770 帰還します
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「意外だな。お前、スウと言ったか――なぜお前がいる。攫われた子供がいると予想していたんだが」
「えっと、うん。なぜかいる」
銀髪に白い制服。ともすれば、女性と間違いそうな、男性のイケメン。彼は私を見て、納得の言葉を放つ。
「なるほど・・・」
私はいつでも銃を取り出せるように、ホルスター近くに手を寄せるため胸の下で手を組んでおいた。
ハクセンの攻撃的懐手の応用。
いかにも胸が重くて支えてるのよ。みたいな感じで。―――生まれて初めて、デケェ胸が役に立った。
私はコーレルリヒ・ワーグナーの階級章を観る。豪華で、星が多い。
階級章って、大体線と点で構成される。
そうして階級が上がると階級章は、シンプルになるか、豪華になるかのニ択。
ただし、下の階級が豪華になることは、まずない。
この人の階級章は、豪華で星が多い。
恐らく、少佐くらい?
「なるほど。とは?」
私が聞き返すと、
「以前は戦闘中だったからわからなかったが、お前、目が優しいな。この世界の文化で育ったような目をしていない」
「そ、そういう物?」
「そういう物だ。お前も、攫われてこっちに連れてこられたのか?」
コーレルリヒは私の顔を見てから首を傾げ、私の胸を見て、納得するように頷いた。
おい、どういう意味だ、おい。
「いえ、私は連れ去られた訳じゃないです」
コーレルリヒが、納得の表情になう。
コーレルリヒが納得の表情NOW!!
だからどういう意味だッ!!
「自ら来たのか・・・?」
「うん」
「・・・・ほう?」
コーレルリヒが何を考えているのかはともかく、攫われてきた子ならどうするつもりなのか、尋ねてみよう。
青点で表示されているんだ、悪いようにしないかもしれない。
まあ、〖サイコメトリー〗で調べてもいいんだけど。
「あの、ここにいたのが、もし連れ去られてきた子だったらどうするつもりだったの?」
「ああ、帰らせやろうと思ったんだ。2人限定だが。あちらに行ける腕輪を2つ持っているんでな。俺が行って帰ってくる分だ――スコルはこういう行為には乗らないからな。というかこの世界の人間は、まず乗らない」
「貴方もこちらの世界の人間でしょう?」
「俺を負かした、あの女」
「え? ・・・・リッカ?」
「そう、リッカと言ったか――奴の言葉が少し引っかかってな。考えたのだ『ただ勇敢に死ぬのだけでは意味がないのだろうか?』・・・とな」
「・・・なるほど」
このコーレルリヒは、子供を助けるなら、命をかけて良いと――思ったのか?
でも、帰れるのは2人・・・・か。
――いや、まてよ? 私の帰りの分を合わせれば、3人分になる。
それなら全員帰れる。助かる。
私は〖サイコメトリー〗でコーレルリヒの記憶を探る。彼は、子供を攫ってくることに憤っていた。
「お願いがあるの。帰らせてあげて欲しい子たちがいるんだけど」
「ほう」
私は3人に筐体の裏から出てきてもらう。
えりかちゃん、詩音ちゃん、千歌ちゃんが出てきて、コーレルリヒは3人の顔を見渡した。
そして、納得の表情なう。
「なるほど、この子供達なら――そうか」
ねえ、この人、一発殴って良い?
コーレルリヒが「転移座標は、惑星ルルアの無人であるはずの場所だ」と言って、腕輪を〈時空倉庫の鍵byベクター〉から腕輪を取り出した。
「しかし腕輪は2つしかない。支給日は決まっている」
私は、ルジェルナの〈時空倉庫の鍵byベクター〉に入れておいた、私の帰還用腕輪を取り出す。
「ここに、もう一つ」
「むっ? それはお前が帰還するための物ではないのか・・・?」
「うん。だけど、私だけならどうとでもなる。この子達を優先したい」
コーレルリヒが私の瞳を覗き込む。
「そうか・・・・お前は、印象通りの女なんだな。勇気もあり、命の使い方も弁えている。いい女ではないか」
なに、口説いてんの?
コーレルリヒが、千歌ちゃん、詩音ちゃんに腕輪を嵌めてくれる。
私はえりかちゃんに腕輪を嵌めてあげた。
千歌ちゃんと詩音ちゃんは状況がよく分かっていないみたいだけど、えりかちゃんが察したようだ。
「スウさんは!? これ、スウさんの腕輪ですよね!? スウさんは、どうやって帰るんですか!?」
「えっ、スウさん帰れないの!?」
詩音ちゃんの言葉に、千歌ちゃんも状況を理解したようだ。
「駄目だよ、スウお姉さん! 一緒に帰ろう!! お願いだから、一緒に帰ろう!!」
千歌ちゃんが腕輪を外そうとする。
「千歌帰らない!! スウお姉さんが帰らないなら、千歌も帰らない!!」
コーレルリヒが千歌ちゃんの手を抑えて止めると、千歌ちゃんは「わんわん」泣き出した。
すると詩音ちゃんまで、鼻をすすり始めた。
最年長でしっかりしていた、えりかちゃんまで涙目になり始めた。
もらい泣きが伝播し始めている。
「お、おね、お姉ちゃん・・・一緒に帰ろ? ・・・・えりか一人で帰れないよ。一緒に・・・」
私は3人をまとめて抱きしめる。
「大丈夫。大丈夫だから」
私は千歌ちゃんの後頭部をゆっくり撫でる。
千歌ちゃんが、ちょっとづつ落ち着いていく。
「スウお姉ちゃんが強いの知ってるでしょ? スウお姉ちゃんは、凄い人なんだよ? 知ってるでしょ?」
3人がウンウンと頷いた。
「みんなも、今は強くならなきゃ。お姉ちゃんが一緒じゃなくても帰れる!」
すると千歌ちゃんが首を振った。そして再び腕輪を外そうとする。
だから、私は千歌ちゃんの目を見た。
「千歌ちゃん。千歌ちゃんには頼みがあります」
千歌ちゃんがキョトンとする。
「千歌ちゃんは、地球に戻ってみんなに伝えて下さい」
「伝える?」
「地球の人が、ベクターに攫われてるって。もうこれ以上誰も攫われないように、みんなに知らせて下さい」
「えっ」
「でないとね、お姉ちゃん沢山の人を帰らせないといけなくなって、いつまでも地球に帰れなくなっちゃうの」
私はえりかちゃんと、詩音ちゃんを観る。
「えりかちゃん、一番年上のえりかちゃんが、みんなを引っ張って」
私はさらに詩音ちゃんを見た。
「詩音ちゃん。2人が困ることもあると思う。助けてあげて」
私は3人を観る。
「これはとっても大事な役目。地球のみんなを護る大事なお仕事――そしてスウお姉ちゃんも、護って貰える」
私が、みんなと私を護るというと、3人の顔が真剣になった。
「スウお姉ちゃんにはできない。だから代わりに、3人がやって。――強いスウお姉ちゃんが認める強い3人ならできる。3人が頑張ってくれれば、それだけお姉ちゃんも早く帰れるから――お願い。スウお姉ちゃんを助けて!」
3人が真剣に頷いた。私は3人の涙を袖で拭いてあげる。
「わ、わかりました!」
「うん!」
「みんなに伝えるよ!」




