771 少女達の役目
3人は帰った。
「これで一安心」
「お前は、本当に良かったのか?」
私はコーレルリヒの質問に頷く。
「うん。――でも、コーレルリヒは、なぜ攫われて来た子を助けてくれたの?」
「可哀想だから。・・・それ以外に理由はいるか?」
「完璧な答えだね」
「しかし、沢山の星団帝国の人を殺した俺に、その資格が有るとは思えなかったがな。ただの偽善だ」
「人を救うのに資格なんて要らないし」
「いや、医師免許とか」
「それはそう」
医師免許はこっちにもあるんだ? そりゃそうか。
コーレルリヒが私を、心配そうに視る。
「しかしお前はどうするんだ」
「私1人ならなんとかなると思う。何か腕輪を手に入れる方法に心当たりはない?」
「難しいな――それでも1つくらいなら、どこかの将官に・・・・ん、通信か」
コーレルリヒが宙を手のひらで横に撫でると、ウィンドウが開いた。
『コーレルリヒ少佐』
「なんだ」
『あちらのホモサピエンスの子供を100匹捕らえました。どこに――』
私は凍りついた。
コーレルリヒも固まっている。コーレルリヒが私を見た、目が合った、彼は首を振って呟いた。
「・・・・どうしろと言うんだ」
◆◇◆◇◆
ハイレーンの銀河連合基地で、クレイジーギークスやステラフォース(USSF)が今後の作戦を練っていると、銀河連合からの連絡を受けた。
アリスが目を剥いて大声を出す。
「えっ、腕輪で帰還してきた――のがスウじゃんじゃない!? ――スウさん以外が帰ってきたんですか!?」
「そうなんです。攫われていたらしい地球の小学生くらいの女の子が、スウさんが帰還するはずの場所と惑星ルルアに、3人帰還してきたんです――しかも1人の女の子は、間違いなくスウさんが持って行った腕輪を着けていて・・・」
「じゃ、じゃあ、スウさんは今、向こうを帰還方法を持たないで彷徨っているんですか!?」
「・・・帰還した少女の報告では、そうらしいです」
この言葉に部屋の人間が絶句した。
銀河連合の兵士たちも絶句している。
マイルズが持っていた資料を握りしめて、舌打ちをした。
「あいつ・・・・何をやっているんだ・・・っ!」
アレックスがマイルズの肩を叩く。
「そう言ってやるな。クールと同じ状況なら、お前も同じようにしただろう」
「それはそうだが―――だがっ!!」
ルジェルナがティーカップを置いて、眉をひそめる。
「スウさん、帰還方法も持たずに、あちらの世界を地球人が1人で彷徨うなんて、どれだけ恐ろしい行為なのかわかってますの・・・・?」
そこへ、えりか、詩音、千歌が駆け込んできた。
「みなさん聞いて下さい!」
千歌の必死の大声。
「これ以上、地球人が攫われないようにして欲しいんです!!」
千歌を詩音が支えている。詩音も真剣な目だ。
えりかが、千歌の言葉を補足する。
「スウお姉ちゃんからのお願いなんです! 地球の人が攫われてたら、スウお姉ちゃんが帰れないって言ってました!」
詩音も補足する。
「スウお姉さんは、地球の人に知らせるのは、私達の大事なお仕事だって」
言った詩音の頭を、アレックスが撫でた。
「そうか、よくやった。君たちは英雄だ」
アレックスがは会議室のみなを見回して、言う。
「とにかく影で攫われている人間がいる事を、世界中に周知させよう。でないとクールの奴、また攫われた人間を見つけてそっちを優先しかねない。そんな事になったら、彼女はいつになったら帰って来れるかわからない」
コハクがオロオロしだす。
「そ、そうですね! ヴィ、ヴィクターさんや柏木さんに連絡して、大統領や首相に・・・・!」
アリスが立ち上がる。
「わたしは、テレビ局の知り合いに連絡します! これ以上、誰も攫わせちゃ駄目です!」
言ってアリスは、スマホに走った。
「ボクが大佐に連絡しよう」
「わたしが柏木に連絡する」
マイルズと、リッカも立ち上がる。
そこに、
「地球人の誘拐対策。それに関しては、我々も協力しよう」
「ユタさん!」
会議室にいたメンバーは、とにかく今できる最善を尽くした。
落ち着いた頃、椅子に座ったアリスがスウの身を案じる。
手を組んで額に手を当て願うように呟く。
「――スウさん・・・無事でいて」
そんなアリスの様子を見た千歌が少し泣きそうになった。
「ご、ごめんなさい、アリスお姉さん。私が帰ってきたせいで、スウお姉さんが・・・」
「すみません」
「本当は、私よりスウお姉ちゃんが帰ってきたほうが良かったですよね・・・」
えりかや詩音も謝ってきた。
3人の言葉にアリスが「ハッ」として、首をふる。
「そんな事ありません! みなさんが帰ってきてよかったですよ!」
「ほ、本当ですか?」
アリスは、尋ねたえりかの目を見て、しっかりと頷く。
「スウさんが自分の命を掛けてあなた達を帰したんです。自分達の価値を下げるような事を言ったら、スウさんに悪いですよ?」
「そ、そうですね・・・分かりました。胸を張ります! 私達にできる事はありますか? ――いえ、すみません・・・・無いですよね」
えりかが「差し出がましい事を言ったか」と言う風に俯くと、マイルズだ。
「いいや、あるぞ。大事なことだ。どうやって攫われたか状況を詳しく教えて欲しい。誘拐の防止策を練れる。あと君たちが見た敵の世界もできるだけ詳しく。情報は一番大事な武器だ。どんな小さな情報でも貰えれば、ボク達は助かる」
言葉にえりかが、顔を挙げる。
「わ、わかりました! できるだけ正確に思い出します!」
えりかは、詩音と千歌を視た。
「みんな、頑張ろう! 私達の記憶が役に立つんだって!」
詩音と千歌も力強く頷いた。




