を行く。


「じれったいな。変身するか」

「流石にこんなに人の目があると認識阻害の効果も意味がないわ」

「ならどこか人のいない場所へ行こう。このまま行ったって戦えないからな」

「そうね。焦っても仕方がないもの」


 オレたちは近くのトイレに向かった。まさかこんなときに女子トイレに入ることになるとは。今は緊急事態だからあまりそんなこと考えてる暇なんてないけど。


 変身して天井付近を跳びながら移動した。ただでさえ混乱の中上を見上げるものがほとんどいない中、高速で動くものをわざわざ目で追うような人はいないためスムーズに厄妖の元へたどり着けた。


「なんだこれは」

「……ひどいわね」


 ショッピングモールの広間の中心に厄妖はいた。タワーのように伸びる真っ黒い体は三階分吹き抜けになっている広間で天井に届く大きさだ。その黒い体から無数の触手が伸びて人々を襲っていた。

 厄妖の辺りには多くの人が倒れ伏しており、厄妖の絶望を食らう習性から死んではいないが、いつ殺されてしまうかわからない危険な状態だ。


「あいつの気をオレが引くからナナは他の人たちを頼む」

「わかったわ」


 委員長に頷いてオレは厄妖の前へ飛び出した。


 飛び出した瞬間に厄妖の触手が他の人たちとは比べ物にならない数向かってきた。魔法少女ではなくとも厄妖の敵だと認識しているらしい。

 昔のオレだったらこの攻撃で下がるなりして前へ進めなかっただろうが、戦いの経験を積んだ今はその程度では止まらない。

 オレの最大威力を持つ全力振り下ろしをすると建物はともかく人を巻き込んでしまう。なので全力でなくても刀の振りで斬撃を飛ばすことをできるように戦いの中で編み出した。

 その技で無数の触手を切り捨てた。


 ただ、攻撃を振り払っただけでは全くこちらを意識すらせず同じように触手をオレに向けながらも、人々を襲い続けている。委員長は氷の壁を張って人を守りつつ避難の誘導をしたり動けない人を移動したりしているが、もっとオレに意識を向けさせないときつそうだ。

 とにかくでかくて触手の数が膨大なため辺りの人を襲うことを止められない。ならばどうするか、対処の仕方が上手く浮かばないときはとりあえずどでかい一撃をお見舞いするだけだ。


 委員長が厄妖の近くの人を避難させてくれたおかげで力を抑えなくて済む。


「これでも食らいやがれ!」


 大きくジャンプをして巨大な厄妖の体の真ん中あたりを刀で切り飛ばす。すると達磨落としの要領で黒い液体をまき散らしながら上段の部位が落ちて下段の部位にぶち当たる。色々痛そうだが厄妖に情けをかける必要はないだろう。

 悲鳴のような音を上げながら、ほぼ全ての触手がオレに落ちるように向かってきた。


「こんなものより静永さんの技のほうが強かったよ!」


 全力で落ちてくる触手に向かって刀を振り切った。斬撃が触手を裂きながら登り天井を貫く。空が見えても結界の中だから青空なんてものは見えない。


『ナイスカオリ。避難はまかせて』


 委員長はオレにテレパシーを送ると、混乱してうまく逃げられない人たちの前に大きな氷の壁を創った。


「みなさん落ち着いて! この壁に沿って逃げてください!」


 魔法で声を拡散させているのだろう。口の前で両手を輪のようにして声を出すとメガホンを使っているみたいに声が大きくなった。

 訳の分からない危険なことが起こり、さらに訳の分からない氷の壁と少女の登場により思考が止まったのだろうか。先ほどよりかは混乱はなくなり委員長の創った氷の壁に沿って集団が動き出した。


『二人も直にくるからもう大丈夫。そっちは手伝わなくて平気?』

『今のところは大丈夫だ。なにかあったら頼む』

『わかったわ。危なくなったらすぐ呼んで』


 委員長との会話中にももちろん厄妖からの攻撃は絶え間なく続いていた。胴体の一部を消されたらそれは怒るものだ。これ以上長引かせる気もないし、さっさと倒しますか。

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