766 加速します
『――っぶないな。ココ』
「嫌な場所だよね」
『まあ、便利だけどな』
リッカがロケットを噴かし、さらに小惑星を蹴って加速した。
リッカは、次から次へと小惑星を蹴って加速してくる。
「『つ、通常の三倍の速度で接近してくる!』」
『ん?』
「いや、言っておきたかっただけ」
AUⅢの翼と、〈ハイパー・ソードリボルバー〉が再びぶつかり合う。
今度はすれ違わず、リッカが連続で攻撃を振り下ろしてくる。
私は、ロケットの左右の噴射を切って、また噴射する。そんな噴射のオンオフ繰り返して、リッカの振り下ろしを防いだ。
『飛行機で剣戟とか、やはりモノノ怪の類か』
なんか言われてる。
にしても、このまま打ち合っても、相手はリッカ――こっちはジリ貧だ。
なにか策を弄さないと・・・。
私が考えていると、リッカが先に策を弄して来た。
『ここで、通信を開いてわたしが裸になったら、スウは翻弄されるか?』
「脱ぐな!」
え、何いってんのこの子!?
女の私相手に、女の体で色仕掛け!?
『だって好きだろう、わたしの裸』
「お前も私をなんだと思ってるんだ!!」
若干効きそうなのが、また酷い。
てか待って、これ本物のリッカも私がリッカの裸が好きだとか思ってるってこと?
あやつ、帰ったら問いただしてやる。
「脱ぐなら脱いでいいけど、パイロットスーツがないとこのGに耐えられないよ!」
『ああ・・・・そっか』
小惑星帯だぞ。
(あ・・・・脱がせて気絶させても良かったか・・・)
まあいい、思いついた。
7合目の剣戟――右側の〈結晶励起翼〉と、リッカの〈ハイパー・ソードリボルバー〉がぶつかる瞬間、私は右の翼をパージ。
『な―――!?』
「名付けて、パージパリィ!!」
『パージパーリィ!? パーティーからパージされてしまったか、流石ボッチ!!』
「貴様だけは許さん!」
右の翼をパージしたことで、機体の重心が変更された。回転を始めるAUⅢ。
左の翼が、ルミライト・ダーリン・インフィニティに迫る。
「トドメ!!」
『甘いわ!!』
だけど流石脅威のちびっ子この程度では墜ちない。
〈ハイパー・ソードリボルバー〉の柄頭で、AUⅢの機首を、カチ上げた。
真下をどつかれた事で、コックピットは大荒れ。
私は、『しゃかしゃかポテト』の気持ちを、体験させられた。
堪らずロケットを噴かして逃走。
バランスが悪くなって飛びにくいので、もう片方の翼もパージ。
ここは宇宙だ、飛ぶのに翼はいらない。
そうして、宣言する。
「こうなったら、前にVR訓練場の時みたいに、遠距離からちまちま攻撃してやる――機体の加速を乗せた弾丸を躱せる?」
『させるか!!』
掛かった。
リッカが猛スピードで追いかけて、通信を入れてくる。
『あの時は訓練の舞台が大気中だったけど、今は宇宙だ。別にこっちが追いつけないわけじゃない!!』
そう宇宙だから、飛ぶ速度は互いの加速力だけが問題になる。
人型だろうが、飛行機だろうが、飛ぶ速さは関係ない。
だけど、ここは小惑星地帯。
加速すればするほど、小惑星の迫る時間が短くなる。
ルートが狭くなる。
加速がつけば、その分、カーブも難しくなる。
『ぐっ、このっ!』
私は弾幕で慣れているけど、リッカはそうじゃない。
秒速3000キロ――4000キロ――5000キロ。
この辺りになると1秒間に5、6個小惑星が迫ってくることもある。
だけど、リッカも脅威の化け物、反射神経で躱し続けている。
リッカが接近戦をしようとしているので、互いの距離はかなり近い。
7000キロ――8000キロ。
リッカが〈ハイパー・ソードリボルバー〉で小惑星を切り捨て、受け流し付いて来る。
私も危ない時は、〈臨界シンクロトロン放射〉で小惑星を焼き払う。
さすがリッカ、弾幕云々以前に、少々では墜ちない。それでも流石に何度か掠ったらしく、ルミライト・ダーリン・インフィニティのバリアが割れた。
さて、これはどうかな?
秒速9000キロ。
『まだ、速くなるのか!』
リッカが悲鳴に近い声を上げた。
私はバックミラーを視る。〈ハイパー・ソードリボルバー〉の根本に僅かなヒビ。
私はAUⅢを人型にして、急速反転。180度後ろを向かせた。慣性が変わるわけでは無いので、進行方向は変わらない。
私は、後ろ向きに飛行を始める。
そうして背後から迫ってきた一つの小惑星を、背面跳びをするように躱して――リッカに向かって蹴った。
急に飛んできた小惑星に、それでもリッカは反応。〈ハイパー・ソードリボルバー〉で薙ぎ払った。
だけど、凄まじい速度で迫る小惑星を斬り続けた〈ハイパー・ソードリボルバー〉がもう耐えられなかった。根本からポッキリ。
私は、また背後から迫る小惑星をバレリーナの様に回転しながら躱して、回転の勢いのまま手でリッカに投げた。
リッカは〈臨界黒体放射〉で小惑星を焼き払おうと――今だ!!
私は、ルミライト・ダーリン・インフィニティの〈臨界黒体放射〉の射出口が開いた瞬間、そこに〈ハイパーガトリング〉で銃撃。
『ちょ、やめ――』
弾丸を受け流せる〈ハイパー・ソードリボルバー〉は折れた。
さらに近距離からの銃撃。弾丸の到達まで0.1秒もない。リッカに攻撃を防ぐ方法はない。
ルミライト・ダーリン・インフィニティが爆散した。
『また負けたー! 小惑星を利用するなんて、ヒキョウダゾー』ダゾー』ダゾー』
既視感のあるリッカの悔しそうな通信が飛んできて、切れた。




