775 箱根は神奈川にあります
とりあえずAUⅢに乗ると、人型になって、海中へ隠れる。
そこから望遠で、飛んできた飛行形態のアクティブアクターを観察。
敵の数は――32機か・・・・ちゃんとシュヴァルツ組んでるし、流石に1人で相手をするのはキツイな。
まずはこっそりあの人達の後ろに着こう。
私は仲間のフリをして、こっそり彼らの後ろに着く。
そうして、1番前の機体をロックオン。
小声で、
〔フォックススリー、ファイア〕
言ってミサイルを発射、と同時に時間銃で先頭の1機を撃墜。
『な、ロックオン!? どこから!!』
『なんだ、奇襲か!?』
多分先頭が隊長だろう。それが撃墜できた。一瞬くらいは、混乱するはず。
「さて、ちょっと翻弄してあげようかな」
アクティブアクターのアクティブ粒子エンジンは、光崩壊エンジンとは少し違う仕組みみたいなんだよね。
黒体みたいなのが無いせいか、光崩壊エンジンが作れないらしく、地球のジェットエンジンにかなり近い。せめて星団帝国の灰体があれば、光崩壊エンジンは作れるみたいなんだけど、星団帝国の灰体もないらしい。(現代地球の灰体とは性能が違う)
光崩壊エンジンは、大気中では超高温で空気を温めて爆発させて飛んでるけど、アクティブアクターは違う。
空気を取り込み圧縮、そこに謎の燃料を噴霧して爆発させてる。
アクティブアクターは、ほとんどのバーサスフレームより加速は上だけど、このエンジンだと、燃料に限りが出てくる。
「さて」
私はこのタイプのエンジンに詳しい。
「このタイプは、空気と燃料という推進剤で推力を得る仕組み」
では、この空気と燃料の比率を変えたらどうなるか。
例えば、いつもよりも多く空気を取り込み、燃料をギリギリまで絞ったら。
「当然、燃料消費が減って、飛べる時間が伸びる」
ちなみにこんなことをすれば、エンジンの寿命を縮める。でも今回はどうせすぐ乗り換えるし、エンジンの寿命とか知らない。
相手は、ずいぶん遠くからお出ましだ。
せっかくだし、もてなしてあげよう。
「マラソンで!」
私は空気の取り込みを最大にして、燃料の投入を絞っていく。
「この位なら、追いつかれないね」
そうして逃げる。全力で逃げる。
敵は必死に追いかけてくるし、機関銃も飛んでくるけど、距離がありすぎて当たらない。
銀河連合と戦うためのマシンだからレーザー火器は積んでないみたいだし、避けるのは余裕。
せっかくなんで上昇も織り交ぜて、相手の燃料の消費をさらに促す。
「あ、機銃があたらないもんだから、敵が焦ってアフターバーナー使い出した」
あんなことしたら、燃料満タンでも15分くらいしか保たない。
そもそも地球の戦闘機も戦闘速度で飛ぶと、1時間くらいしか燃料が保たないんだよね。この機体もあまり変わりない。
だいぶ遠くから来たみたいだし、私が燃料を大量に消費させたんで5分も飛んだ頃だろうか。帰りの燃料も必要だし、そろそろのはず。
敵が編隊を組んだまま撤退していくのが見えた。
「ばいばーい」
私が帰っていく敵に手を振っていると、マイルズが降りてきた。
『大丈夫かスウ、ものすごい数に追われていたが』
「大丈夫、燃料勝負したから」
『ああ・・・・なるほど、最善の判断だろう。――よく咄嗟に思いつく物だ』
私は急いで、着陸した合体中のアイステイルに乗り込む。
そうしてコックピットに滑り込んで、接続開始。
「準備OK!」
◆◇sight:永遠の勝者◇◆
謹慎中の永遠の勝者は、惑星ポルピリオンの北極基地で、送られてきたプレイヤー達のレポートを眺めていた。
そんな彼に紅茶を運んできたフロストが話しかける。
「銀河連合軍は、ポルピリオンの周りに展開済みか」
「そのようで」
「だがこちらの戦力は前回の比ではない」
「しかしあの無能な大将に、指揮が務まるのでしょうか」
「さすがにこの数を連れて来たんだ、いくらなんでも負けまい」
「オーレリア様を謹慎にしてしまうとは、なんと愚かな」
「そういうな、あれだけの敗北を喫したのだ。しばらくは仕方あるまい――こいつが恐らく魔王だな。初めて見る情報だ」
永遠の勝者が、スウのレポートを眺め始め、目を剥いた。
「・・・・なんなんだこの人間離れした戦績は?」
さらに最近撮られたらしい、映像で、スウがアクティブアクターを〈励起翼〉で連続撫で斬りする様子が流されていた。
「スウというプレイヤーですか? これは・・・強いわけです。こんな物を相手していたのですか、私たちは。――それにスキルの数も・・・」
「嘗ての星団帝国との大戦でも、これ程のヤツはいなかった。いや――本名、鈴咲 涼姫? ん・・・? そういえば我軍にも、この名前がなかったか?」
「1100年前の記録を参照してみますか? この人間を復活させれば、或いは対抗できるかもしれません」
「そうだな、頼む。アリス――これはまぁ、どうでもいいな。――次は、マイルズ・ユーモアか・・・・こいつも以前みたことがあるが、情報に変化があるな。――なるほど、コイツも相変わらず、なかなかのバケモノっぷりだ。――スキルは、随分増えているな」
オーレリアがマイルズ・ユーモアのスキルをチェックしていく。
そして、ある部分で視線が止まった。
「なんだと・・・!? ――い、いかんッ!」
「ど、どうなさったのですか!?」
「フロスト、今すぐ元帥に連絡を取れ!!」
「な――っ、はっ!」
「これは――不味いぞ!! 間に合うか!?」




