763 自己紹介をききます
歩き始めると、3人が自己紹介をしてくれ始める。
「スウお姉ちゃん。私、高梨 えりかっていいます」
えりかちゃんは一番年上の女の子、長い黒髪に赤いカチューシャをつけた見た目で、雰囲気はしっかりした感じ。
一番小さな子の手をずっと引いてあげている。多分面倒見の良いお姉さんタイプだ。歳は小学5年生くらいだろうか。
えりかちゃんが自己紹介したので、年下の2人も続けて自己紹介してくれる。
「スウさん、私も自己紹介します。水上 詩音です。よろしくお願いします」
詩音ちゃんは髪を左右でお下げにして肩にかけている、上品そうな子。おしゃま(奥様方面)なフィーリングを感じる。
歳は小学4年生くらいだと思う。
「自己紹介・・・・スウお姉さん、あ、あたし・・・小原 千歌です。・・・好きなものは、桃。嫌いなものは、パプリカ。良い所は、頑張る所。悪いところは、忘れ物をする所です。将来の夢は歌手です。名前にも歌が入ってるのが自慢です」
ずっと怯えた感じで涙目になっている一番小さな子。
人形を抱いてる。
自己紹介と言われて、学校でするみたいな自己紹介をしだした。
凄く素直な子なんだと思う。
小学2年生くらいかな。
明るめの髪を小さなツインテールにしてる。
お母さんがツインテールを作ってるのかな、すごく丁寧。
大事にされてるんだな。
左右の位置のズレとか髪の量の差とかが、微塵もない。
こんな良い子達3人を・・・ベクター共は・・・。
「3人とも、自己紹介出来て偉いねっ!」
クラス替えでの自己紹介もまともにできない私より、ずっと偉い。
「私はさっき自己紹介したから良いかな?」
言って、私は3人の頭を順に撫でてみる。
3人の顔に笑顔が咲いた。
うおー、エンジェル係数爆上がり。
詩音ちゃんが手を挙げる。
「ねえねえ、千歌ちゃん! わたしも音が入ってるよ、あ――詩も!」
すると、千歌ちゃんが詩音ちゃんの方を嬉しそうに見た。
「詩音ちゃんも、千歌と同じだ! 一緒に歌手にならない?」
「うん! 詩音、千歌ちゃんと一緒に歌手になる!!」
二人が指切りしている。
千歌ちゃんと詩音ちゃんの夢の約束が―――交わされた。
・・・・私は、この子達の夢を護るためにも、絶対に地球へ帰してあげないと。
ちなみに3人共、物凄い美人。
街角で会ったら「うおっ・・・・化粧もしてないのにナチュラルであれか、おのれぇ・・・遺伝子!」と「『蒼き清浄なる世界』なんて、私いらない!」とか叫びながらも、愛いなあ・・・とほっこりしてしまう系。
あのルックスなら、アイドルでもなれそう。
よくもまあこんな美人な女の子ばっかり集めたな――まあ、そういう目的で連れてきたんだろう。
私は心で、怒りの炎が燃え盛るのを感じた。
「〖人化〗」
私は自分の姿を、さっきの運転手にしようとする――って、駄目だ。
そうか〖人化〗は人になるスキル、恐らくデータノイドの彼は人の範疇じゃないのか。
少し面倒だけど、まあなんとかなるかな。
「みんな。誰か、他に、地球の人見た?」
もし他にも攫われた人がいるなら、連れて帰らないと。
千歌ちゃんは首を振った。
「み、見てない」
詩音ちゃんが頷いてから、
「私達、みんなバラバラの場所で急に眠らされて連れてこられたの」
状況を説明してくれる。頭のいい子だ。
しかしなるほど・・・・少人数で地球に入り込んで、個別に攫ってる感じか。これは向こうに戻ったらすぐに注意喚起しないと。
今回はなんか日本の子ばっかだけど。被害は恐らく、世界中に広がるはずだ。
「私達を連れてきた人たちは、私達が初の獲物って言ってた」
えりかちゃんが重要情報を伝えてくれた。
うーん、この聡明。
これで3人しか連れてこられていない可能性が高まった。
じゃあ気兼ねなく目的の物を手に入れたら、おさらばするぜ。
「とにかく、訓練シミュレーターの場所を探さないと。さて、どうするか・・・」
私は方策を練る。
「よし、まずは〖マッピング〗」
私の視界に、2Dの地図が浮かぶ。
これで基地内部の構造と、どこに人がいるのか分かった。
あとはVR訓練装置がある部屋を探せばいい。
ルジェルナが「〖サイコメトリー〗でわたくしの記憶を見なさい」と言ってくれて、見せて貰ったVR訓練装置は、なんだかゲームセンターの筐体みたいな感じだったんだよね。
私の〖透視〗じゃそんなに遠くまで透かせない。アリスみたいに見えたら良いんだけど。
「AIに聞いてみるか」
というわけでAIくんを再び起動。
『いいえ、私には場所はわかりません』
ポンコツめ。
地道に探すしかないか。
3人の女の子は、私――スウが自分達を助けてくれると思って、ちょっと緊張がほぐれたのか、詩音ちゃんと千歌ちゃんが、小さな声で『大きな栗の木の下で』を歌っている。
小学生らしい選曲に、ほっこり。
「おおきなくりの きのしたで~」
2人で作った替え歌らしく「貴方と私、楽しく、遊びましょう」の部分が「貴方と私、仲良く、歌いましょう」になっている。
2人で歌手になるのを夢見ているのだろう。
詩音ちゃんと千歌ちゃんの夢、こんな場所で潰えさせちゃいけない。
えりかちゃんはリズムに合わせて、握っている千歌ちゃんの腕を振っている。
みんなもう、遠足くらいには思ってくれているみたい。




