809 役目
反応したのは、アリスだ。
『じ、〈時空倉庫の鍵・大〉!? なんで持っているんですか!?』
『前に手に入れる機会があっただろう?』
手に入れる機会などあったかとアリスは記憶を探った。
そして、あった――が、
『ま、まさかリアトリスの持っていた〈時空倉庫の鍵・大〉ですか!?』
『それ』
『リ、リッカってそういうところ、案外、抜け目ないんですね・・・』
アリスは、リッカがスウに「スキルがあるぞ」等と何度か助言していたのを思い出す。
スウが通信機を作ろうとして〖テレパシー〗があるぞって言ったり、江の島エスカーに乗ろうとしたスウに〖飛行〗があるぞと言ったり。
二酸化炭素が理解できなかったり、脳みそポンコツみたいな扱いを受けているリッカだが、スウが見落とすことすら見落とさないことが多い。本当に、案外抜け目ない。
『いやー、スウとアリスは持ってるのにわたしだけ持って無くて、前から欲しかったからさ。これ幸いと拾ってきた』
『な、なるほど』
『なんとか歪曲フィールド? とか言う奴と光学迷彩は、〈励起翼〉食らってドロドロに溶けてた。網みたいな奴は絡まってて、手を切りそうだから捨ててきたし。でも、リアトリスはこの状況にピッタリの武器持ってったじゃん』
『まさか』
リッカが〈時空倉庫の鍵・大〉から、巨大な筒を取り出し、ルミライト・ダーリン・インフィニティで構えた。
『そう、ミサイルショットガン!!』
リッカが巨大な筒のサイドに付いたレバーを引いた。
30発もの誘導ミサイルが、宇宙にばら撒かれた。
『なっ!!』
『そんなの狡いの!!』
『勝てばよかろうなのだ』
次々と撃墜されていく、ブタの様なロボット達。
さらにリッカのルミライト・ダーリン・インフィニティ・カスタムも、ミサイルの雨の中を突っ込んでくる。
『なんてイカれた人間なのよ!?』
トゥイードルダの金色のトゥルッフが、リッカのルミライト・ダーリン・インフィニティと鍔迫り合いになる。
1合2合3合、刀と薙刀が打ち合わせられ続ける。
『いくらそっちが強くても、リーチ差はいかんともし難いのよ!』
『ぬかせ』
『放神捨刀流――六つの教え――』
『立花を舐めるなよ』
トゥイードルテの銀色のトゥルウィスが、トゥイードルダの加勢に入ろうとするが、行く手をアリスが塞ぐ。
『どくの!』
『貴女の相手はわたしがしましょう』
『――くっ、どかないなら切り捨てるの!』
『できるものなら、どうぞ』
『天燕の縦振り! ――神速の一撃をくらえ! 放神捨刀流八つの教え――霹靂鳥!!』
まるで示現流のような袈裟斬りが、アリスに向かって振り下ろされる。
『間違いましたね?』
『何を!』
『我流! ――地走先刃!』
アリスが、低い姿勢から縦振りをする。
『あっ!!』
『そう、ナギナタなんて長い得物で袈裟斬りをしたら、攻撃の相手への到達が遅すぎる!!』
アリスのカタナマグナムが、トゥルウィスの白銀の装甲を切り裂いた。
トゥルウィスが、サンライト・ショーグン・ゼロ・カスタムにしなだれ掛かるように、倒れた。
トゥルッフがナギナタを下段に構えた。
『の天地の燕! 天燕、3連―――だわ!』
『3連!?』
リッカとトゥイードルダは互角の勝負を続けていたが、突如放たれたリッカが知らぬ技、意識外から放たれた一撃が通った。
ルミライト・ダーリン・インフィニティのバリアが砕けた。
『まだ連続攻撃は続くの! もうこの攻撃は防げないの!』
だが、リッカがルミライト・ダーリン・インフィニティ・カスタムの胸で、燕返し3連の最後の一撃を受けた。
『えっ』
『友達から貰った盾だ』
それは、盾の中央に燦然と輝く、忍耐のロンズデーライトを備えた盾。
『〝スウの盾〟だ』
『そん――』
『立花放神捨刀流――』
『無駄だわ!! 放神捨刀流の技は、私には通用しないわ!!』
『――伍の〝秘剣〟』
『えっ、〝秘剣〟?』
みずきが、立花放神捨刀流が隠している〝秘密〟の剣を放つ。
『意識外の技を持つのはお前だけではない――残影剣!』
ルミライト・ダーリン・インフィニティが、暗い宇宙に、分身を残し姿を消した。
『分身を使えるのがお前達だけだと、思うなよ?』
『なに、これ! し、知らないわ!!』
『立花放神捨刀流――参の〝秘剣〟――』
『また秘剣!?』
『継ぐ木の木立』
みずきが、〈時空倉庫の鍵・大〉に隠し持っていた、かつてのムシャ・リッカ・インフィニティで使用していた〈小太刀マグナム〉と、〈ハイパー・ソードリボルバー〉で二刀流の2連撃。
トゥイードルダはこれを避けられなかった。
トゥルッフを、〈小太刀マグナム〉が貫いていた。
リッカの攻撃はトゥイードルダを瀕死にさせていた。
トゥイードルダが出血する腹を押さえた。
だから、トゥイードルダはずっと考えていた役目は、トゥイードルテの物だったのだと気づいた。
『ト、トゥイードルテ、聞いて』
トゥイードルテが、通信ウィンドウの向こうで出血する姉をみて絶叫した。
『トゥイードルダァァァ!!』
『ト、トゥイードルテ、お願い・・・・聞いて、時間がない』
『トゥイードルダまで、トゥイードルテを置いて行かないで!!』
『聞いて・・・・トゥイードルテ・・・貴女にはやることがあるわ・・・』
『や、やること?』
『トゥイードルダはお姉ちゃんだから、ずっと考えたの。どうして立花 みずきが産まれたか。一番近い答えはこれだった。――行って、立花 みずきがいないと、大好きなハンプティダンプティは産まれないの』
トゥイードルテも、気づく。
『あ――っ!』
トゥイードルダの瞳に、白い輝きが見えてきた。
そうして列車の音・・・・。
『見えるわ・・・・私の愛するハンプティ・ダンプティ。迎えに来てくれたのね。――産まれてからずっと檻の中だったけど、最後の5年、私らしく生きさせてくれた、ハンプティ・ダンプティ。私の愛するハンプティ・ダンプティ』
トゥイードルダの瞳に輝く大粒の雫が、溢れた。
『今、行くわ!』
黄金のトゥルッフ・トゥルウィスの中で、トゥイードルダの身体が、ジルコンの様になって――砕けて消えた。




