774 マイルズの到着を待ちます
◆◇◆◇◆
「マイルズ!」
『スウ、よく帰ってきた。その後ろの機体はAUⅢか?』
私がコーレルリヒがいなくなった砂浜で、AUⅢの右足の上で膝を抱えていると、マイルズから通信が入った。
この近距離通信は傍受されていないから、言っていいかな。――近距離って言っても宇宙と地上だけど。
「コーレルリヒに手引してもらったんだ。データベース3箇所にミサイル撃ち込んだら、大騒ぎになったけど」
『・・・よく逃げ切れたな。まあ、お前だからか――コーレルリヒが味方についたのか?』
私は首を振った。
「彼はあくまでベクターの軍人だって。私と子供を助けはするけど、寝返る気はないって、いなくなっちゃった」
『そうか――さてスウ、お前が言っていた作戦だが、ボクが地上に到達する必要がある様だな。敵の抵抗は予測されるか?』
「される。――多分、コーレルリヒも来る」
『なるほど、だがこちらの迎撃体勢も、完璧に近い。シュネ元帥の作戦だからな――オルカン大佐も来ているぞ』
「オルカンさん、大佐になったんだ?」
ちょっと前は大尉だったのに。
『八面六臂の活躍だからな。――そもそも少将クラスの人材らしい。銀河連合もさっさと1個艦隊を預けたいんだと』
「なるほど・・・・あっ、敵も・・・・この惑星と一緒に転移して来たよ、永遠の勝者も。というかマイルズ、あの作戦できそうだった?」
『実験はしておいた』
「――えっ、どこで!?」
『安心しろ、無人の場所で、だ』
「よ、よかった」
「きちんと1個の物体だと認識するなら、全てに効果が及んだ』
「僥倖だね!」
『全くだ。ただ、手の平で直接触れる必要があった』
「なるほど・・・・」
『しかもどうやら敵は、この惑星に、ほぼすべての戦力を乗せてやって来たようだな』
「うん、こちらの銀河に投入できる戦力は、ほぼ全てこの惑星と共に転移してきた。1万を超える戦艦、5万を超える空母。100万を超えるアクティブアクターが来た。凄まじい大戦力。前にコスモグナシアで戦ったときよりエグい」
『ありがたい情報、感謝するぞ、スウ。――完璧だ。2人でこの戦争を終わらせに行くぞ!』
「うん!」
とにかくまずは合流だ。
「マイルズ。私、このAUⅢっていう機体に慣れてないから、本調子じゃないから注意して」
『安心しろ、ブルーテイルとアイステイルの合体状態で来た』
「ほんと!?」
『ああ』
「よかった! それならアイステイルに乗り換えられる!」
頭のおかしいアイビーさんが作った頭のおかしい合体機構が役に立ったよ! ナイス!
「ちなみに敵の主力は、この惑星が惑星ルルアを向いている側の大陸に、多く配置されてるみたい。とは言っても惑星全土を満遍なく押さえてるらしい」
『予想通りだな』
「で、高度的には衛星軌道、上空、地上、さらに地下や海中にも基地なんかが配置されてる。手薄なのは丁度今、夜側になっている一番大きな海の中央辺り。私はそこの小さな島――ここ、ユガール島ってところに隠れてる。今空が曇ってるから、ちょっと見つけにくいかも。後で座標を送るね」
『分かった。だが無理はするなよ』
「うん。大気圏突入時は、バーサスフレームなら黒体があるから余裕だよね? 相手には黒体がないから大気圏突入中は戦いにならないはず。問題は降りてから島に向かう時だと思う」
黒体の工場は見られちゃったから、技術が盗まれるのも時間の問題だけど、まだ向こうでは生産できてないらしい。
『直接、その島に降りるさ』
「そっか。じゃあ私はマイルズが島に到着して作戦準備ができたら、スーパー・ブルーテイルに乗ってマイルズを守る。で、作戦が終わったら二人でスーパー・ブルーテイルに乗って逃げよう」
『分かった。ボクのブルーテイルは、またロストになるな。最近機体ロストが多いな、何度目だ』
「ごめんね。アイステイルもロストだなぁ」
『お前のせいではない。それに銀河連合がタダでもう1機くれた。既にUSSFの戦艦メシエカタログへ搬入されている』
「さすが銀河連合、太っ腹」
ブルーテイルはすんごい高級機なのに、壊すのこれで何機目だっけか。
アイステイルも多分銀河連合は支給してくれるだろう・・・・私専用で非売品だからそもそも勲功ポイントじゃ買えない。
こんど銀河連合の腹をプニプニしてしんぜよう。
『よし、では作戦開始と行くか』
「りょ!」
『というか、既にそちらに移動中で、追われているのだが』
「が、頑張って」
私は〈時空倉庫の鍵〉からAUⅢに燃料を投入しながらマイルズを待つ。
コーレルリヒに燃料を貰った――倉庫の中に直接、燃料を注ぎ込んじゃった。多分この倉庫はもう、燃料用にしか使えない。
「にしてもこの燃料、ガソリンじゃないよね? ・・・・水素でも無さそう。――なんなんだろう? これが、アクティブ粒子?」
マイルズは、すぐに私のいる島の真上(衛星軌道)まで来た。
そうして、ほぼ真っ直ぐ直下で大気圏突入。
黒体が有るからできる無茶だ。追ってきたアクティブアクターは一旦速度を殺したり、入射角を考えて大気圏突入しないと駄目だから、マイルズを追ってこれない。
ただ当然、別の部隊が降りた先で待ち受けて、マイルズを撃墜しようとするわけで、
「さあ、私の出番!」




