783 懐かしい人がいました
私がゲーム脳していると、イルさんが警告を発した。
『マイマスター、敵のバーサスフレームが、マザーグースの後方に取り付きました!』
「えっ〖マッピング〗――本当だ! ど、どうしよう・・・」
『貰ったぞ、スウ!!』
この声は、シバ・ノイズ大佐だ。
前にリアトリスのコロニーで車でドッグファイトした人。
「えっと。――じゃあ、イルさん。後方エンジンを切って、急速で下に舵を切って!」
マザーグースが機首を下げていく。
『墜ちろぉぉぉ!!』
「よし、急速前進、エンジン点火!」
後方に来ていたシバ・ノイズが、撃墜された。ちょっと焦った。
シバ・ノイズの機体は、マザーグースのエンジンの噴射を食らったんだ。
宇宙戦艦の後方から近づくなんてしちゃ駄目だね。
全長1キロの金属の塊なんていう、大質量を前進させる噴射。そんな物を食らったら、バーサスフレームだってただじゃ済まない。
熱とか以前に、衝撃でバラバラになってしまう。
シバ・ノイズは脱出できたかな?
おっと、回頭してる敵空母がいる。
手が空いてそうなのは・・・・、
「アリス、リッカ! 空母Sがこっちと並走しようとしてる。撃沈して!」
丁字有利を崩されたら、面倒くさい。
『了解です!!』
『承知!! ――アリス! ルミライト・ムシャリッカ・ゼロに交代だ!』
『はい! 散!!』
ルミライト・ムシャリッカ・ゼロが、迫りくる敵のバーサスフレームを斬り倒しながら進んでいく。
進みながら、ちゃんと『『ルミライト・ムシャリッカ・ゼロ推参! ∞翔ける0な私達の可能性は無限に広がり、征く先は誰にも決められない!』』とか言ってる。
そしたら、敵の通信から、
『ひぃっ、この口上はリッカとアリスだ!!』
って恐怖の声が。
とうとう恐怖を与える口上になったかぁ。
アリスが飛ばした〈凶暴なる技巧〉も、敵を次々斬り倒してる。
他のプレイヤーの援護射撃もあって、ルミライト・ムシャリッカ・ゼロを止められる者はいない。
そうして空母に到達。正面から貫いた。
リッカの『突きぃぃぃ!!』という声が聞こえてきた。
「流石、2人ともお見事!」
『エヘヘ、スウさんに褒められました』
『わたしが轟沈させたんだけどな!』
やがて空母も全滅。
「みんな戻ってきてー、惑星に降りるよー!」
さあ、いよいよリアトリスとの最終決戦だ。
「ここが、リアトリスの本拠地?」
赤色超巨星に照らされるその惑星の空は、赤かった。
「よく岩石惑星がこんな位置にできたね――でもガスもすごいな・・・」
私の呟きに、イルさんが返す。
『ここは元々ガス惑星に近い惑星でした。しかし恒星風でガスが吹き飛び、地面が出てきました』
「そんな場所、よくテラフォーミングしようと思ったなぁ・・・・」
『MoBを封じ込めるのに必要な要所でしたので。――ちなみに地表に降りる場合、ヘッドギアを開いたり、パイロットスーツを脱ぐ行為は決してしないで下さい。この惑星の現在の大気組成にはフッ化水素が多く含まれているので、人体に触れるだけで大変なことになります。大噴火によりフッソが溢れ出し、テラフォーミングが失敗に終わったのです』
「りょ、了解」
こ、怖いな。
私が、ブリッジで赤い空を見上げながら怯えていると、アリスとリッカが帰ってきた。
「ただいまですー。なんか隔離空間での洗浄待ちが長かったです。機体の外に出た人が入ると、警報まで鳴ってましたし。なんでだったんでしょう?」
「今帰ったぞ~。飯、風呂、スウ――アウチッ」
リッカの小粋なジョークに反応したアリスが、小気味よくチョップしてた。
❝『わたしは一向に構わんッッッ!』❞
❝『あてしも一向に構わんッッッ!』❞
❝『てぇてぇ』❞
私は生物で興奮する生物を構わずに、レーダーで辺りを索敵開始。みんなと共有するために〖マッピング〗ではなく、戦艦のレーダー。
「にしても、ぺんぺん草一本生えてないなぁ」
見た目は、大気が黄緑色の火星といった感じだ。
天頂へ向かうにつれ空は赤銅色に染まり、その向こうには、いっかくじゅう座V838星を包む赤と黒のマーブル模様の星雲が透けて見える。
まるで宇宙そのものが腐敗しているような、不気味な光景だった。
遠くでは、スーパーセルすら生易しく見える嵐。
エベレストを逆さにしたみたいな雲が、明らかに「回転している」って分かる速度で回転して、大地を吸い上げたり、ガスを吹き下ろしたりしてる。
フッ化水素の雨とか雹とかが降ってるんだと思う。
あ、ダウンバーストした。
「辺りに敵はいないみたいだけど」
『マイマスター前方のクレーターが、リアトリスの本拠地です』
なんだろう。巨大な、黒い人の顔? そんなのが埋まってる感じで、宇宙に向かって口を開いている感じの本拠地だった。ちょっと不気味。
――ん? 口からなんか出てくる・・・!
人?




