810 放神捨刀流の開祖
アリスにしなだれかかっていた、トゥルウィスから、通信が聞こえた。
『〖スキル奪取〗』
『えっ!? ス、〖スキル奪取〗!? な、なんのスキルを奪ったんですか!?』
『〖時空回帰〗を貰ったの』
『――〖時空回帰〗!?』
スウがくれた、一番貴重なスキルだ。
『トゥイードルテ、さっきわかったの〖時空回帰〗を貰って、行かないといけないの・・・・』
『行かないといけない?』
『そう――トゥイードルテが行かないと、ハンプティ・ダンプティが生まれないの』
その言葉で、アリスも理解した。
『あ―――っ!!』
だが、トゥイードルテに、白銀の騎士のような機体や立ちふさがる。
『逃がすと思うか・・・? スウを殺すという、お前を』
白銀の騎士が、剣を持ち上げる。
しかし、これをアリスが止めた。
『リッカ、まって下さい!! 彼女を殺してはダメです!!』
『えっ、なんで・・・・?』
『わたしも理解しました・・・・行って下さい。トゥイードルテさん』
『ありがとうなの』
『どうか、〝今〟をお願いします』
『うん。でもその前に、これをスウに渡しておいてほしいの』
射出される、1つのカプセル。結構大きめだ。
『なんですか? これは?』
爆弾かと警戒したアリスだったが、
『成田 命理の記憶と思考』
『え!?』
アリスが、失っては一大事と、慌ててカプセルを掴む。
『じゃあ、行ってくるの――』
『は、はい、行ってらっしゃい・・・!』
黄金と白銀のトゥルッフ・トゥルウィスが合体。
そうして、ブラックホールに向かって飛んだ。
『大好きなハンプティダンプティ。まだ暫く会えないけど、――トゥイードルテは頑張るの〖次元防壁〗』
トゥイードルテは次元を断絶して防御膜を張る。
『〖時空回帰〗!!』
トゥルッフ・トゥルウィスの姿が、ブラックホールに消えた。
◆◇◆◇◆
――慶長9年。
「やめてなの。トゥイードルテは会いたい人がいるの」
汚くて臭い男たち3人に、トゥイードルテが囲まれていた。
「とぅい? なんだ? 呼びにくい名前だな――南蛮人か? コイツ」
「だが、エグイほど奇麗なガキだぜ」
「珍品として、高く売れるんじゃねぇのか?」
下品な顔で嗤い、トゥイードルテの腕を引いて連れ去ろうとする、ゴロツキの三人の耳に、尺八の音が聞こえてきた。
3人は音のする方に振り返る。松林を抜けて現れたのは、深編笠を被った男。
「なんだテメェ!!」
「誰だ!!」
「虚無僧か!?」
現れたのは虚無僧姿の男、彼は殺気を放つ3人の前に立って、尺八を吹くのをやめる。
不意に虚無僧が、深編笠をゴロツキたちに投げた。ゴロツキが一瞬、深編笠に気を取られた隙に、虚無僧は、一歩で男たちに肉薄――だが虚無僧は男たちには何もせず、トゥイードルテの手を引いて走り出した。
「すまぬ。殿に迷惑が掛かるのでな、走るぞ!!」
「わ、わかったなの!」
ゴロツキ達が獲物を奪われ、いきり立つ。
「まて!!」
「追え!!」
「相手は丸腰だ! やっちまえ!」
トゥイードルテと虚無僧がいくら逃げても、ゴロツキは追ってくる。
仕方なく虚無僧はトゥイードルテを背後にかばい、切りかかってきた大柄なゴロツキの刀を尺八で受け止めた。
これを見たトゥイードルテが、驚く。
「・・・すごいの」
虚無僧はさらに相手の刀を奪い、逆に斬りつけた。
そして追加で襲いかかってきた残りの2人も、瞬く間に斬り伏せる。
トゥイードルテが可憐な銀髪を揺らし、虚無僧に歩み寄る。
「ありがとうなの!」
「うむ――しかし幼子よ、」
刀を投げ捨てゴロツキに返した虚無僧の目が、鋭く光る。
この少女の見事な佇まい、そして手の豆――さらに私に付いてこれる体力。
「お主、本当は奴らに勝てたな?」
トゥイードルテの瞳が、少し挙動不審になる。
「そ、それは・・・・っ」
「なんらかの武術を収めていると見た。そうだな――或いは噂に聴く一刀流・・・・など」
「違う。――ほ、放神捨刀流っていうの」
「ふむ、放神捨刀流か――興味深い名前だ、」
言った虚無僧だったが、ため息をつく。
「はぁ・・・・しかし、弱ったのぅ・・・斬ってしまった。奉行所に出頭するしか無いのぅ」
「それなら大丈夫! トゥイードルテが、悪い奴らから助けられたって、御奉行様に言うの!!」
「そ、そうか? ・・・それは助かる――しかし、やってしもうたのぅ。とりあえず、お主は一人で家まで帰れるか?」
「家? トゥイードルテ、お家が無いの・・・・」
「むっ、それはすまん。――では加藤様のお屋敷に行きなさい。加藤様のお屋敷に、我殿が今はお世話になっておる。そうして十時 連貞の名前を出すと良い」
「分かったの! じゃあ、先に御奉行様のところに行こうなの! トゥイードルテが証言するの!!」
「うむ・・・助かる」
「ねぇねぇ、十時様の御殿様って、立花様?」
「むむっ。幼いのに、よく知っておるな?」
トゥイードルテの目が輝いた。
「ついに見つけた!」とでも言いたいような顔だ。
「当然なの! 戦国最強の武将なの!」
「はっはっは、関白様のお言葉まで知っておるのか! 流石我殿! この様に幼い子にまで名が轟いておるとは!! 必ずや、お家再興成さねばな!」
「じゃあ、トゥイードルテは十時様に助けられたって、みんなに教えるの! 立花様と、十時様を、英雄にするの!」
「むう、そのようなつもりで助けたわけでは――いや、有り難いかもな! 頼む!!」
トゥイードルテが笑顔を咲かせる。
「はいっ! 〖分身〗チートで頑張るの!」
「分身? ――放神捨刀流とは忍術なのか?」
「忍者カッコイイの!」




